それは誤解


楽屋で吉田とテレビを見ていた時だった。
チョコレートのCMが流れると、ぼけっとしていた吉田が「あっ」と一言身を乗り出した。
「可愛いなぁこの子」
「涼風奈奈だっけ?」
出ていたのは長い脚がきれいな黒髪美人。最近注目されているモデルだ。雑誌の表紙はこの子だらけで、CMにもたくさん出ている。十月から始まるドラマのヒロインも決定したらしい。
大人っぽく見えるがまだ二十二というところが恐ろしい。
「なんか…バラエティーとかで…共演とかならんかな…」
「どーだろーなー」
そんなことを言っているとニュースが始まった。
『最近話題のモデル、涼風奈奈さんに恋人発覚です』
芸能ニュース担当の女子アナが、驚いた様子で言った。
「やっぱこういう子には彼氏おるんやな…」
「当り前だろ。いねーほうがおかしいんだよ」
なぜかガッカリしている吉田を放っておいて女子アナはニュースを読み上げる。
『なんとお相手はお笑い芸人、FFBの瀬戸圭介さん』
「えっ…」
涼風奈奈と並んで映った写真は見覚えある顔。俺と吉田は声を揃えて驚いた。
「せっ瀬戸おおおおっ!!!」
まさか、だ。よりにもよって涼風奈奈の交際相手が瀬戸だなんて。
有り得ない。


その日からテレビも雑誌も二人の話題で持ちきりだった。それはまぁ話題の涼風奈奈が、人気急上昇中の芸人瀬戸と付き合ってるとなっちゃあマスコミは放ってはおかないだろう。
事務所は否定しているらしいが、二人がある夜涼風奈奈の自宅マンションに仲良く入っていく写真が撮られている。
こういったニュースは、本当だったり勘違いだったり、どちらも可能性があるので、真実は本人たちにしかわからない。しかしお笑いの世界ではそれが本当だとか嘘だとかは無関係に弄られる。特に今回なんかは酷い。
瀬戸が出る番組はすべてそのネタで溢れているのだ。
もちろん瀬戸は誤解だと困り顔だが実際はおいしい話ではないだろうか。
それにしても腑に落ちないのは、こんな美人が傍にいたにも関わらず俺に所構わず襲いかかってきていたことだ。
なぜ俺が痛い思いをして犯されなきゃならなかったのか、という問題だ。


「本当に誤解なんだよウサ!!!」
玄関のドアを開けた瞬間、すごい形相の瀬戸が大声で叫んだ。
「いきなりなんなんだよオメーは…」
前置きもなしに突然来てこれだ。
しかも散々テレビで騒がれているところを見てきたのだ、もう正直瀬戸の顔に見飽きたところでもある。
俺は近所迷惑になるのでとりあえず瀬戸を中へ入れた。
「俺は奈奈ちゃんと付き合ってなんかないんだよ!」
「べつに何も言ってねぇだろ」
「ちゃんと聞けよウサ!」
とくに責め立ててもいないのに、てか瀬戸が誰と付き合っていようとべつにそれは咎めないのに、瀬戸は必死に弁解している。そして誤解だ誤解だと言いながら、何故か俺の体を押し倒す。
「誤解なんだっ」
「ええい、誤解解きに来たのか襲いに来たのかどっちなんだオラァ!」
覆い被さってくる瀬戸を剥がそうと頑張るが、瀬戸も頑張って抵抗している。俺が力で瀬戸に勝てるなら、今まで犯されることなんてなかっただろう。今日も今日とて敵わず、服を脱がされる。そしてこの間ばっちり知られた性感帯の乳首を瀬戸はちゅぱちゅぱ吸い出した。
「んぁあっ!ちょ、お前本当なんなんだよっ」
「わかんないのかよ!」
瀬戸は半ギレで言う。
なんでお前がキレてんだよ。
「わかるわけねーだろっひぁっあっ乳首いじんなぁ…っ」
瀬戸は俺と話ながらも指先で乳首を弄る。
「俺はあの子とは付き合ってないんだよ」
「ひぁっ、あっだからって、んぁっなんで、ひっ襲う、んっだよっ」
「だから!俺はウサが好きなんだよ!!!」
一段と声を大きくしながら瀬戸は告白した。
「……………は?」
俺は瀬戸の刺激に耐えるため目を瞑っていたのだが、思わず見開いてしまった。
「…お前…何言ってんの?」
好きだなんて、なんだかドッキリの番組を思い出す。しかしこれは確実にドッキリではない。それはわかる。
しかし理解できない。瀬戸が俺を好きだとか。なんの冗談って感じ。
「そのネタつまんねーよ…」
俺の冷たい目に瀬戸は首を振る。
「ネタじゃねぇって。わかるだろ、好きでもない奴襲うかよ」
「好きな奴にもいきなり襲わねーだろ」
「それは…悪いと思ってるけど」
とか言いながら瀬戸は俺のパンツを下着ごと脱がしていく。
「おい!本当に思ってんのかよ!」
「我慢できないんだよ」
瀬戸はそう言って俺の尻の穴を舐めた。なんて耐え性のない奴なんだ…。
しかし瀬戸だけでなく田辺や祐二くんに責められている穴は簡単にひくひくしてしまう。
「ウサだって本当は…入れてほしいんだろ?」
瀬戸は寝ぼけたことを言う。寝言は寝て言ってほしい。黙っていると瀬戸はちんこを出して俺の穴に擦り付けた。
「ウサは俺のこと好きじゃねぇの?」
「…俺はお前のこと、わかんねぇよ」
「ここはこんなに、待ってんのに?」
「あっ…」
つんつん、と瀬戸はちんこで穴をつつく。体は熱くなりなんだか期待してしまっているが、だ。
「こ、れは、慣れで勝手にこーなるだけっ」
「それってどんなエロ穴なわけ」
瀬戸はそう言ってヌプ、っとちんこを挿入した。
「はぁ…ッ、あっ、んんっバカ、やめろ…っ」
瀬戸はちんこをずんずん進めて、根本までぴっちり入れやがった。
中が苦しくて、熱い。股がじんじんする。
「ウサ」
瀬戸は身を倒して、キスをしてきた。
舌が入ってくる。
「ふ、ん…っ、ッ」
ちゅ、くちゅ、れろ、くちゅ、ちゅ、くち
口元でいやらしい音がする。そういえば瀬戸とキスするの、すごい久しぶりな気がする。
いや、まぁ、しないのが普通なんだけど…。
俺はしばらく中に熱い存在を感じながらキスをされていた。
なんというか、瀬戸が調子乗るのもわかる。俺はキスだけで脳みそとろとろにされた気分で、ちんこは我慢汁でぐちょぐちょになった。
「ウサ、」
瀬戸はようやくキスをやめると腰を動かし始めた。ゆっくり抜き差しされると、とろとろにされた俺はぶるっと体を震わせてしまう。
「あ、あ゛〜〜〜っ」
頭がぼうっとする。ジュプジュプって音が耳を犯す。
「あ、あぅっだ、めぇ…っや、やぁんっ」
「…そんな顔してよく言うよ」
瀬戸はそう言って、俺の脚を上げちんぐり返しさせると激しく動き始めた。
「あっ!あぁっやっ奥、だめっあぁっ!」
パンッパンッパチュンッパチュンッ
「あぁぁ〜〜っだめっ瀬戸ぉ、あぁんっあんっ激し、の、だめぇ」
「ウサ、ウサ…っ」
久しぶりなうえ、なぜか熱くなっている瀬戸は腰が止まらないらしかった。
「あっあぅっやぁんっんっんぁあ瀬戸ぉ」
パンパンパンパンッ
「ふぁあっ、あっあぁっ、ひっひぁあんっ」
「ウサ…っ」
瀬戸と目が合った。瀬戸の今日の行動はまるで理解できないが、顔は真剣だった。
「ウサ、好きだ…っ」
瀬戸はそう言って中に射精した。
「あぁぁん…っ」
熱いのがビュービューと勢いよく入ってきて、こぽ、と溢れ出るくらいたっぷり注がれた。
俺もいつの間にか、射精していた。ちんこなんか一回も触っていないのに。
瀬戸は息を荒げていた。
「ウサは……?」
答えを求める瀬戸。
俺は、俺はどうだろう。
「…俺は、瀬戸のこと、」
「………」
「同期としか、見れてない」
瀬戸は悲しそうな顔をした。
悲しいのは俺の方だ、襲われてんのに。
「それでも俺は、ウサが好きだ。ウサしか好きじゃない。本当にあの子とも付き合ってない」
「それは、わかった」
誤解だと言うのは、耳にタコが出来るほど聞いた。瀬戸は俺の返事を聞いて今度は小さく笑った。
「なら充分だ」
「…………」
このあと、なんだか気まずいまま俺たちは順番にシャワーを浴びて、瀬戸は帰っていった。なんだか悪いことをした気分だが、どっちかと言うと被害者はやはり俺なので、そんな気持ちは追っ払った。



いつの間にか瀬戸と涼風奈奈の話題は出なくなった。ドラマで活躍し出した涼風奈奈を見ればわかるが、こんないい女があんな若手の芸人なんかと付き合うわけないよな、といった感じだ。たぶん皆が思ってると思う。
一体どういった理由で二人が一緒にいたのかはわからないが、瀬戸はとにかく誤解だと言ったのだから、俺はそれを信じよう。
しかし。
「おい、ウサ!これ見たか!?」
楽屋に遅れてやって来た吉田は、めずらしく興奮気味。パラパラページを捲って開いたままの雑誌を俺に渡した。
目に飛び込んだのは。
「グラビアアイドル梨本りなとFFB瀬戸熱愛……」
「また瀬戸やでー!俺梨本りな好きやったのに…!あいつなんやねんっ」
「………」
まったくだ。あんだけ好きだと言いながら襲いかかったくせに、結局これだ。
俺はその雑誌をゴミ箱に捨てた。
「…いいかげんにしろよ」


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