Chapter 12 : 構え


「おい!まだ寝てろってんだろ!」

「時間はいくらあっても足りねえ、始めてくれ。」
「ふふん、ヒヒを倒したと言ったな。
人の真似をしてあらゆる剣術を身につけたヒヒ・・・
その中には当然序列があり、手足れもいる。
この島のヒヒをまとめる、いわばヒヒの王さ。」

「・・・あの剣は。」

「おれを真似て、剣術を極めている。
いままでのヒヒとはレベルが違うぞ。」

「おもしれえ・・・。」

三刀流の剣士はリカルドの白夜に立ち向かって行った。

「おい、ゴースト娘。」

ふわふわと浮かぶゴーストプリンセスは、
不安げな顔をで剣士を見つめていた。

「奥の階段から上がった、3階の部屋にアンジーがいる。
水を持って行ってやってくれ。」
「あたしに命令するなー!アンジーってなんだよ!」
「おれの子だ、きっと喉がかわいてるだろう。」
「おま・・・おまえの子?」


ゴーストプリンセスは水の入ったグラスを持ち、アンジェリカの部屋に向かった。

「・・・おい!だ、誰かいるのか?」
いわれた部屋の前で声をかけるも、部屋からは返事がない。
「水、持って来たぞ!」
ドアに手をかけるが、引こうが押そうがドアは開かない。

プリンセスは霊体となり、ドアをすり抜けた。

「ぎゃああああホントにいるうううううう!」

「勝手に入ってくんじゃねーよ、っるせーな!」

「おまえが、ミホークの子ぉ?」

「水置いたらさっさと出てけよ!気持ち悪いな!
つか、なんで入ってこれんだよ!」

「ふふん、ゴースト・プリンセス・・・だからな。」

ブランケットにくるまったアンジェリカはぷいと外を向くと、
階下で大暴れする剣士を眺めていた。

「まったく、どいつもこいつもあたしに命令ばかり・・・
だれか召使いはいねーのか!こんな大きな城にすんでるくせに!」

プリンセスはぶつくさと言いながら、ゴースト達に
アンジェリカの部屋のバリケードを片付けさせた。

「おい、おまえアンジーって言うんだな。本当に鷹の眼の子なのか?」
「関係ないだろ、おまえ誰だ。」
「ペローナ様と呼べ・・・今日からおまえの主人だ。」
「で、あの緑の髪の男は誰だ?」
「無視するなぁ!」

ホロホロとアンジェリカの側に寄ると、ペローナも窓から下を見下ろした。
「なんだか知らねえが、鷹の眼はあのゾロに剣術の稽古をつけるそうだ、」
「パパが・・・?」
「大怪我して、クマに飛ばされて、まだ傷も塞がってないのに・・・
バカな野郎だ。」
「なんだ、あいつはおまえの連れか?」
「ぎっ、ちげーよ!あたしだって飛ばされてきただけだ!」
「クマに飛ばされるって、おまえたち、何なんだ?。」
「もう帰る場所もない、そして飛ばされてきたここには、
あったかいココアも召使いもいない・・・
そんなあたしの気持ちがおまえにわかるか・・・ホロホロホロ。」
「知るか。」


ペローナはアンジェリカの顔をじろじろと見た。


「おまえ、かわいいな。」
「あ?」
「あたしのぬいぐるみになれ。」
「断る。」
「かわいくねえこと言うな!」


アンジェリカはしらけきった目でペローナを見ると
またぷいっと外を見た。


「クローゼットから服とリュック取ってくれ。」


「やれやれ、やっとぬいぐるみになる気になったか。」

ペローナはクローゼットを開けると、
アンジェリカの服をバサバサと出し始めた。

「なんだよおまえ!女の子のくせに、かわいい服がひとつもねえ!」

「どれでもいいから出せよ。」

「大体、だだっ広い部屋にベッドと机と本棚だけか・・・
こんな部屋でよくひきこもれるなおまえ。
鷹の眼の子ならしかたないか。ぬいぐるみもねえ、化粧台もねえ、
かわいい宝石をしまう棚もねえ。
あたしが飾り付けてやりてえくらいだ。」


ペローナは部屋を見回しながら、アンジェリカに服を放り投げた。


「着替えるから出てけ、召使い。」

「召使いはおめーだ!あたしはプリンセスだぞ!」

ペローナは大声をあげながらも、肩を落としてそそくさと部屋から出た。







「ハアッ、ハアッ・・・おい、どこ行くんだよ・・・。」

リカルド達は太陽が身を赤く染め、夕暮れを思わせる頃には
古城の前から引き上げて行った。

「飯の時間らしい、ヒヒ達は規則正しい生活をしているからな。」

「くっ、なめやがって・・・。」

「そう焦るな、少し休むといい。」

ミホークはそう言うと、城の中へと入って行った。

「じゃあ、わたしが相手になろうか。」

城の中からアンジェリカの声が響く。

「あん?誰だおまえ。」

「アンジー、やめておけ。」

ミホークはアンジェリカの襟足を掴むとずるずると
引きずって中へと入っていった。


「飯の支度だ、ゴースト娘。」
「あたしに命令するなぁー!」



ゾロは息をきらしながら、ダイニングの床にごろりと転がった。

「三刀流、おまえパパを越えるんじゃなかったのか?」

「パ・・・パパ?」

アンジェリカはしゃがんでゾロの顔を覗き込みながら、にやりと笑った。

「パパがおまえに稽古つけるなんてな。」
「おまえ、鷹の眼の・・・。」

アンジェリカはゾロの肩を支えると、ダイニングの椅子に座らせた。

「三刀流は、パパを越えたいのに、
どうしてパパに剣を教えてもらってるんだ?」

「三刀流、三刀流うるせえな。ロロノア・ゾロだ。
それにおまえが誰だろうと、説明する義理はねえ。」

「わたしは、アンジェリカだ。で、なんでだ?」
「くっ、聞いちゃいねえ・・・にやにやしやがって。」
「ロロロア、どうして恥をさらしてまで、
パパに稽古つけてもらってんだ?」
「ロロロじゃねえ、ロロノアだ!」
「ロロロロ・・・ロロ、、ロ・・・。」
「ロ ロ ノ ア !」


下らない会話をしていると、ゴースト達が食事を運んで来た。

続く様にミホークとペローナも席に着き、テーブルに食事が並んだ。

「この城に居るならば、守ってもらいたい事がある・・・
破ればおれは容赦なくおまえたち2人を斬る。」

ミホークは席に腰をおろすなり、物騒な話を始めた。

「どうした、食べてよいぞ。」
「そんなかわいくねー声で話されたら、飯がまずくなる!」
「まあ、いい。いただきます。」

ゾロは両手を合わせ、気にせずに食事を始めた。

「まず、アンジェリカの存在を誰にも言うな。
この島を出たら、絶対にだ。」
「んなっ、なんでだ。」
「理由を説明するつもりはない、そしてここで見たことも、
絶対に口外にするな。」
「了解した。」
「・・・おい、アンジー、おまえ食べないのか?」
「アンジーは食事をしない。」
「なんだ、ダイエット中か。」

「ジュース飲むか?」
「水以外、口にさせるな。」

「なんだよそれ・・・」

ミホークの対面に座り、アンジェリカはじっとミホークを見つめ
言葉も発さずに水のグラスを握った。

「2年ほどここに置くとなれば、隠し通すのは難しい・・・
いずれわかるだろう。」

「条件はそれだけか、鷹の眼。」

「そうだ。」


ミホークは無言で早々に食事を終わらせると、
黒刀を取りゾロ達に背を向けた。

「今から2時間・・・この奥の舞踏場は立ち入り禁止だ。」

アンジェリカも、テーブルに立てかけられた刀を背負うと、
ミホークの後につづき城の奥へと歩いて行った。




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