あいすみるくを一杯。


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01.きっかけ

「はぁー、だっるい」
「心の声、駄々漏れなんだけど」
瑞樹にツッコまれて、初めて気付く。
ただ思っていただけなのに、無意識に言葉になっていたようだ。
俺は気怠さを消すかのように、テンションを上げる。
上げなければ、やっていけない、どこかにそんな思いがあるのだった。

授業は面倒だが、受けないと卒業どころか、進級も出来ないのでちゃんと受けている。
しかし、そんな俺にも好きな教科はある。
それは数学だ。
解けた時の達成感がなんとも病みつきで、次から次へと問題を解きたくなってしまう。
それになんと言っても、先生が好きなのである。
名前は廣瀬蒼。
蒼は眠いのか、いつもあくびばかりしている。
イケメンで長身で、非の打ち所が無い。
「(今日もイケメンだな、おい)」
そう思いながら、ノートに向かって忙しく手を動かす。
すると、突然黒板を書く音が止み、ぎし、と言う音が近付く。
「なんでそんなニヤけてるんだ」
「え、ニヤついてます?」
手で頬が緩んだ顔を覆い隠しながら、口から零れそうになる大好きを必死で隠した。
「普段の行いも全部まとめてやるから、放課後進路面談室なー」
進路面談室とは、面談の時によく使われる、狭い個室のことだ。
最近では、説教部屋にも使われるため、五個あるうち三個は鍵付きである。
「はーい」
みんなにとっては最悪かもしれないが、俺にとってはこれ以上になく幸運なことであった。
やっぱり、俺ってツイてる!
またニヤニヤしていたので、隣の瑞樹に「お前、熱でもあんの?」と心配されてしまった。

数学は五時限目だったため、放課後までそう長くはなかった。
進路面談室に向かう途中、唯一蒼のことを好きと言うことを知っている、真唯に会った。
「なんでそんなうきうきしてるのさ」
「これから、蒼センセと密室デートだから」
全身からハートマークが出ているくらいの勢いでそう言う。
「…ばっかみたい」
小さく口に出た呟きは、よく聞こえなかった。
「何か言いました?」
「早く行けよー!待ってるでしょうが」
大声でそう叫ばれ、あっ、と思い出し、ありがとうと言い残し走り去って行った。
切なく、くしゃくしゃになった真唯に気付かずに。

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