青樹


吉川が性欲処理課の青樹に惚れ込んでから随分経つが、処理を頼めたのは二回程度で、なんの進展もないままだった。
処理だなんて贅沢は言わないから、せめてちょっとした雑談でも、いや挨拶だけでも、いやいっそのこと廊下ですれ違うだけでいい、会いたい。吉川は仕事中でも構わずそんなことをずっと考えていた。
「あ、前からお前が好きな青樹が来たぜ」
心でも読めるのか?と吉川は隣にいた先輩の上地に対して思った。
しかし確かに廊下の遠くに青樹がいる。
吉川は思春期の少年のように心を弾ませた。
これだったらすれ違う時に挨拶くらいは出来るかもしれないと思うと緊張で唇が乾く。
「あいかわらず綺麗だなーあいつ。無表情だけど」
それがいいんじゃないか、と吉川は思う。
あんなに事務的なのに、処理の時は可愛い表情を見せるのが魅力のひとつなのだ。
青樹を見る。
あと少しですれ違う。
吉川が胸をときめかせたその時、後ろからついてきていた社員が青樹に抱き着いた。
吉川は思わず足を止めた。
上地も釣られて止まる。
「青樹ちゃーん、今空いてる?処理お願い!」
社員が青樹のシャツの中に手を入れまさぐりながら言う。
「どうぞ」
青樹はそれを了承した。
社員は喜びながらペニスを青樹のアナルへ挿入した。
「おー、すんげぇトロトロ!さいっこーー!」
社員は青樹の体に腕を回して抱き締めながら腰を振った。
パンパンッパチュッパチュッパンパンッ
「あっあっ!んっんっんっ!あっあっ!」
青樹が声を漏らす。
吉川は青樹を初めて見た日のことを思い出した。確かその時も後ろから来た社員に処理をせがまれていた。
「いやほんと、処理課を好きになるのだけはやめとけよ吉川」
上地が処理をしている青樹の姿を見て言った。
「……そうですね…」
上地は青樹の横を平気な顔をして通り過ぎた。
吉川も重い足を前に出した。
青樹が後ろから突かれながら吉川の方を見る。
思わず目が合い吉川はかたまった。
「っ、あ…っ、んん…っ」
吉川は唾を飲み込む。
青樹はじっと吉川を見つめた。
「………」
「おい、吉川行くぞ。さっさと飯行こーぜ」
上地に呼ばれて、吉川は青樹から目をそらして通り過ぎた。


「はぁ……」
吉川は持っていた箸を置いて溜め息をついた。
青樹のことを考えると食事が喉を通らなかった。
あまりの遅さに、一緒に食堂に来た上地も食事を終え出ていった。
吉川はどれだけ理屈でわかっていても青樹のことを忘れることが出来ないでいる。
上地の、処理課を好きになるなという言葉は最もだが、吉川にはもう効かない言葉だった。
「元気ないな」
下を向いていると目の前に料理が乗ったお盆が置かれた。
顔を上げる。
吉川の前に座ろうとしたのは青樹だった。
「あ、青樹さん…っ」
吉川は思わず慌てる。
「ここいいか?」
「あ、…はい、ど、どうぞ…っ」
わたわたしている吉川に対して、青樹はいつも通り落ち着いていた。
吉川は周りを見渡す。
時間的にも他の社員はあまりいない。席もいろんなところが空いていて、誰も座っていないテーブルすらある。
それなのになぜ青樹がわざわざ吉川の目の前の席に座ろうとするのか、吉川はわからなかった。
しかしその疑問すら打ち消してしまうものが目に飛び込む。
「いただきます」
手を合わせる青樹。
そんな青樹の前に置かれた料理は凄まじい量だった。
ごはんと味噌汁はどんぶりに盛られ、おかずは全定食のメイン全てを乗せられているレベルで多い。
それにくわえて蕎麦やカレーライス、パスタも置かれている。
何人前かもわからない量がテーブルを占める。
「…青樹さん…これ全部食べるんですか……」
「ああ」
表情ひとつ変えずに青樹が頷く。
「…細いのにめっちゃ食べるんですね…」
「そうか?」
「ええ……」
青樹の意外な一面を見て吉川はかなり動揺した。
青樹はちらっと吉川の前に置かれた定食に目を向ける。
ほとんど手が付けられていない状態で置かれていた。
「食べないのか?」
青樹は蕎麦を啜りながら訊いた。
吉川は戸惑う。
「それ、鯖の味噌煮だろ」
「あ、はい」
青樹は蕎麦の汁を全部飲み干した。
きれいに食べた蕎麦の器を横に置く。
「私も注文した…」
「あ、そうなんですか」
しかし青樹のてんこ盛りの皿の上には鯖の味噌煮は乗っていなかった。
「だがもうなくなったと言われた」
「えっ」
青樹が吉川を見る。
「…た、食べます…?俺、これにはまだ箸付けてないんで…」
「え」
吉川が鯖が乗った皿を渡すと、青樹は少し間を置いてから受け取った。
そして柔らかい身を箸で掴み一口食べた。
「いいのか」
「いやもう食べましたよね」
「………」
青樹は少し考えてから、てんこ盛りのおかずから海老フライを掴んだ。
そして吉川に向ける。
吉川が一体なんなのかわからず止まっていると青樹は「食べろ」と言った。
「えっ」
吉川が戸惑う。
手頃な皿がなくあたふたした。
「口開けろ」
青樹がさらに腕を伸ばす。
「えっ、え…っ」
吉川は混乱しながらもとっさに口を開けた。
ぎゅっと眼を瞑ると口の中に海老フライを突っ込まれた。
「……っ」
「美味いか」
青樹が碧い目でじっと見つめた。
吉川は顔が赤くなったのが自分でわかった。
強引に入れられた海老フライをなんとか噛みながら頷く。
これって、俗に言う、あーん、ってやつだ。
吉川は状況に気づいた途端舞い上がり心がどこかに飛んでいきそうだった。


「話ってなんだ?」
吉川は食堂で青樹と別れたあとも、青樹のことで頭がいっぱいで仕事が手につかなかった。
いてもたってもいられず、思わず青樹を小会議室に呼び出した。
「処理じゃないのか」
「ち、違います…、あ、あの…」
青樹は、処理ではなく話があると呼び出されたのは初めてだったので不思議な面持ちであった。
吉川は真っ赤な顔をしながら青樹を見つめた。
「あ、青樹さん…っ、お、俺、青樹さんが好きです…っ!」
青樹は動揺しなかった。
吉川に好きだと告白されるのは初めてではない。
「…処理課の人間なんか好きになるもんじゃない」
いつも通りの言葉を返す青樹。
しかし吉川は今日、まったく引く気はなかった。
吉川は青樹にずいっと近寄り肩を掴んだ。
「もう処理課は辞めてください!」
「え?」
「俺と結婚しましょう!」
吉川は青樹の細い身体を抱き締めた。
さすがの青樹も吉川の言動には驚いた。
「け、結婚って…。出来ないだろ…」
現実問題を挙げるが吉川は屈しない。
さらに青樹を強く抱き締めた。
「わかってますよ…!でも、市役所には出せないけど、婚姻届書いて、二人で一緒に暮らしたら、結婚とおなじですよ!俺、青樹さんの分まで働きますから!青樹さんはもう処理課なんて辞めてください…!」
「…………」
青樹は黙った。
ここまでの求婚はもちろんされたことがない。
吉川のバクバクと動く心臓の音が伝わり、青樹の心臓もうるさく鳴り出した。
「…わ、」
青樹が口を開く。
なぜだか出た言葉は震えていた。
自分が動揺していることに青樹は気付く。
「…私…、食費とかすごいぞ…」
「そ、そこ問題にしますか…っ?」
「だって」
「そんなの、いっぱい美味しいもの食べさせてあげますよ…!」
「………」
青樹は黙ってしまった。
吉川は青樹の名前を呼んで、首元にキスをする。
「ちょ、」
反応する青樹。吉川は堪らず首や耳にキスをしていく。
「おい…っ」
青樹が吉川に顔を向けると、そのまま躊躇わず唇へキスされた。
吉川の舌が侵入する。
青樹が拒むだろうかと様子を見たところ、青樹も吉川の腕を掴み、逃れようとしつつも舌を絡ませるので、吉川は調子に乗った。
青樹のワイシャツの下から手を忍ばせ肌をなぞり、乳首に触れた。
青樹の口から息が漏れる。
くりくり弄ってから、吉川はまた下に手を滑らせてペニスに触れた。
吉川はとっくに勃起しているが、青樹の方もすでにかたい。
吉川は嬉しくなって青樹のペニスを擦り上げた。
「ん、ふ、んん…っ」
キスの音とはべつに下からクチュクチュと水音がする。
吉川は自分のペニスも取りだし、青樹のペニスとくっつけ一緒に擦った。
青樹は白い頬を赤く染めながら、吉川の服をぎゅっと掴む。

ずいぶんと長い時間、吉川と青樹はキスをして、お互いのペニスを擦っていた。
吉川はやっと青樹の唇を解放する。
しかし青樹が言葉を発する前に、吉川は青樹を床に押し倒した。
長い脚を大きく広げる。
一日中社員に使われていたアナルはひくついている。
「青樹さん…っ」
「だ、だめだ…っ!」
自分のペニスを掴み挿入しようとする吉川を青樹は止める。
青樹の顔は今まで見たことがないくらい赤かった。
「しゃ、社内でこんなこと…っ」
「え……?」
普段から社内で処理をしまくっているのに今更な言葉を青樹は口にした。
きょとんとしている吉川に青樹は続ける。
「処理ならともかく…っ、せ、セックスはだめだ…」
瞬間ボッと吉川の顔も真っ赤になった。
今まで青樹は同じ性行為でも処理とセックスを別物として扱っていた。
そんな青樹が今から吉川とする行為を処理ではなくセックスだと認識しているのだ。
「あ、青樹さん…っ」
「だめだ…っ」
「でも俺我慢出来ません…っ」
吉川は堪らず青樹のアナルへペニスを挿入した。
「んぁあっ」
青樹が可愛い声を上げる。
簡単に全部飲み込んでしまう青樹のアナル。
しかしきゅうきゅうと締め付けが凄かった。
「あっ、青樹さん…っ力抜いてください…っ」
「あっだっ、だって…っ、はぁっすごいから…っ」
吉川に迫りくる射精感。しかし耐えて吉川は腰を振る。
「あっ!あっあんっあぁっ!だめぇ…っ!」
青樹が喘ぐ。
目に涙が浮かんでいる。
愛しさが増す。吉川は青樹の中を突き上げた。
「ぁんっあんっあんっ!あぁんそこぉっあぁっ突くの…っだ、めっあぁんっ!」
「青樹さん…!」
吉川が身体を倒す。唇を寄せると青樹もキスに応えた。
「あっふっんぅっあぁっあんんっんんっあぁんっ」
「可愛い、青樹さん」
パチュッパチュパチュッグリュグリッヌチュヌヂュッヂュポジュポグチュングリュンパチュパチュ
「はぁ…っあんっ、あぁんっぁっぁっひぁんっ」
吉川が青樹の身体を撫で回す。
青樹が身を捩り、快感に耐えるように吉川の体に腕を回してしがみついた。
「青樹さん…っ」
お互いがお互いの熱を感じた。
吉川の手が青樹のペニスをまた掴んだ。
最初に擦った時よりも青樹のペニスはがちがちで、我慢汁も大量に出ていたのかビチョビチョだった。
手が青樹の汁で思いきり濡れたことにも吉川は興奮した。
「おもらししちゃったくらい濡れてますよ…」
耳元で言われ青樹はかっとなる。
「だっ、だって…っ、あんっ、き、気持ち、いいから…っあんっあぁんっこ、擦るの、だめっあんっ」
「青樹さん、」
吉川の手が青樹のペニスの先をクリクリ弄る。
青樹の体がびくびく跳ねた。
「あっあっあぁんっやだっ先っぽ弄ちゃ、あんっだめっおちんちん…っきもちい、…っ!」
青樹の言葉にも耳を貸さずアナルを突きながら弄り続ける吉川。
青樹が涙目で訴える。
「あっあっもぉっおちんちんっだめぇ…っ私だけ…っ先に、イッちゃう…っ!ひぃっ…あっあっイくぅ…っ」
「イッてください…っ処理じゃないんだから…っ!先に…っイッたって、構わないから…っ!」
クチクチクチクチヌチュヌヂュパンパンパチュパチュクチクチグチュグチュヌポヌポグチュゥッパンクチュクチュッ
「あっあぁ〜〜っ!あっ…っ、っ、〜〜っ!!ぁぁ…っ!」
青樹は吉川をぎゅっと抱き締めながら射精した。
吉川の腹に熱い精液がびゅっとかかった。
「青樹さん…っ!」
吉川は自分も堪らず激しく腰を振った。
青樹が眼を開く。
「あっあっあ!待っ…今だめっあはぁんっあぁっあぁっあんっあんっあんっあぁんっ!」
「青樹さんっ青樹さんっ好きです…っ!青樹さんっ!」
「あっあぅっあんっよ、しか…っあぁんっよしかわぁ…っ」
「んああっ」
吉川は青樹に名前を呼ばれ思わず射精した。
熱くて濃い精液が青樹の中に放たれる。
青樹はその精液の熱さに息を荒げた。

二人は射精したあともしばらく繋がったままでいた。




定時をとっくに過ぎ、ほとんど明かりがついていない廊下を歩き、久遠は処理課に向かった。
驚くことに、処理課の中は電気がついたままだった。
あいつら電気消してかなかったな、と雪村や佐倉のことを思い出しながら扉を開けた。
「あれ、なんだお前。まだいたのかよ」
「…お疲れ様です」
中にはスーツに着替えた青樹がいた。
「早く帰れよー、仕事はともかくお前みたいなのが歩いてたら夜道で襲われんぞ」
「…課長を待ってました」
「あー?」
久遠は無表情の青樹の鼻をつまむ。
「お前と並んでたらオセロって言われるだろ、早く帰れ」
「………あの」
青樹が喋りかけたので久遠は手を離す。
青樹は「その、」と続けて頬を少し染めた。
「なんだよ、そんな可愛い顔して」
「…課長も前髪下ろしてると可愛いですよ」
「うるせー嬉しくねぇよ!」
久遠は垂れていた前髪を頑張って後ろに上げた。かなわずサラサラとまた前髪は垂れる。
「…で、その、…」
青樹はそんな久遠を気にせず話を戻した。
「お話があるんですが」
久遠は青樹の顔を見る。
なぜだか自分の心臓の鳴り方が瞬間変わったのを感じた。


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