その意志の強そうな瞳が、自分を映し出す時にふと細まるのが好きだな、なんて。

 思い始めたのはきっとまだ最近のことで。

 けれど、いずれはこうなるだろう予感をボリスはずっと抱いていたのだ…





「ゃ…だ、ボリス……!」

 暴れる身体を抑えつけて、乱暴に接吻けた。
 肩に置かれた相手の手が恐怖からか小刻みに震えている。懸命に押し遣ろうとするが、生憎そんなものは体格と力の差で捻じ伏せてしまった。

 酸素を取り込むために開かれた唇の間から舌を侵入させ、その感触を十分に味わっていく。
 ようやく口を離せば余韻に浸る余裕も無いのか、ゼェゼェと胸を上下させ必死に呼吸を繰り返していた。


「なに、考ぇ…て……ッ」

 そんな言葉は徹底的に無視を決め込む。
 虚ろに見上げてくる少年に残酷にも笑ってみせて、捲り上げたTシャツの合間から覗く朱印に執拗に舌を這わせる。
 暴れた手が堅い机に当たり、鈍く響いた音に一瞬視線を上げれば、痛みにキツく眉を顰め、それでも瞳を閉じて堪えているタカオの姿が目に入った。


 震える手にキスをして舌を這わせると、そっと背中に回させる。

「服、握ってろよ…きっと辛いから」

 瞳が揺らいで、タカオは何かを伝えようと そろ と口を開く。
 しかしこれ以上拒絶の言葉を吐かれては堪ったものじゃない。一見何でもない風を装ってはいるが、タカオが「嫌だ」と繰り返す度にこれでも大分傷ついているのだ。

 細い指がするりと落ちるよりも早く首筋に顔を埋めれば、途端服に指先が食い込む感触と甘い声。


「やだ……や、…!」

 仰け反る喉に執拗に舌を這わせれば、引き剥がそうと伸ばした手がクシャリと力なく銀糸を撫ぜる。


「ほんとに止めてもいいのかよ?…こんな、なってんのに」


 喉奥でクク、と笑いズボン越しにやわく立ち上がる其処へ触れてやれば、ビクンと細い肢体が波打った。

 そのままズボンのファスナーを下ろし、隙間から手を忍び込ませれば抵抗するように強く腕を捕まれ、涙に濡れた大きな瞳がギと睨め上げてくる。



 嗚呼、コイツは本当に気付いていないのだろうか。その瞳が俺を捉え離さないのだということに…

 無自覚でやっているというのなら、なんて質の悪い。

 鋭い視線を何でもないように正面から受け止め、チュッと音を立てて戯れるような接吻け。

 不思議なことに、タカオは鋭く瞳を細めながらも黙ってその接吻を受け止めていた。



…もしも自分のことが嫌いで、それこそ憎いとまでに思うのならば

ならば、何故――


(なぁ、何でお前は
キスを拒まないんだ…?)


 そのまま相手の身体を触り続けてこの行為から逃げられないように熱を上げていく。



 声を我慢するように噛み締める唇からは血が滲んでいた。


「……なぁ。声、」
我慢しなくていいから

 囁けば、瞼がふるりと震えて――まるで何かを探ろうとしてるように深い藍の瞳が此方を見上げる。


 視線が交わった瞬間、今にもはち切れそうに膨らんだソレの、溢れる先走りで充分に濡れていた指を奥へと滑り込ませて。


 ヒ、と短く漏れる悲鳴。
 痛みにギュッと瞑られた瞳の端から滲んだ涙が溢れ落ちた。

「目ぇ開けろ。こっちを見ろよ」


 耳元で囁きながら指をゆっくりと動かし、タカオが痛みに慣れるのを待つ。その命令とも取れる言葉に固く閉ざされた瞳がうっすらと開いた。

「そうだ、それでいい……」

 それが憎悪でもいい軽蔑でも構わない、唯俺だけを見ていればいい。

 指を一本増やして内をぐるりと掻き回すように動かせば、苦しいのか擦れた嗚咽と喘ぎが細く短く紡ぎ出されていく。

「ゥ…ア、ぁ………ッッ」


 シーツに擦り付けるように横を向いたタカオの、曝け出された喉が酷く煽状的で。
 コクリコクリと小さく上下する其処に噛み付くように接吻けると、慣らすのもそこそこにボリスはようやく己の指の形に馴染んできたであろうその場所から指を引き抜いた。


 正直言って、ボリス自身が限界だったということもある。

 初めから我慢などという言葉は眼中になかった。
 今まで散々押さえを効かせた理性は擦り切れ、とうにボロボロだったのだ。

 ずっとずっと

この子供が欲しくて堪らなかった。






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