二人は独身


夏目は不機嫌な顔をしながらホテルの一室に訪れた。
出迎えたのは夏目にとって大先輩である中原。
いらっしゃいと、笑う中原に夏目は軽く会釈だけして部屋へ入った。
「随分不機嫌だな。どうしたわけ夏目ちゃん」
夏目はベッドに腰掛けると、かぶっていた帽子を手に取り叩きつけた。
「テレビ観た?」
「え?」
「腹立つわー」
中原は近くにあった新聞を手に取り、テレビ欄を確認する。
ゴールデン枠に一つ、夏目と、自分の名前が載っている番組を見つけた。
「この『結婚しない売れっ子たち』ってやつ?」
「まさかジジイにも取材行ってるとは思わなかったわ」
「夏目んとこも来たんだ」
「来たよ、大きなお世話だっつーの」
「そんなに怒んなくても」
「べつに怒ってはねぇけどさぁ」
なんか、と呟いた夏目はそこで口を閉じた。
中原は夏目の反応に笑いながら、急須に茶の葉を入れる。
「結婚してる奴がそんなに偉いのかよ」
夏目はそのまま後ろに倒れた。
布団が思ったよりふかふかなことにこっそり驚く。
「お茶飲む?」
中原が上から覗きこむ。
飲む、と呟く夏目に中原は手を伸ばした。
中原の手を掴んで起き上がった夏目は湯飲みを受け取った。猫舌の夏目は湯飲みに口をつける前に息を吹きかけ冷ます。
「まぁ、しょうがないね。俺も立場が立場だし、夏目もモテるだろうし、ある程度の場所まで来た芸人が結婚しないってのは、やっぱり話のネタにはされるよ」
「ジジイは結婚したいの」
中原は黙って夏目の湯飲みを掴み、そばの机に置いた。
まだ飲んでない、と言う夏目の言葉を無視して、中原は夏目を押し倒す。
「結婚、してくれるの」
「できねぇだろ」
「夏目としか結婚したくないな」
「ん、おいジジイ、盛ってんじゃねぇ」
首筋にキスをする中原の顔を夏目は手で押し退ける。
その手を避けてまた夏目にキスを仕掛ける中原。
攻防をしばらく続けると、夏目が笑い出す。
「やめろっつーの!元気だなお前!」
「夏目の方が俺より若いのに、元気ないの」
「俺も来年四十だぞ…体力そんなねぇよ」
「まだぎりぎり三十代じゃん。おじさん羨ましい」
結局夏目は中原に流されて、自分からベルトを外した。


「んっはっはぁっんんっ」
夏目のアナルに指を突っ込みくねらせながら、中原は寝転ぶ夏目を見つめる。
「あの夏目が、ケツの穴弄られるのが大好きだなんて、皆驚くだろうね」
夏目は顔を火照らせながら自分の足元にいる中原を睨み付ける。
「うるせぇな…いいからもっと掻き回せよ…。これだったらまだ風俗のねぇちゃんにしてもらう方がいいっつーの」
「また風俗行ったの」
「おめぇもこの間行ってたろジジイ」
「なんで知ってんの」
「あ?木名瀬が言ってた」
「妬いたの夏目ちゃん」
夏目はイラッとして身を起こした。止まっていた中原の指を無理矢理抜かせ、座っている中原の股間に手を這わせた。
「脱げよ、食ってやる」
笑みを浮かべながら脱ぐ中原にイライラしながら待つ夏目。
ぼろんと溢れた中原のぺニスに、相変わらずバカみたいにデカイな、と心の中で文句を言った。
膝立ちする中原のぺニスを掴み、夏目は先端をぺろりと舐めた。汗臭いにおいが夏目の鼻をつく。
「…くっせぇ。風呂入ってねぇのかよ」
「そっちの方が好きじゃなかった?」
「変態ジジイ」
夏目は小さい口に無理矢理中原のぺニスをねじこんだ。大きすぎて根本まで入らないことにイライラしながら、頬を膨らませしゃぶる。
「かわいい。小動物みたいだね」
「ふれひくへー」
小言を言うが何を言っているかわからない中原は笑みを向けながら夏目の髪を撫でる。
「女の子とする時も、舐めてあげるの?」
丁寧にしゃぶる夏目を見ながら中原は呟くように聞いた。
ちゅぷっと音をたてて口からぺニスを離すと、夏目の唇からいやらしい糸が引く。
「あんましねぇけど。俺は顔騎されながら扱かれるの好きだからその時はする」
中原のぺニスを擦りながら答える夏目。
「君結構マニアだよねぇ」
「うるせぇな普通だろ」
「俺も顔騎した方がいいのかな?」
「男だったら自分がする方がいい」
「エッチ」
「もういいだろ、」
夏目はアナルにぺニスを求めた。
四つん這いになって、中原に尻を向ける。
「おねだりしてよ」
なんとなく言ってみる中原。
「早くケツほじくって」
なんの躊躇いもなく言う夏目。
中原は普通の顔をしている夏目に面食らいながら、勃起したぺニスを夏目の中に入れた。
「っ、あ、はぁっ」
夏目が熱い息を吐く。
中原はゆっくり腰を動かした。
「っ…、ぁー、いい…っ」
夏目の腰を掴むと、汗でしっとりしていた。
普段涼しい顔をしている夏目の性に貪欲なところが中原は好きだった。
夏目は突かれながらいつも自分のぺニスに手を伸ばす。
中原では物足りないのではなく、ひたすら快感に没頭することが好きなのだ。
「君って、いつもバックでしたがるね」
夏目の汗ばんだ背中を見つめながら中原は言った。
「動物みたいで燃えるだろ」
シーツを握りながら夏目は言う。
中原はずりゅっとぺニスを引き抜いた。
「…?なんだよ」
途中でやめられ夏目は怪訝な目を中原に向ける。
「君が好きな体位は座位でしょ」
「はあ?」
中原は無理矢理夏目の体を引き寄せて向かい合うと、膝立ちの夏目の腰を落とさせてぺニスをハメた。
「んっはっ」
「もっと声出して欲しいな、おじさん」
「うるせぇ。俺が喘いでたら気持ち悪いだろ」
「かわいいだけだけど」
「あっ」
中原は目の前の夏目の乳首に吸い付いた。
「おい…やめろ」
夏目がぎゅっと中原の髪を引っ張る。
「顔赤い」
「うっせぇジジイ」
「動くよ」
中原は下から夏目を突き上げた。
夏目は中原の背中に腕を回して抱きついた。
お互いの体の熱がじんわりと伝わる。
好きな体位がバレていたことに、夏目はひそかに恥ずかしがった。
「ふっ、んっはぁ…っ」
近くにある中原の耳に夏目は吸い付いた。そこら中熱いのに中原の耳は冷たかった。
熱くなればいいのに、と思いながらはみはみと甘噛みする。
「…耳、好きなの」
中原に言われて夏目は口を離す。いつの間にか夢中になっていたことを恥じた。
「暇なんだよこっちは…もっとむちゃくちゃ激しくしろよ」
「はいはい」
中原の動きが少し早くなる。揺さぶられながら、夏目は中原の息遣いに耳を澄ます。
夏目はふと、先程観たテレビの中原の言葉を思い出した。

『なんで結婚しないんですか?』
『一人じゃ出来ないから』
『したいと思ったことはありますか?』
『何度もあるよ』

笑いながら答えた中原の姿がぼんやり頭に浮かんだ。
「ジジイ、この間俺を、めちゃくちゃ乱暴に抱いた日あったろ」
荒い息の中で夏目がそう言った。
二週間ほど前、中原はめずらしく夏目に無理矢理迫り手荒に触れたのだ。
中原は間を開けてから頷いた。
「ごめんね。怒ってる?」
「あれ、取材があった日だろ。着てた服が一緒だった」
「…………」
夏目は顔を上げて、中原を見つめた。
お互い歳を取っている。
中原は夏目より一回り以上歳上だ。
そんな若くない二人が抱き合っているなんて、と夏目は思った。
「ジジイが女じゃないのがいけないんだぜ」
「お互い様でしょ、それは」
小さく笑ってみたが、お互いどこか悲しくなっていた。
二人でいるのに悲しいとは、不思議なもんだと夏目は思う。
「俺、結婚はできねぇけど…ジジイの介護はちゃんとしてやるよ」
「プロポーズされるより嬉しいよ」
「ふん、」
夏目はこれ以上顔を合わせるのが気まずくなって、また中原に抱きつくと首元に顔を埋めた。
「愛してるよ、」
中原はそう言って激しく突き上げた。
夏目がそろそろイケるように、いいところをごりゅごりゅと刺激する。
「んぁっ!あっ!」
今まで息を吐くくらいだった夏目から艶のある声が出る。
「あっ!んぅ、そこっ…あっあっあっ!」
「はぁっ、んっ、はぁ…っ」
「ひぁっんんっ!あっあっ!イ、く…っ」
「中、っ、出していい?」
「い、ちいち…っあっ聞くなよっあっあぁっ」

二人は射精したあとも、とくに何を話すわけでもなくしばらく抱き合ったままだった。



「夏目ちゃん、風俗のおねえさんに穴掻き回される時もあんな声上げてるの?」
シャワーを浴び終わった夏目に中原は声をかけた。
出てきて早々の言葉に夏目は思わず吹き出す。
「言わないってことはそうなんだ」
「…上手いもん」
中原は頬杖をついて息を吐いた。
「勉強のために行こうかな?」
「てめージジイ、風俗に行きてぇだけだろ」
「ははは」
「本当、結婚してたら嫁に刺されるぜジジイ」
小言を言いながら冷蔵庫を開ける夏目。中原は笑いながらも携帯を弄っていた。トピックになっている夏目の名前。
先程放送されていた番組のことが、早速記事として上がっている。
水をごくごく飲んでいる夏目の目を盗んでこっそりとその記事を見た。

「…おい、ジジイ。さっさとシャワー浴びろよ。くせーぞ」
「はいはい」
中原はソファから立ち上がると、後ろから夏目に抱きついた。
「なんだよ!」
「いいや、べつに」
「さっさと入れよ」
「はーい」
鼻歌まじりにシャワー室へ行く中原の
背中を、夏目はじっと見つめた。


『夏目さん、どうして結婚しないんですか?』
『うっせぇな、大きなお世話だ』
『結婚願望はあります?』
『ないね。一生独身でいい』
『結婚を考えたことがある人って今までいました?』
『いない、けど。誰とも結婚してほしくないなって人はいる』
『誰ですか?』
『…よく行く風俗のおねえちゃん。…はははは!』
『あと同じく独身の中原真也さんと、仲が良いみたいですが、』
『うん、よく飲みに連れてってもらってる』
『独身仲間にメッセージをお願いできますか』
『えー…、中原さん。独身同士、これからも仲良くやっていきましょう。僕より早く結婚したりするのは、やめてください。まぁ…僕は一生結婚しないですけどね。寂しくなったら僕が、慰めてあげます。』


「…なんであんなことテレビで言ったんだろ」
夏目はテレビでの自分の発言を思い出すと、赤面した。
中原が観ていなかったことが唯一の救いだと思いながら、夏目は水を一気に飲み干した。


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