「来たっ!」
 ドアを開けた瞬間、座面から腰を半分浮かせたなちると目が合う。
 入室してこようとする人物が光政だとわかるとなちるは黙って椅子に腰を下ろした。
「あれ? 光政今日もご参加なん? ……シキも?」
 相変わらず携帯アプリ中の純平が、現れた二人を見るなり目をぱちくりさせる。
「ああ、俺が誘ったんだ。沙良もな」
 渡良瀬が疑問に答えると、沙良は純平に向かい「今日もよろしくー」と笑いかける。光政はなちるの隣の空席に座った。
「雷人はまだなの? 別に一人くらいいなくても問題ないんだけどさ」
 頬杖をついたなちるの言葉に部屋中を見渡すと、雷人の姿がなかった。特に参加しなくても問題なしとは言うが、サブリーダーの出席は本来ならば必須なはずだ。
「あいつの部屋、さっき覗いたときはちゃんといたはずなんだが」
「リーダー会のメールは渡良瀬先輩から一斉送信されとるし、見てへんとかやないならリーダー会あることくらいはわかってるはずやで」
「まだ戦闘に出ていい時間でもないしね」
 渡良瀬、純平、シキが口々に言う。
「あー、ちょっと待ってて……」
 沙良が席を立った。どうやら雷人の居場所に心当たりがあるようで、呼んできてくれるらしい。
「ちょっとじゃないや、三十分くらい?」
 ドアの前まで行ってから集まった面々を振り返って苦笑しながら沙良は訂正する。近くに立っていたシキは理解したような顔で、ドアノブに掛かった沙良の手に自分の手を重ねた。
「……なるほどね。沙良、なちるも一人の欠席程度なら問題なしとしているんだし、呼びに行かなくても大丈夫ではないかな」
「え、なんで?」
「おっと僕が決めることでは……渡良瀬先輩、この件何か問題はあります?」
 渡良瀬はニッと笑った。
「いや、俺から内容を伝えておくし、それでいいぜ」
「よかった。沙良、きみの親切心は素敵なものだけれど、あまり深く関わらないことも大切だよ」
 シキに諭されて沙良は頷いた。
「そうかもね」
 先に沙良がドアから離れ、一拍置いてシキも空席に向かった。
 比較的静かな中、光政は隣のなちるが珍しくぼうっとしているのが気になってその肩に手を置く。
「なちる、どうしたんだ?」
 顔を覗き込むようにやや背を丸めると、なちるははっとしてこちらを見た。
「……えっ? ……いえ……何でも、ないわ」
 慌てた様子に、こいつまた遅くまで真面目やってたんじゃねーだろな、と光政は尊敬するどころか呆れていた。
「少し外すわね。やっぱり雷人にもちゃんとした情報を届けたいし、あいつが戻るまで少しのんびりしましょう」
 そう言うとなちるはテーブルの下から大きなポリ袋を引き摺り出し、がさがさと音をさせながら中を探るとスナック菓子の袋を取り上げ、そのまま部屋を後にしてしまった。
「あ〜やっぱあれ自分用やったんね〜」
 純平がにやりと笑って呟く。床に置かれたままの袋に手を伸ばす光政。大量の菓子が入っていた。

△画面topへ
△目次へ
[ 2/4 ]

[prev] [next]
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -