サイドストーリー


俺の家系はみんな容姿がいい。家族はもちろんじいちゃんばあちゃん、親戚も。
とくにズバ抜けていいのが、親父の姉さんの息子。
俺の従兄弟にあたる。
小さい頃の名残で未だに「お兄」って呼んでる。
まあ実際には二歳しか違わない。
だけど面倒見がいいお兄はいつだって俺を可愛がってくれてた。
実際お兄のことは俺も大好きだ。
お兄といると楽しいから。
だけどこの感情はそれだけじゃない。
俺はお兄に、恋してしまっている。

きっかけは小五の時だ。
俺はまだ性的なことがよくわからなかった。
はじめて勃起した時、俺はどうしたらいいかわからなくてお兄に相談した。
お兄は笑わずにちゃんと教えてくれた。
「男だからな。こうなっちゃう時があるんだ。手で擦ってみ」
言われても意味がわからない俺のちんこを、お兄は優しく握って擦ってくれた。
俺はその感覚が忘れられない。最高に気持ちが良かった。
今思えば、エロ小説のような展開だったけれど、お兄は本当にただ純粋にオナニーを教えてくれただけだった。バカにせず、親にも内緒にしてくれた。
それからお兄としたえっちな体験をしたことなんてない。
だけど俺はそれからずっとお兄のことを想いながらオナニーをしていた。
とんだ変態だ。
だけどお兄のあの手が忘れられなくて、もっともっとお互いが体を求めあって気持ち良くなりたいと思った。
今度は俺が、お兄を気持ち良くしてあげたいって。

なのにだ。
俺が手を出す前にいきなり現れた男に邪魔された。

「あぁっあんっ…んんっ奥ぅ…っあぁん」
壁の向こう側から聞こえるお兄の切ない声。
また今日も俺が居ることも知らずに隣の部屋でおっぱじめている。
これで何回目か。
超絶にかっこいいお兄のあの締まりのいい尻をズコズコ犯しているのは、ただの平々凡々な普通の、まったく冴えない男なのだ。
俺より付き合いの短い、ぽっと出てきたただの凡人。
そいつが最近お兄のもとにやって来てはお兄を犯していく。
「ひぁ、だめ、あぁっ、あぁんっ」
俺がこの手でお兄を気持ち良くさせたかったのに。
俺が触ることでお兄に鳴いて欲しかったのに。
お兄のみだらな姿を目にすることもなく、声だけが壁を通して聞こえてくる。
ずっと聞きたかったお兄の感じている声に、俺の自身が反応しないはずもない。
情けなく勃ち上がるそれ。
しかし俺はいつも触れずにいた。他人に鳴かされた声で射精してたまるか。
「あっあっイク、イクぅっあぁああっ」
「俺も…、イク…っ!」
「あっ…あんん…中ぁ、いっぱい、出てる…っんん」
お兄に手を出すことが目的だったけれど今は違う。
今はそのお兄に手を出すどころか中にまで出しやがったクソ凡人をどうにかしないといけない。
まだ二人は正式に付き合っているわけではなさそうだ。
切り離すなら今だ。
俺は壁の向こう側にいる男を睨みつけた。

「…どうしてやるかな。黒川啓司」


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