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なんやかんやと新事実が発見されたりなどはあったが、その後も神秘の量産型少女はなぜなぜ期を続けていた。

子供が親に聞く「あかちゃんって、どこからくるのー?」のハード版、「繁殖行為とは、具体的にどのように行うものなのですか?」だったり、「人間の男性器は虫と比べると随分小さいようですが、本当にこれで繁殖を行うのですか?」だったりなど、毎日毎日飽きもせず性の疑問についてキョトンとした顔で尋ね回っていた。

彼女に師匠と呼ばれる七海は根気よく付き合いながらも、そろそろいい加減にしろとは思っていたが言わなかった。
同じく灰原も「そういうことは人前で聞いちゃ駄目だよ」とは言うものの、激しく叱ったりなどはしなかった。
慈愛の母に生まれ変わった夏油は、我が子の疑問を穏やかな眼差しで見つめて受け流すばかりで、何もしなかった。

なので、この状態に一番最初に我慢の限界を迎えたのは他ならぬ五条だった。
その日も少女は暇そうな人間を見付けては片っ端からセクハラ紛いの質問を繰り返していた。

机に足をかけだらしなく座りながら携帯を弄っていた五条は、それまで隣に座り大人しく本を読んでいた少女が瞳をパチリパチリと瞬かせながら顔を上げた瞬間、「これは質問タイム来るな」と察した。
案の定、少女は自分より高い位置に存在する五条の顔を見上げながら「五条さん」と声を掛ける。

「なに」
「何故男性器には多種多様な呼び方が存在するのですか?」
「はー?例えば?」
「ち●ぽこ、お●んちん、ち●棒…」
「いやお前何読んでんの?」

ふにふに桃色の小さな唇からドン引くようなワードが連発し、聞いた側である五条ですらギョっとした。
思わず少女が持っていた文庫カバーのかかった本を取り上げ表紙を見れば、そこにはドギツイピンクの太文字で『官能小説シリーズ 絶対ナイショ、兄と妹の夜の遊び』とタイトルされた小説があった。ご丁寧なことに、帯まで付いたままで、そこには『駄目なのに、繋がりたい!』と書かれており、五条は勢いよく立ち上がると離れた位置にあるゴミ箱に向けて光の早さで投げ入れた。

ナイスシュート、素晴らしいコントロールでゴミ箱に入っていった己がよく分からないまま読んでいた本が捨てられる様をポケェ〜と眺めていた少女に、五条は詰め寄る。
その目には飽きれと焦りと少しの怒りが混じっていた。

「お前、誰に、あれ、渡された」
「……よく知らない方に、どうぞって」
「アホ、知らない奴から物を貰うな」
「はい」

少女は返事をした後に「知らない言葉ばかりでとても難しい本でした」と付け足す。

「感想は聞いてねえから」
「己の勉強不足を感じました」
「何の勉強だよ、どう考えても必要無いだろ」
「あの本では窓ガラスの側で交尾をする様子が書いてありました………何故、交尾の様子を外から見える位置でする必要があるのでしょうか?第三者と何か共有したい物事があったのでしょうか?」
「あーーー……やだもう…」

汚れの無い健やかな瞳でじっと見つめられながら、そんな質問をされれば誰だって頭を抱える。
五条は頭を乱暴にガシガシとかきながら、自分を見つめる少女を見下ろした。

どっからどう見てもペド野郎が喜びそうな見た目をしている。
ちんまい背丈に、つるぺたロリロリボディ、ぽややんとした隙だらけの雰囲気に、無垢な瞳。そしてやたらに性知識に興味関心を示している。
コイツ本当にこんなんで大丈夫か、やっていけるのか。
一回ガツンと言ってやるべきなのかもしれない。

なけなしの正義感と、芽生え始めた父性が彼を駆り立てる。
使命感から、五条はなるだけ言葉を選びながら少女に言い聞かせるように話始めた。

「いいか、そういうことはな…大人になってから知れば良いんだ、今はまだ知らなくて良い、分かったか?」
「私の身体はこれ以上成長しませんよ?」
「…………………はー…もう本当コイツマジでほんと…」

何なんだよ、マジで。

五条は深い溜め息を吐き出すと、自分の椅子を引いて少女の至近距離に座り直した。
据わらせた目で何も分かっていない愛くるしい瞳を見下ろす。

そして、苛立たしげに右手でガッとまろい頬を鷲掴んだ。

「キュッ」と少女が小さく悲鳴を上げてたじろいだのを無視し、サングラスを素早く外すとそのままガブリと小さな唇に噛み付いてみせた。

「ンンンンムゥッ!!?!?」

突然の事態に喉奥から競り上がった悲鳴ごと飲み込むように、マムマムと唇で唇を食んでは吸って、舌先でつついたり舐めたりを繰り返す。角度を変えるためにと唇を離された瞬間、何も分かっていない少女はプハッと息を吸うため口を開いた。
それを見逃すはずも無く、五条はそのまま未開の口内を蹂躙するため舌を入れる。

「ングゥ〜〜〜〜〜〜!!!!ンッ〜!!」
「ハッ、うるせ」

肉厚の長い舌が口内へと潜り込み、舌を絡め、歯列をなぞり、唾液を交えながら貪られる。
熱い口内をヌルヌルと這い回る舌が上顎を擦れば、くぐもった甘さを携える声が漏れ聞こえた。
純真無垢な少女は肩を震わしながら目を回す。
ゾワゾワとした未知の感覚が背中から這い上がり、首筋を通って頭を痺れさせる。

とうとうもって恐怖心に駆られた少女は、手足をバタバタと動かして抵抗に出る。
骨ばった手をふにゃふにゃの指先で掴み引き剥がそうとするも、そんな抵抗通じるわけも無く、意にも返さず五条は温かく小さな口内に舌を這い回し続けた。

「ゥゥ………ンゥ、ンッ…」

眉間にシワを寄せ、苦し気な呻き声を出し、酸欠にクラクラし出した頭で少女は思う。


この細菌の交換しか出来ない行為に一体何の意味があるのか。
人類の愛情表現手段は全くもって理解に苦しむ。
少なくとも、私はこの行為に意味を見出だせそうには無い。
私には、苦しくて少々気持ち悪いだけの接触だ。


意識に白が混じり始めた頃、口内の蹂躙を終えた舌がリップ音と共に離れていく。
唾液にまみれた唇を親指で拭った五条は、はふはふと息切れを起こし目を回す少女の様子を見て鼻で笑った。

「あんまり口が過ぎるともっと酷い目に合うからな、分かったか?」
「わ、わがんにゃいぃ……」
「分かれよ、もう一回すんぞ」
「ウゥゥ………」

未だ掴んだままの頬をプニプニと遊ばせながら脅せば、少女は言葉にならない声を漏らしながら首を何度も縦に振るので、その素直な態度と一方的なキスとも呼べぬ行為に気分を良くした五条は少女を解放してやった。

やっとのことで魔の手から解放された少女はそのまま椅子から立ち上がって挨拶も無くフラフラ走り去って行く。


小煩いガキも居なくなったし、随分好きにやれたし文句無しの空き時間だった。

椅子を所定の位置に戻し、行儀悪く机に足を掛けて鼻歌交じりに携帯を取り出し開く。


この数時間後、任務から帰還した夏油は一連の行為をヨボヨボ状態な少女から聞き、修羅を背負って五条の元へと赴いた。
BGMはヴェルディの『怒りの日』。

五条の居た教室は一瞬で更地となった。



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