4444hit まんげつ日和。さまより
4444HIT


あたしは人間が好き。

人間の生きている時間は決して長くはないけれども、その中で喜んだり、悲しんだり、幸せを誰かと共有したり、喧嘩したり、物語を一つ、また一つと増やしていく。

一人から二人。

二人から三人と人が増えていくたび物語は複雑になっていって、いつもあたしをわくわくさせる。




----------------------------

ピンポーンと軽いチャイムの音が部屋に響く。

「あらら? 今日はなにも依頼が入ってなかったはずだけれど誰かしら?」

「宅配かな。 僕が行こうか?」

隣で横になっていた草介が起き上がろうとする。

「ううん、草ちゃんは寝ててくださいな〜」

草介に掛け布団をかけ直して、ゆかりはドアの方へとととっ早歩きで向かった。

ドアののぞき窓を覗きこむとそこには小さなお客さんがいた。

「あら、陸くん一人で来たの〜?」

「はい、今日は一人です!」

「すごいわね〜、この前までは奏ちゃんとか太郎ちゃんと一緒じゃなきゃここまで来られなかったのに。 んっと、陸くんは何歳になったんだったかしら?」

「5歳です!」

キラキラとした目で右手をぱっと開いて指5本を見せながら言う陸。

「まぁ、おっきくなったわね〜! それで、今日はどうしたのかしら? と、その前に中に入ろっか」


----------------------------

草介に陸が来たことを伝え、ゆかりはリビングに戻ってきた。

「ししょー、草介さんは?」

「草ちゃんは身体が弱いからねんねしてるのよ〜」

ゆかりがオレンジジュースをコップに注ぎながら、陸を見るとなんだかいつもよりソワソワしていた。 「どうしたの?」と聞くより先に陸はぽつりぽつりと話し出した。

「あの、今日はししょーに、聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」

「おにいちゃんって何をやればいいんですか?」

ん? とゆかりは首を傾げた。

「あれ、陸くんには弟も妹もいなかったわよね……?」

「最近僕が拾いました、3歳の女の子です」

「猫か何か、かしら?」

「? 人間ですよ?」

きょとんとする陸を見ながら、まさか5歳にして誘拐……?とゆかり頬に汗をつぅと流した。 「それでですねー」と話しを続けようとする陸に待ったをかけ、携帯のアドレス帳から『奏』の名前を探しだして電話をかけた。

プルループルループルルー……

「……おかけになった電話番号は電波の届か」

気を取り直して今度は『太郎』に電話をかけた。

プルガチャ!

「はいもしもーし太郎でーす!」

「わぁ、ワンコールで出てきた! 太郎ちゃん気持ち悪いわ〜」

「泣いていいかね?!」

携帯電話ごしの太郎が変な泣き真似を始めたのを蒸ししてゆかりは気になることを聞いた。

「なるほど、さくらのことか」

「さくら?」

「陸が道で倒れていたところを拾ってきた子でね、うちで育てることにしたんだ」

「そんな猫みたいなノリで育てていいものかしら……? その子の両親が探してるかもしれないわよ〜?」

「ふむ、詳しくは言えないが色々事情がありそうな子でね。 強力な超能力を秘めた超能力者でもあるから、警察にも引き渡せない。 だからうちでしばらくの間育てることにしたのだよ。 で、陸は何故君のところへ?」

「それはこれから聞くところ。 なにか怪しいけど今は聞かないでおくわ〜。 じゃあね太郎ちゃん」

ピッと通話終了を押し、陸の方を見ると待ちくたびれたと言うようにテーブルにだらーっとうつ伏せていた。

「陸くんごめんねお待たせ〜」

「お話終わった?」

「うん、ごめんなさいね〜。 確か、お兄ちゃんは何をやればいいか、だったわよね?」

「はいっ!」と元気よく答える陸に、ゆかりは「さくらちゃんはどんな子?」と聞いた。

「うーん……さくらはあまりおしゃべりしない子です。 特に大人がいるところでは何も話さないです」

やはり家庭が問題のある子だったのだろうかとゆかりは顎に手を添えて考える。

「陸くんと二人の時は?」

「少しだけお話してくれます。 名前も歳もさくらから直接聞きました。 あとは『これはなぁに』って質問してくることや絵本を読むように頼まれます」

「あらら? 陸くんったらもう十分お兄ちゃんやってるじゃない?」

「これがおにいちゃんですか?」

「そうそう、あとはしっかりと守ってあげることが大事かしら」

「まもる?」

「3歳くらいだといろんな所歩き回ったり、手を伸ばしたり、結構危なっかしいらしいのよ。 だから陸くんはちゃんとさくらちゃんのこと見てて、守ってあげてね」

まもる、まもる……と呟いていた陸がやっと理解したのか「はいっ! じゃあ早速守りにいきます!」と立ち上がった。

「ししょー、ありがとうございました!」

「どういたしまして〜」

ゆかりが「送っていこうか?」と聞くと「一人で大丈夫です! おにいちゃんですので!」とえへんというポーズで言ってニコニコと帰っていった。


この日から陸がさくらに対して過保護になり、さくらのブラコン化が急速に進んだのはまた別のお話。





----------------------------

4444番のキリリクでゆかりと陸の変態コンビの話かイラストとのことだったのでお話を書かせて頂きました!
変態コンビなのに変態な話ではなくほのぼの(?)になってしまいましたので、今度改めて二人の暴走話を書きたらいいなぁと思います^^


レッツにーちゃんキリリクありがとうございました!


△画面topへ
「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -