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 恥ずかしい声。耳を覆いたくなる。
 自分の中から、こんな声が出るなんて。
 ほとんど泣き声の、切ないような堪らないような鼻にかかった甘い声。
 ねだってるみたいで、全身が火になりそうなほど恥ずかしい。
 熱で満たされた腰がぶるりと震えると、俺の体に覆いかぶさっているたくましい影が、小さく呻いた。
 途端に足の先から頭のてっぺんまで、ジンっと痺れが走る。
「……ばかやろ、勝手に締めつけるな……っ」
 イッちまうだろ、と吐息混じりに囁かれながら、大きな指の先でゆっくり腰を撫で上げられて、たまらずに喉の奥で鳴いた。

 この人が、大好きだ。
 好きで好きでたまらない。

 突き上げてくる動きが止まっている間に、乱れた呼吸を必死で整える。
 胸を上下させて喘いでいると、緩まっていたその律動が、また盛り返してきた。
「あ、あ、シ、ン……っ!」
 角度を変えながら責め立ててくるシンは、まだ余裕があるように目を細めて見下ろしてくる。

 ……この眼なんだ。
 あっという間に鷲掴みにされて、心を奪われた。
 銀の髪と銀の瞳。
 その背後に見えた、月と同じ色。目を離せなくなった、あの瞬間。
 風に乗ってきた声は、低音の、おなかの下に響くような艶っぽい声で。
 月の化身のような姿。
 痩せた俺は、完璧なその存在に、恐怖以上の畏怖を感じた。
 それからは、ずっとこの人のことを。
 月を見れば、この人を。
 いつでも思い出して、もう一度会いたいと思っていた。
 それが恋だと気づいたのは、随分後になってからだ。
 ――兎の俺が、狼を好きになるなんて。
 仲間に哂われて、親友には、叱り飛ばされた。
 だって、狼にとって、兎は……


 ただの、食料だから。


「……ほら、締めろ。……っ、出すぞ」
 荒々しく責め立てられて、ひっきりなしに声が出る。
 思わずつむってしまっていた目をこじ開ければ、冷たい火のような銀の瞳に見据えられていた。
 捕食者の顔。
 その形のいい薄い唇を端から端へ伝った、赤い舌。

 ――食べられる……。

 ぶるり、と恍惚に体がとろけて、迫り上がる快感に心臓が走る。
 激しく俺を追い上げるシンの長い銀の髪が、肌を滑った。
「……ひっ、ん……!」
 わずかな刺激で体が竦む。
 揺さぶられて戦慄く腰を大きな手で引き寄せられて、頭の中が真っ白になった。





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