――歩様。
ささやくような声で呼ばれて、顔を上げる。
顎先を長い指に捉えられて。綺麗な顔が近づいて。
愛しげに見つめられていた。
とろりと自分の吐息が蕩けてしまう。
途端、大きな手に首を掴まれて目をみはった。
ぎりぎりと締め上げられ、呼吸を求めた喉が虚しく鳴る。
『と……ぅまさん……っ』
無表情に見下ろしてくる、冷たい顔。
ふいに口角を上げた唇が耳朶に近づいて、囁く。
――殺したいほど、愛していますよ。
「と……っ」
自分の体の震えで、ベッドが軋んだ。
――夢だ。これは、夢だ。
はぁっ、と詰めていた呼吸を宙に吐き出した。
締められた感触が生々しく残って、思わず指先を喉に這わせる。
どくどくと拍動する心臓をなだめるように、胸を何度も撫でる。
まだ薄暗い部屋で寝返りを打って、ひどい寝汗を拭った。