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これの続き。


「あっ!先輩!梓月先輩!」
『おや、赤也くん』


ひょんなことからテニス部2年の切原赤也くんと知り合いになり、つきまとわれるようになってから早数か月。今だに偶然を装って会いにくるが、それでも前ほどではなくなった。それもこれも英語を教えるようになってからだ。ホントはあの一回っきりだったんだけど。なんだかんだ頼みこまれ、さらにはあのテニス部の三強さん直々にも脅され……いや、頼まれて週に1、2回ほど放課後や昼休みを使って赤也くんに勉強を教えている。私これでも並ぐらいの成績なんだけど……頼みこまれるような人間じゃないんだけど。


「先輩今日の放課後暇っすか!?」
『ん?うん、一応何も用事ないけど』
「よっしゃ!じゃあ先輩、デートしましょうよ!俺と!」
『へ、デート……?』
「そうです!デート!」
『いやでも部活は?』
「今日はいーんです!」
『え、でも』
「……先輩は俺とデートしたくないんすか?」


いきなりしゅんっとした赤也くん。なんか見るにいたたまれなくて、全力でOKをすればすぐに復活した。そして私の両手をぎゅっと握って、正門前で待ってますとだけ言って走り去ってしまった。


と、いうわけで、授業もなにもかも終わり、正門前に来てみればそこには既に赤也くんが立っている。私の姿を確認した赤也くんは、にっと笑って私の手をとって走り出した。え?走り出した?


『え、ちょ、まっ』
「先輩早く早く!時間ないんすから!」
『わ、私、走るの、苦手っ』
「じゃあ、お姫様だっこするっす!」
『やっぱ自分で走る』


少し残念そうにした赤也くんは再び私の手を握ったまま走り出す。
いったいなんなんだ。酸素が脳まで行き届かなくて、もうどうにでもなれ、と思った時、急に止まった赤也くんに激突した。


「先輩、ここですここ!」
『あいたたた……え?ここ、ケーキ屋さん?』


最近女の子の間で噂になっている、人気ケーキ店だ。しかもここはカフェもあり、人気すぎてすぐに売り切れてしまう。よく丸井くんと話していたケーキ屋さんではないか。


「丸井先輩が頼んでくれてたらしいっす」
『何を?』
「バースディケーキ」
『誰の?』
「ん?俺のっすよ?」
『……』
「どうしたんすか、梓月先輩」
『えええええええ!赤也くんの誕生日なの!?』


ウソだウソだ。そんなのきいてない。赤也くんの誕生日だなんてそんなこと。誰も教えてくれなかった。うわあ、最悪だ。誕生日プレゼントなんて何もない……。


『赤也くんごめん……私誕生日知らなかった』
「そりゃそうっすよ、教えてないですもん」
『ホントごめんなさい、赤也くんに私何もあげれない』
「何言ってるんすか、俺梓月先輩にもらってばっかじゃないですか」
『でも』
「あーもう、ちょっと黙って。俺の話聞いてくださいよ」
『赤也くん……』
「俺、先輩たちに言われたんすよ。今の自分があるのは周りの人たちのおかげだって。今日は確かに俺の誕生日っすけど、その周りの大事な人に感謝する日にしろって。だから俺、今日の残りの時間、先輩と過ごそうと思ったんです」


目をそっと伏せた赤也くんは、私の両手をぎゅっと握る。そしてゆっくり目をあけた赤也くんはにっと笑って、私にキスをした。……え?は!?キス?えっ!?ええ!?


『あ、赤也くん!?』
「へへっ、奪っちゃいました!」
『う、奪っちゃいましたじゃないいいい!』
「だって先輩がかわいい顔俺に向けるから」
『し、してないし!そんな顔向けてないし!』
「先輩、ありがと」


あーもうホント赤也くんの前だと調子くるっちゃう。顔が熱くてしょうがないし。ちらりと赤也くんを見れば、赤也くんは私を見てにやにや笑ってるし。


「さぁ、先輩!せっかく丸井先輩が頼んでくれたんだし、ケーキ一緒に食べましょ!」
『あ、待って赤也くん!』
「そんで、あーんしてくださいね!」
『だ、誰がするかぁあああ!』


と言いつつ結局根負けして、あーんしましたとさ。
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