BLACK COAT04

穏やかな海。

賑わう島。



これから嵐が来るような…静けさの元…私は新しい素材を求めて島の奥地に入っていった。























それはこの島に着いた日の事だった。



「しばらく停泊する。」


ローのそんな声に驚きを隠せない私。

新世界に入ってやっとの凪。
だけど、先に進みたいとクルーの誰もがそう思った。…だけどローは違った。



「行きたいところがある。この島で三回ほどログを上書きする。」



その言葉にシャチだけが反応した。

シャチはいざとなると、妙に鋭い。そして新世界のことを誰よりも勉強している。


「パンクハザードですか?」


「「「!!!!!」」」


「解りました。上陸までお供します。」


私には解らないけれども…みんなの顔色から、ただ事じゃないことを悟った。



「いや、上陸はおれだけでいい。調べものがある…、それに少々危険だ。」



『っつ…。』



ローの口から危険なんて言葉が出るとは思っていなかったから驚いた。

今の今までいろんな目にあってきたけども、そんな弱気ともとれる発言をしたことがなかったから。



『…、ろ、…そこ、寒い?あったかい?』


「両方だ。」


『私も、連れて行ってはくれない?』


「降ろすわけにはいかねェ。おとなしく船で待ってるんだな。」


甲板をコツコツとつま先で鳴らしながら苦笑い。


『…はぁい。』



それはキャプテンのローが決めたこと。

そしてどんなにあがいても今の私にできることは一つしかない。



それは…



祈ることでも、無理してついていくことでもない。
ましてや好きだなんて告白まがいのことを伝えることでもない。






『出港はいつ???』





シャチに問いかけた。




「七日後の昼だ。それからたぶん…45分前後で指針が微かに動くはずなんだが…その時に海底に潜る。つまり磁力を水圧で減らすんだ。指針が安定した方角がパンクハザードってわけ。」


『なんだか・・・難しい…けど、それまでに戻っていればいいのよね?』


「あァ。」


『よし、それじゃあ、素材でも盗って…おっと…採取してくるかな。出かけてきます!!!!必ず戻ってくるからおいていかないでね!!』





私にできることは、服を作ること。


暑さにも寒さにも負けない、丈夫な服を。


ローに送ろう。























一日目は素材屋を駆け回った。
でも、夏冬両用の素材なんかはそう簡単に売ってるもんじゃない。

街の素材屋には全部足を運んだけれども…ダメだった。



二日目、有力な情報が手に入った。
たまたま見かけたこの島の歴史書に【トーチューカソー】の大量発生履歴が残っていた。


トーチューカソー。
これは糸として紡ぐと暑さにも寒さにも負けない素晴らしい素材になる。
そして頑丈さも抜群。


ただしここ数年の乱獲によってほとんど姿を見ることがなくなったとされていた。


街の人々に聞いたところ…、絶滅危惧種にも指定されているソレはやっぱりここ10年見たことがない…とのことだった。



でも、私は諦める訳にはいかなかった。



私にできることは服を作ることだけなんだから。



10年前にあったんだから…今もこの島のどこかにあるはず。その希望を抱いて…。




























もう船に五日帰ってない…。


みんな心配しているかな…。崖や谷や…ジャングルかってくらいの森や…。

この島はどうなっているんだ?って地形が見事にたくさん。
脚も擦り傷だらけで…結構痛い。


諦めない。
ローに…洋服を作るんだ。



その一心で誰も立ち入らないような島の奥へ足を進めってきたけれども…。



『もぅ…だめかも…、』


一人じゃ何もできない私は、やっぱりローがいないとダメなんだと視線を足元に落とした。



『神様…。海の神様…。山の神様…。こんな形でしか守れない私に…どうか力を貸して!!!』





――――……………――――――






強く願った言葉に木々のざわめきを聞いた気がした。






手をついた先。
背中から吹く強風に落ち葉の間から顔を出したのは…









私の探し求めていたものだった。








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