ノックして


終業のチャイムが鳴ったと同時に、嵐は鞄を持って俺の席に来た。
「帰ろうぜ黒川」
「…………」
最近茶髪に染めた嵐は、今度は耳に穴を開けてピアスをしていた。
中学の同級生の中では一番目立っている嵐は、教室を出ようとする女の子たちにバイバイと手を振られる。
「今日は抜く約束してないだろ」
俺と嵐はゲイ仲間だった。
二人でエッチはしていないが、ゲイビ鑑賞しながらシコるという行為を俺か嵐の部屋でいつもしていた。
その約束をしている日しか一緒に帰らないのに、約束をしていない今日も嵐は他の友達の誘いを断って俺の元に来た。
「いいだろ。話したいことあるんだよ」
「……はぁー」
元々俺と嵐は性格やキャラクターのタイプが違う。正直家が近所じゃなければ連まない。
面倒くさそうに立ち上がる俺の横で、嵐はご機嫌良く笑っていた。

一緒に帰ろうと言いつつ嵐は寄り道してマックに寄った。
「俺が奢ってやるよ。お前はそこに座ってな」
ご機嫌な嵐はそう言ってスマートにレジへ向かった。
俺は目玉が飛びでるかと思うほど驚いた。
今まで一緒にいて奢ってくれたことなんて一度もないというのに。
どれだけご機嫌だというのか。
しかし戻ってきた嵐が持っているトレイにはシェイクしか乗っていなかった。
ハンバーガーとまでは言わないがポテトくらい奢ってくれればいいのに。
その程度の機嫌なのか。
「で、なんなんだよ話って」
「驚くなよ?」
「驚くわけねーだろ」
「彼氏出来ました」
「なにいいいいい!?」
簡単に驚いてしまった。
嵐は焦る俺の前で憎たらしくにやにや笑っていた。
「だ、誰だよ!?俺たち以外にも仲間がいたのか!?」
「まぁまぁ落ち着きたまえ黒川クン」
余裕の笑みを見せる嵐に苛々するが、俺は必死に心を落ち着かせてシェイクを飲む。
嵐は得意気に口を開いた。
「正直ゲイを探すのは難しい。隠されてたらわかんねーしよ。だからな、目覚めさせるんだよ」
「め…目覚めさせるだと……」
アホか!と言いたいところだがそれで実際付き合えたのだから何にも言えない。
「いいか?俺たちは今思春期だ。めちゃくちゃエッチなことに興味はあるが、経験がある奴はほとんどいない。本物のおっぱいは母ちゃんのしか見たことないですってのが普通だ。オナニーだって毎日同じ雑誌の同じ女の裸を見ながら一人でシコる、ただそれだけ。だが悶々とした性欲は日に日に増えるばかり」
「お前の偉そうな演説はハショれや。結論を言え」
「だからな?そんな中学生に快楽を与えてやるんだよ。骨抜きになる性的快感。中学生には刺激が強すぎる気持ちよさを教えてやれば、同性なんて関係ねぇんだよ!」
「…っ、」
「信じられねぇかもしれねぇが…俺はこの方法でB組の眞知田くんの心と処女をゲットしました…」
「な、にぃ…っ!」
ドヤ顔の嵐に俺は唇を噛んだ。
B組の眞知田と言えば剣道部でいつも爽やかな汗を流し励んでいる、絵に描いたようなイケメン…。
モテるだろうに真面目な性格のため、女子とは付き合っていない様子だったが、まさかこいつの罠にハマるとは…。衝撃だ…。
俺は飲みきったシェイクの容器をメキメキに握りしめた。
「詳細を教えやがれ…」
「だめだめ!俺と眞知田くんの馴れ初め話はさすがに教えられないよん」
「うぜぇ……!!」
悔しさで頭が混乱してきた。
まさか同類だと思っていた嵐に先を越されるとは。
女子にはモテるのにゲイだなんて嵐は苦労するだろうと思ってたけど、そんなことはなかった。
イケメンはやはり、やってのけることもイケメンだ。
「いやぁ我ながらまさかもう童貞卒業出来るとはなぁ」
「ぐやじい……」
「可愛かったなぁ、眞知田くん。まさか生アナルがあんだけ気持ちがいいとは……」
「ぐぬぬぬ」
苛立ちと悔しさで机に頭を伏せた俺の肩を、生意気な嵐がポンポンと叩く。
「まぁまぁ、黒川クン。落ち込むことはないぜ、人生これからだ。まー最悪あれだ、三十路までお前が童貞だったらな、俺が相手してやるよ。バージン取っておいてやるからさ」
嵐は俺をかなり馬鹿にして笑った。
ちくしょう。
「嵐…俺はな……、目が大きくてくりくりしてる笑顔がきらきらしたイケメンが好きなんだ……お前みたいな切れ長つり目は、生憎好みじゃねぇんだよ…!」
「ぬはは、お前みたいな根暗地味男がそんな少女漫画の男の子みたいな輝く存在を捕まえられるわけねぇだろ!俺のテクを実行する前に自分の見た目を磨きやがれ!」
「見てろよ嵐…!眞知田くんよりもかっこいい男と付き合ってやるからな…!!」
俺は調子に乗っている嵐の前に、シェイク代を叩きつけた。


はっとして俺は目を覚ました。
今のは。
夢……。
「おはよ」
ぼけっとした俺の視界に眩いものが入ってきた。
目が眩む。
「………え……?天使……?」
「はは。寝惚けてんの?」
目が大きくてくりくりしてる笑顔がきらきらしたイケメンがいる。
そうだ、俺は今、中学生の頃からの理想の人と付き合えているんだ。
最近久しぶりに嵐に会ったせいか、変な夢を見てしまった。
時計に目を向ける。
昼の三時だった。
だんだん頭がハッキリしてくる。
この天使は俺の恋人である瀬名。
今日は俺の家に瀬名が来てくれて、一緒に昼ごはんを作って食べた後、ごろごろしてたんだった。
横にこんなに愛しい天使がいるって言うのに、寝てしまうなんて俺はどうかしている。
「ごめんな−、寝ちゃって」
髪をばさばさ掻きながら起き上がる。
「全然。でもまだ寝てるようだったら、いたずらしようかと思ってたけどな」
「わお…」
まさかの大胆発言に勃起するかと思った。
寝てる隙にいたずらとか超絶嬉しすぎるんですけど。
「も、もっかい寝ちゃおうかな……?」
「あ、そういえばさ」
ドキドキしてる横で瀬名は俺を完全スルーで携帯を手に取った。
「嵐くんと連絡取り合ってたんだけど」
「えぇ?」
「今黒川んちにいるって言ったら、嵐くんが遊びに来たいって」
「……瀬名、嵐と仲良くなりすぎじゃない?」
この間、瀬名といる時に嵐と会ったせいで、瀬名の貴重な連絡先が嵐に伝わってしまっているのだ。
俺には連絡を寄越さないくせに、瀬名とは連絡を取り合っているらしい。
まぁどちらかというと俺よりも瀬名と嵐の方が同じキャラっぽくて話は合いそうだ。
だけど瀬名が取られてしまう気がして俺はなんだか焦る。
何故か瀬名は、嵐が俺のことを好きだと思い込んでいるけど、その隙につけ込んで襲われでもしたらどうしようとか思っちゃって、俺本当心配。
「まぁそもそも話は合うし…。それに黒川の友達だから仲良くなろうとしてるんだけど」
「いいよあいつと仲良くなんかしなくたって……」
「変なの。一緒にオナり合う仲なのに」
「昔の話すんのやめて!」
俺が恥ずかしがると瀬名は笑う。
「でも、黒川の昔の話とか聞いてるの楽しいし」
「え?俺の話すんの?」
瀬名が俺の話してるとか嬉しいような恥ずかしいような?
てか嵐の奴、変なこと言ってないだろうな。
すげー心配になってきた。
「昔の写真もらったよ」
「えっ!やだ!ハズい!」
俺が本気で恥ずかしがってると、瀬名は白い歯を出してきらきら笑いながら俺に携帯を見せてきた。
こどもの頃、俺の前歯が抜けた時の写真だった。
「ナニコレ!!!」
「めっちゃ可愛いよな、あはは!」
瀬名はめちゃくちゃ笑っている。
こんな小っちゃい時の写真出してくるなんて、嵐は俺になんの恨みがあるんだ……許せん……。
「今すぐ嵐を呼び出してくれ……」
「怒ってる……あはは」
瀬名はそう言いながら嵐に返信をした。
瀬名のメールに対して嵐の返事はめちゃくちゃ早かった。さすがパーリーピーポーだなってくらいの速度だ。
「なんて?」
「嵐くん、今仕事中だって。六時は回るみたい」
てことは、まだまだ嵐は来そうにない。
「日曜に仕事かぁ。金髪だし、あいつなんの仕事してんだろ。てか仕事中に携帯弄ってんじゃねーよ」
「アパレル店員らしいよ」
なぜか今の嵐に関しては瀬名の方が詳しい。
まぁ、あんだけチャラチャラしてたらそうだろうなって感じだ。
「アパートの場所だけ教えといていい?」
瀬名はそう言ってメールを打ち始めたから、俺はアイスでも食べようかと立ち上がって、台所に向かった。
「なにー?なんか食べんのー?」
部屋の向こうから瀬名の声がする。
「アイス食べようかなってー。瀬名は−?なにがいいー?」
俺は冷凍庫を漁りながら返事をした。
「嵐くん来るまでにエッチしないのー?」
まさかの言葉が返ってきて、俺は持ってたアイスを冷凍庫に投げるように戻した。
そして部屋に急いで戻る。
既に瀬名が上の服を脱いでいた。


「あっ、あぁ…っ、あんんっ、はぁ…っ」
「瀬名…苦しくない?」
「ん……大丈夫、」
俺たちは初の試み、うつ伏せバックの体位に挑戦していた。
この体位はなかなかいいと常々耳にはしていたのだが、未だ試したことがなかった。
しかし眺め的にはめちゃくちゃエロい!
うつ伏せに寝てる瀬名の上に跨がってちんこを挿入すると、入ってるところも瀬名のちっさいお尻も丸見え!
そして瀬名の綺麗な背中まで堪能できる。
背中から腰に掛けて、そしてお尻……このラインがエロすぎる!!
「あ、はぁ…っ!ぁん…っ、あぁ……ぅ」
更に体を前に倒すと、瀬名とほぼほぼ密着できる。
お互いの熱を感じつつ、首元や耳に吸いつきつつ、しっかり繋がれるっていうのはまさに最高の体位だ。
腰だけ動かしてるといやらしさが増す。
ゲイビデオでよく見た体位がまさか自分が、しかも瀬名相手にしてるなんて、最高かよ…。
「あっあん…っ、ひぁあっ、ぁっ、あん…っ」
ぐいんぐいん腰を動かして瀬名の中を抉る。
瀬名がシーツをぎゅっと握っている。可愛い…。
「瀬名、気持ちいい……?」
「あっぁんんっはぁ…っ、こ、れ…っ、ぁん…、やば…っ、あっ、あぁ…っ」
瀬名の中がきゅんきゅん締まる。
気持ち良すぎてどんどん腰を動かしてしまう。
「ぁっ…あんっ、くろ、かわぁ…っ、あっあん、激し、の、だめ…っあぁ…、前、擦れちゃ…っ」
「え?」
瀬名はひくひくしていた。
どうやら俺が動く度に、下敷きになってるちんこがベッドに擦りつけられて気持ちがいいらしい。
そんなことに気付いて俺が言う通りに出来るわけがない。
もっと気持ち良くなってくれ!
そう思って俺はまた腰をぐいんぐいん動かす。
「ひっ、んっ、あぁっ…!だめっ、あっ…あんっきもち、い…っ、擦れちゃ…っ、あぁんっ黒川ぁ…っ」
可愛いーーっ!
そんな瀬名をもっといじめたい!
俺は瀬名が弱い耳を舐める。
「ひぁっあんっ、や、ぁんっ、ぁっあっ」
「瀬名…可愛い…っ、」
「あっ、んっ、黒川ぁ…っ、ぁぁっ、黒川ぁ…っ」
「は、っ、俺、イきそ、」
瀬名が可愛すぎて身震いがする。
「んぁっ、ぁーーっ」
俺は瀬名の耳をはみはみしながら、腰をぐりぐり動かしてハメたまま射精した。
びゅーびゅー出て瀬名の中に注がれていく。
「黒川……っ」

「黒川ぁ!玄関のチャイム壊れてるんだ、けど…」
「ッ!?」
突然後ろ側から声がして俺と瀬名はびくついた。
中がきゅううっと締まって焦る。
「あ…」
振り返ると嵐が立っていた。
いつもヘラヘラしてる嵐は珍しく驚いた表情をしている。
しかしそんなことに触れている余裕は俺にはなかった。
俺や瀬名が言葉を発っする前に、嵐は震えた唇を動かして「ご、ごめん!」と言って部屋から飛び出した。
「…な、んで、あいつ…」
時計に目を向ける。予定の六時にはまだまだなっていない。
「だ、大丈夫か?瀬名…」
俺は瀬名の顔を覗いた。
「せ、」
「っ…」
瀬名はくりくりの目を大きく開いて、顔を真っ赤に染めていた。濡れた髪の毛からつーっと汗が流れる。
瀬名の心臓は、俺にもわかってしまうくらいどくどくと大きく脈打っていた。
「瀬名、一回、止めよ、嵐が…」
俺はゆっくりちんこを抜いた。
とろっと精液が垂れる。
身を起こす瀬名に、俺は謝った。
「まだイッてないのに、ごめんな」
「…、や…。ごめん……、…おれ…」
瀬名は今まで見たことがないくらい顔を赤くしていて、口元を手で隠すから声があまり聞こえなかった。
俺はふと視線を下にして、瀬名のちんこを見た。
いつの間にか萎えていて、ちんこの先に少しだけ精液が付着していた。シーツにもどろっと精液が…。
あれ。
もしかして、嵐に見られたって思った瞬間に、イッちゃったのだろうか。
「瀬名、」
「…黒川…、嵐くん、追いかけなきゃ…」
瀬名の様子に俺はまた興奮してちんこが熱を持ち始めたけど、瀬名にそう言われてそれどころじゃなかった。
「俺、自分で掻き出すから…。大丈夫、シーツも替えとくから…」
「瀬名」
「早く、」
追いかけなければいけないとすぐ思うあたり、瀬名はやっぱりイケメンである。
俺はどんくさいながらにも急いで服を着て、嵐が急ぐあまり蹴飛ばしたであろう靴を履いて外に飛び出した。

アパートを出たのはいいが、嵐の姿は見当たらない。
どこに行くのかも見当がつかなくて、俺はとりあえず駅の方へ走った。

嵐くん、黒川のこと好きだと思うよ。

瀬名の言葉が頭に浮かぶ。
そんなわけはないのだが、万が一を思うとやばい。
まぁそれはどっちでもいいが、お互いあの光景を見た・見られた立場的には一回話しておいた方がいい。
瀬名と嵐も仲良くなったばかりだし。

そう思いながら走り回るが、嵐の姿は全くない。
嵐に連絡しよう、と思ってポケットに手を突っ込むが、携帯がない。
急いで飛び出してきたから家に置いてきたらしい。
俺ってなんて無能なんだ……。
自己嫌悪に陥りながら、またアパートの前まで戻ると駅とは反対の方向を走り回ってみた。
やっぱり嵐の姿は見つけることが出来なかった。

俺は無い体力でそこら中を走り回ったが、結局嵐の行き場はわからずに、アパートに戻った。
瀬名は大丈夫かな?
ほったらかしにしてしまった瀬名のことを心配しながら玄関の扉を開けた。
すると出る時にはなかっためちゃくちゃ履くのが面倒くさそうな紐ブーツが置いてある。
「…………………」
嵐のじゃねーのかコレ……。
先に戻ってるオチ辛すぎる…。
俺はおそるおそる家の中に入った。
俺の部屋のドアが閉まっている。
近付くと、話し声が聞こえてきた。
「龍二くん!ほんっっとーに、ごめん!!」
嵐の声だ。
「仕事早く上げて貰えてさ、連絡すれば良かったんだけど、驚かそうとか思っちゃって…」
「いや…俺が軽率だった、こっちこそごめん…」
瀬名も謝っている。
俺も入っていこうとドアノブを掴む。
「俺、嵐くんの気持ち、全然考えてなかった…本当にごめん…」
「え?」
なんだか深入りそうな話が始まりそうで、俺は開けるのをためらった。
「嵐くん、黒川のこと好きなのに、見せつけるようなことしてごめん」
お、お。
確信迫る発言に俺はなんだかドキドキした。
俺は嵐に好かれている気はないが、瀬名が何度もそれを言うから、なんかそうなのかなとか思ってしまう。
嵐の返事は一体?
そう思って耳を澄ますと、嵐は驚いていた。
「いやいやいやいや!えっ!?なにそれ!」
姿を見なくてもかなり慌てているのがわかる。
「俺、黒川と付き合ってるからわかる…。嵐くん、黒川のこと好きだよな」
「いや、好きじゃないよ」
瀬名の言葉に嵐はすっぱりと簡単に言い放った。
「いや、俺に気を遣ってんならやめて。好きだろ」
「や、全然遣ってないから!龍二くんって自分の恋人が一番って思ってるタイプの人!?」
「……好きじゃないの……?」
「うん」
嵐ははっきり答えやがった。
それはそれで俺に失礼だろ、と思ったが、言い出してるのは瀬名だけだ。それが当然だった。
ずっと一緒にいた俺すらそんな感覚はなかった。
今度こそ部屋に入るか、そう思ったところに、また嵐の声が邪魔をする。
「まー、普通に暮らしてて、一応意識してたとこはあったかな」
お?と思って俺はまた扉に耳をくっつけた。
今入って行けばこの続きを聞くことは一生無いだろう。
「あ、好きとかじゃないけど。中学の時に約束してたことがあるんだ。もし黒川が三十歳になっても恋人が出来なかったら、俺の穴使って童貞卒業させてやるってさ。ついでに処女で、なんて言っちゃったからさぁ。ま、俺タチだから平気なんだけど、元カレとかとちょっとそういう流れになると結構必死に処女だけは守ろうとしてたりしちゃってさ」
俺は驚いた。
そんな、どうでもいいような約束を何気にずっと守っていた嵐。
俺は今日、夢に見るまですっかり忘れていたのに。
「まっ!龍二くんの存在がある今、俺が処女貫き通す理由もなくなったし、次彼氏出来たら俺も試してみよっかなーあははは」
へらへら笑ってるけど、そんな嵐がなんだか健気に見える。
と、のんきに思った瞬間耳をくっつけていた扉が開いた。
内側の方に俺の体は倒れていく。
「うわっ!?」
「黒川!」
突然の俺の登場に二人は驚いた。俺も驚いてるけど。
「お前……」
嵐は俺が盗み聞きしていたことに気付いたのか、冷たい目を向けた。
「あ、はは」
「最低かお前は!」
嵐が倒れ込んだ俺の頭を小突く。
「いやぁまさかお前が俺のこと好きだったなんて」
「ちゃんと盗み聞けや!そんなこと言ってねーだろ!」
嵐はぎゃーぎゃー騒ぎながらも、なんだか顔をほんのり赤くしていた。


そのあとは嵐がおみやげに持ってきてくれたドーナツを三人で食べて、コーヒーを飲みつつ、ぺらぺら話した。
そんなことをしていたら、窓の外はもう暗くなっていた。
「もーこんな時間かぁ」
嵐は時計を見ながら呟いた。
「黒川そろそろ帰れば?」
「いやここ俺んちだから。お前が帰れや」
「あはは」
俺と嵐のやり取りを、瀬名は相変わらず笑って見ていた。
でもどこか前よりすっきりしてるかもしれない。
瀬名からしたら、嵐が俺のことを好きなんじゃないかという疑いが晴れたわけだし。
「龍二くんは?一緒に帰る?」
「おいふざけんな」
帰ろうとした嵐が、急に俺から瀬名を取り上げようとするので思わず嵐を睨む。
「ううん。今日泊まってくから」
瀬名は普通のことのようにさらりと言ったが、俺的にはえっそうなの?って感じだった。
今日は普通に帰っていく予定だったのに。
俺、今めちゃんこ嬉しい。
「そ。じゃー今度は俺んちにでも来てよ」
嵐はそう言いながら立ち上がった。
「行かねーよお前んちなんか」
「龍二くんを誘ったんだよ、お前は俺んちの門をくぐることすら許さねぇー」
「永遠にその門の奥から出てくんじゃねぇチャラ男」
俺たちは別れ際まで悪態をつき、瀬名は笑顔で嵐を見送った。
がちゃん、と玄関の扉が閉まったのを確認してから、俺は瀬名の方を見る。
「泊まってくって本当?」
「なんか予定あった?」
「あるわけないじゃん」
「良かった」
瀬名は俺の方を向いてきらきらな笑顔を見せてくれた。
そしてそのまま抱き付かれて、動揺した俺の唇にキスをされる。
「……っ!せ、瀬名…」
「さっき、中途半端だったから……」
瀬名はそう言って俺の目をじっと見つめてきた。
可愛すぎる。
「べっ、ベッド行こ」
俺が慌てて言うと、瀬名は俺の手を掴み行かせまいとする。
「ここでいいから……」
「え」
「黒川…」
目を瞑って俺からのキスを待つ瀬名に、俺のちんこは元気になった。

「あっ…ん…」
玄関でイチャイチャするっていうのもなんだか燃える。
キスをしながらどんどん床に崩れていった俺たちは服の中に手を突っ込んで肌を撫で合った。
「はっ、あっ」
瀬名が色っぽい息を吐く。
耳の穴に舌を突っ込んで舐めると瀬名は俺の下で小さく悶えた。
「耳ばっかやだ…っあっ…はぁっ」
「瀬名…可愛い、」
「んんっあー…も、やだ…ぁん」
瀬名が仕返しとでも言うように、服の中で俺の乳首を弄ってくる。
最高かよ!
そう思った瞬間に、玄関の扉ががちゃっと開いた。
「わりー!携帯忘れたぁー!」
頭の悪そうなチャラい声に、俺と瀬名は顔を上げた。
帰ったはずの嵐が立っている。
「あ゙…っ」
気まずそうに一言声を漏らしたのは、全員だった。

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