引き分けドロー | ナノ
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君の目に映る世界  





 無限城で信者たちを食べている時に、花のように可憐で若い女の子がやってきた。どうやら鬼滅隊の柱らしい。童磨からしたら大して変わりはないのだが、それなりの実力を兼ね備えた女の子であろう事がうかがえた。そして、彼女は童磨が手をかけた花の呼吸の使い手の妹であるらしかった。食べ損ねて勿体ないことをしたと、当時の感傷に浸った。そして、姉の羽織を見せて怒りを露わにする彼女、しのぶを見つめ、童磨はふと違和感を覚えた。初めてあったはずなのに、彼女の愛らしい姿をどこかで見た気がするのだ。なんだろうな、この擬似感。身体中を駆け巡る毒を分解しながらも、頭を回す。そして、ふと脳裏に鮮やかな色が浮かび上がった。

「ああ、思い出した!名前ちゃんの絵だ!」
「は?」
「君、名前ちゃんが描いてた絵に載ってたよね!花の呼吸を使っていた子も一緒だったよ」

 思い出せたことに童磨は子供のように無邪気にはしゃぐ。それとは逆に、しのぶは名前の名を聞くと、その大きな目を更に大きく見開かせていた。
 忘れるわけが無い。不死川と喧嘩する度に治療した。カナエとしのぶ、カナヲの絵を描いて渡してくれた。カナエを亡くし泣いていたしのぶの背中を撫でて一緒に泣いてくれた。太陽のように笑う彼女の眩しさを、しのぶは知っていた。
 彼女が死んでから数年ほどたっている。なのに、なぜこの鬼が名前の存在を知っているのか。嫌な予感が駆け巡る。額から伝った汗は顎の先まで伸び、ぽたりと床に落ちた。

「あの子の描く絵、好きだったなあ。ずっと俺の隣で描いてほしかったのに、断られちゃってさ。無理矢理鬼にしようとしたら、自分で首切って絶命してしまうし」

「そうなるくらいなら、全部骨まで食べてあげればよかった」

 この時、しのぶの中で何かが切れた。いや、もう既に色々と切れていたのだが、また新しく何かが切れた。
 ああ、この鬼は、大事な姉だけでなく、友までも奪ったのかと。視界が真っ赤に染った。





 なんて馬鹿な子なんだろう。彼女を最初に見た時、童磨はそう思った。
 食べようとしていた女の子を命からがら助け、それを他の鬼殺隊隊員に預けて逃がした。この場に残ったのは名前ただ1人。刀を持って、静かにこちらを睨みつける姿は、綺麗だった。だけど、その目の奥底には隠しきれぬ死への恐怖が見えた。
 彼女は、童磨に適わぬと刀を振るう前から察知していた。その癖に、1人で相対しようとするその無謀さ。あまりにも哀れだった。でも、確かに、とも納得する。彼女と一緒にいた鬼殺隊の人は、童磨を見た瞬間顔を真っ白にさせていた。死への恐怖を知っているからこそ、名前はきっと彼らを逃がしたのだろう。自分も怖いだろうに、この場から逃げたいだろうに、なんて健気なのだろう。1人で死ぬのは可哀想だ。ちゃんと食べてあげよう。そう思った。

「大丈夫。俺が食べてあげるから、怖くないよ。俺と一緒になるんだ。ひとりじゃない」

 彼女は弱かった。とはいえ、柱ほどでは無いが、一般隊士としてはまあ実力はあったのだろう。あと、妙に頑丈だった。華奢でか弱い女の子なはずなのに、打たれ強かった。肺胞が壊死してるにも関わらず、ここまで長く持った人間は珍しいかもしれない。しかし、童磨から見ればどんぐりの背比べだ。弱いのには変わりなかった。どんなに傷つけても、血を流させても、意地でも童磨に刀を向けてくるので、とりあえずその手を切り取った。血が溢れて、そこでようやく彼女は膝を地に付ける。放り出された刀は離れた場所に生えた木に刺さってしまっていた。もう抵抗できない。童磨はうっそりと笑んだ。
 
「来ないで!」

 力強くこちらを睨みつけては、空いた手で石を投げてくる。すると、その拍子に彼女の肩に掛けていた荷物が落ち、地面に白い紙が散らばっていった。なんだろう、これ。不思議に思い、一枚手に取ってみた。
 すると、そこには笑顔をうかべる可愛らしい3人の少女の絵が描かれていた。綺麗だな、と童磨は純粋にそう思った。描かれている絵は決して上手いとは言えないものだが、童磨はそれが判別できた。もう1枚拾って見てみる。そこには、可愛らしい野良犬の絵が載っていた。ワクワクとした気持ちで、次から次へと拾い上げて見てみる。1枚1枚、そこには綺麗な景色が切り取られて残っていた。ああ、なるほど。これは、きっと彼女が見た世界なのだろう。

「すごいじゃないか!綺麗な絵だね!」

 そう褒め称えると、強く睨みつけてきていた瞳がきょとりと丸くなった。その素直な反応は、実に童磨好みであった。

「これらは君から見た世界の1部なんだろう?とても綺麗だ。君の心が綺麗だからかな。君を通して見える世界はこんなにも美しい。ふふふ、いい、いいね」

 芋虫みたいにのたうち回る彼女の小さな頭を優しく手に取り、膝の上に乗せてあげる。びくびくと震える頭を優しく撫でると、不審そうな目が見上げてきた。それに笑い返し、拾い上げた紙たちを広げて見せてあげる。中には血が付着した紙も混じっており、童磨は残念だなあと眉尻を下げた。

「ねえ、ねえ、この絵について話してよ。俺に、君から見た綺麗な世界について教えて」

 名前の目が童磨から絵に移り変わる。その目は、童磨を睨みつけていた激烈な色が削がれ、波風立てぬ水面のような落ち着いた静けさを取り戻していた。生来の本質がそれなのだろう。愛おしむように、大事なんだと雄弁に語りかけてくる視線で、紙たちを見つめる。わあ、何この顔。可愛いなあ。童磨は少し楽しくなった。

「この絵は、私の大事な友達。1人いなくなっちゃったけど、怪我した時手当してくれて、無茶した私を怒ってくれる優しい人達」
「うんうん、だって、可愛い子たちばかりだもの!」
「これは、任務先で怪我した私を助けてくれた犬。動けない私に寄り添ってくれて、助けを呼んでくれた」
「素敵なお話だね!」
「これは、お兄ちゃんみたいな親友たち。鬼殺隊に入ってからずっと一緒だった。だからなのかなあ。当たり前みたいにずっと3人でいれるって無条件に信じてた」
「そうだね。人は都合のいいものこそ信じちゃう生き物だからね」

 なんて素敵なのだろう!これは、感動というものだろうか。
 彼女の描く絵はありふれた幸せで満ちている。童磨から見たこの世界は色褪せたものばかりで何ともないけれど、彼女の描く世界は何だか美しい気がしたのだ。
 一つ一つ大切なものをそっと見せてくれるかのように、名前はポロポロと話す。描いた絵達は名前にとって宝物なのだろう。彼女から絵の話を聞くのは、酷く心地よかった。
 それなのに、彼女はある1枚の絵を見てから口を止めてしまった。

「うずいさん……」

 童磨が見る限り、美丈夫そうな男と、美しい3人の女が笑っている姿がそこには映っていた。その絵は他の絵と比べると、少し違った。この絵は一段とキラキラとしている。まるで、初恋をした少女のように。
 その一瞬だった。静かだった水面に、波紋が生じたのは。彼女の目に、何か大きな感情が浮び上がる。生きたいという渇望、負けられないという希望。その瞬間、童磨の膝の上で大人しくしていた名前は飛び上がった。そんな余力があるとは思ってもいなかった童磨は名前のその姿に目を丸くした。彼女はそんな童磨に脇目も振らずそのまま木に刺さった刀を取りに行こうと動く。

「ははは、元気だなあ」

 その背中を容赦なく切りつける。ぶわっと赤い液体が溢れ、それを童磨は頭から被った。それに対して、うわあ、汚れちゃったなあという感情しか湧かなかった。

「可愛そうに。自分が死ぬだなんて、受け入れられないんだね」
「……約束、したから」
「ん?」

 か細い声で、ポソポソと何かを喋っている。童磨はそれに耳を傾けた。

「帰ったら、一緒に絵を描く、約束、した……から」

 そう告げて、もう立ち上がる力も生き抜く力もないくせに、地面を這いつくばって前に進もうとする姿は、あまりにも無様で、とてつもなく人間味に溢れていた。童磨はそんな名前の姿を見て、いいなあ、と少し思った。彼女から見る世界はきっと想像もできぬくらいに、尊いものに違いない。その世界を少しだけ分けて欲しい。そんな欲が出てきた。
 そう思った瞬間、童磨はひとつ閃いた。

「そうだ!君も鬼になろうよ!」
「……は?」

 何を言っているんだ、こいつは。彼女からはそんな感情があけすけに見えた。

「鬼になったら死ぬことも無い。ずっとずっと生きていける。絵だってずっと描いていける。こんなに素敵なことは無いだろう?ねえ、鬼になって、俺の隣でずっと絵を描いておくれよ!」

 童磨と共にみた景色を彼女に絵にして貰えれば、童磨の見える世界も少しは彩のあるものに変わるかもしれない。それは、童磨にとってあまりにも甘美すぎる提案であった。

「ふざけないで!それなら死んだ方がマシ!!」
「…………ええ、それは酷いなあ。残念、とても残念だよ」

 童磨はジリジリと前に進む名前の背中を足で踏んで、動きを封じた。名前はじたばたと藻掻くが、それを童磨は慈愛の笑みを浮かべて見下ろす。

「大丈夫。君ならきっと無惨様に認められるよ」

 震える背中に、血を、鬼の血を浴びさせた。その瞬間、彼女の口からは絶叫が飛び出した。悶えるように苦しみ、涙を流す。さて、この子はちゃんと鬼になれるだろうか。そう期待して、陸の上で跳ねる魚のように、地面の上で苦しげに悶える彼女の姿を、うっとりとした表情で見守る。

「でも、鬼殺隊が鬼になるのには時間がかかるんだっけ?血を沢山あげればいいのかな」

 そう言って、童磨は背中に更に大量の血を落とした。悪いと思っていない子供のような無邪気さで。それは、名前の目からすればあまりにも残酷に見えた。
 喉が枯れるまで叫び、身体中を駆け巡る熱と痛みに必死になって耐える。嫌だ、嫌だ、嫌だ。鬼になんてなりたくない。大事な人を傷つけたくない。誰かの大切な人を失わせたくない。殺してくれ、いっそのこと。こんな目にあってまで生きたくない。
 助けて。助けてくれ。誰か、匡近、実弥。大切な人が名前の脳裏を駆け巡る。

「う、うずいさ……ん……」

 残った理性の中で、恋しいあの人の顔が思い浮かんだ。穏やかに目を細めて、優しく名前を見つめる顔。名前のことを本気で心配して、でもどうしたらいいのか、どこまで踏み込んでいいのか、分からなくなっている迷子の子供みたいな目をした時の表情。一つ一つ彼との思い出を頭に浮かべては綺麗に並べた。
 好きだなあ。ほんとうに、好きだったなあ。不死川は名前の想いをあまり喜ばしく思っていなかったけれど、それでも想うことは止められなかった。初めての恋で、きっと最後の恋になる。叶うなんて思ってもいなかったけれど、名前はたしかに幸福だった。ぶわっと涙が零れ落ちて、名前は静かに笑みを浮かべた。

「ふふ、鬼になれて嬉しいの?笑ってるね」

 見当違いなことをのたまう鬼を置いて、名前はまたズルズルと体を引き摺って動き出す。童磨は何をするのだろう、と新しいおもちゃを見つけたみたいにドキドキとしながら、名前を追いかけた。
 名前は少しずつ鬼の血に順応していっているのか、体力が回復していっているみたいだった。そのため、先程よりも力強く動いていた。早く、早くしないと。人間としての理性が残っているうちに。そう思って、刀の刺さった木のところまでたどり着いた。

「こりゃ驚いた。まだ戦う気なの?でも、もう君も鬼の血を取り込んだんだ。今更後戻りなんて出来ないよ」
「……もう、戻らなくていい」
「え?」
「良い。もう、いいんだ」

 空いた手で刀を握る。鈍い鉄の色が眩くて、名前は嫌悪感を抱いた。なるほど、鬼としての本能が働いているのかもしれない。はっと息を吐いて、唾を飲み込む。鉄の味が鼻を抜けて、吐き気を催した。くそったれ。内心そう吐き捨てる。
 そして、名前は刀を木から抜かず、そのまま首をあてがい。その意図に気づいた童磨が動く前に、名前は自身の首をその刃にぶつけて、切り落とした。

「あーあ、可哀想に。勿体ないことするなあ」

 名前は不思議と痛みも何も感じなかった。ただ、鬼にならずに済む。その安堵感でいっぱいだった。ふわりと揺れる視界の中、地面にばらまかれた白い紙たちを見つめる。名前が描いたたくさんの幸福。その枚数分、名前はたしかに幸せだったのだと感じられた。
 だけど、唯一の心残りがあるとすれば。それは、彼との約束を果たせなかったことだ。

ーーー帰ったら絵を教えてやる。
ーーー俺がお前を派手に描いてやるよ。
ーーーちゃんと戻ってこいよ。

 彼の描いた絵、見たかったなあ。まだ彼のことを沢山描いていたかったなあ。
 そう思いながら、名前の意識はどんどんと闇の中に落ちていった。

「鬼と人間なんて中途半端な状態で死んじゃったから、身体も途中で崩れ落ちてるし、あまり美味しくなさそうだな」

 半分だけ朽ちて残った名前の頭を抱え込み、童磨はぺろりと舌を出す。

「でも、君のことを食べたら、僕もあの絵みたいに綺麗な世界を見ることが出来るのかな」

 あーん、と。童磨は大きく口を開けた。
 






「ねえ、何を描いてるの?」

 公園のベンチに腰かけ、ガリガリとクロッキー帳に絵を描いていた名前は、背後から突然声をかけられ、びくりと体を跳ねさせた。恐る恐ると後ろを振り向けば、美しい顔立ちをした男が立っていた。歪な虹色の瞳がゆったりと細められ、人好きのする笑みを浮かべている。背格好や服装から見て、若く見えるが、学生では無さそうだ。突然声をかけてきた男に言い知れぬ違和感を覚えながらも、名前はこれ、と言ってクロッキー帳の中身を見せた。

「桜!咲いてて綺麗でしょ!」
「うん、たしかに。そうだね」

 同意を示す男に、名前は嬉しくなって笑う。男はそれを見て、さらにその顔を柔らかくさせると、名前の隣に座った。

「君の描く絵はとても綺麗だね」
「ほんと!?」
「うん、ほんと」

 名前の描く絵はあまりにも独創的すぎて、褒められた試しがない。なので、こうもあけすけに好意的な言葉を貰い受けたのは、初めてにも近く、名前は純粋に喜んだ。この人、わかる人かも。なんて、初対面の男に対してそんな呑気なことを考えていた。

「君を通してみる世界は、本当に美しいよ」
「え?」
「ねえ、今度、俺のことも描いてよ。君の綺麗な目を通した俺を見てみたいな」
「それはいいけど…」

 綺麗だって。でも、綺麗かなあ。名前は首を傾げる。白い紙に広がるのは、ぐちゃぐちゃとした桜の花弁だ。でも、彼はニコニコと笑顔を浮かべている。その真意は読み取れない。

「私の絵、下手ってよく言われるんだけど、どう思う?」
「確かに上手くはないよね」
「うっ!!」
「でも、綺麗だよ。うん、羨ましいくらいに」

 その言葉に偽りはなさそうで、名前はコクリと頷いた。こうして名前の描いた絵をすきだと言ってくれるのだ。それは、純粋に嬉しいことなはずだ。でも、どうしても心の中でなにかが引っかかっていて、名前はそれが腑に落ちなかった。この男のことを、何故か信用できなかったのだ。

「名前さん」
「ん?しのぶちゃん!」

 すると、声をかけられた。鈴のように凛とした可愛らしいこの声の持ち主は、胡蝶しのぶだ。名前の友達である。制服姿であることから、学校からの帰り道の途中であることが察せられた。彼女は公園の外にいたが、名前とその横に並ぶ男を見ると、目を見開き、ずんずんとこちらに近づいてくる。

「何をしているんですか」
「絵を描いてるんだよ!桜、綺麗じゃない?」
「ええ、とても。ですが、もっと綺麗な場所を知っていますよ。よろしければ、そちらに行きませんか」
「いいの!?」
「はい」

 クロッキー帳を畳んで立ち上がる。しのぶは笑っていたが、なんだか少し怖い空気を纏っていた。

「わあ!しのぶちゃんだ!会えるなんて嬉しいよ!」
「早く行きましょう、名前さん」
「ねえ、俺も一緒に行っていい?」
「通報しますよ、糞野郎」

 隣にいた男は頬を赤らめて、しのぶに声をかけるが、それに対してしのぶの対応はあまりにも厳しかった。知り合いなのだろうか。恋する乙女みたいな顔をした男と、笑顔で青筋を浮かばせるしのぶを交互に見て、名前は疑問符をうかべた。
 しかし、名前が疑問を言葉にする前にしのぶに手を引かれ、公園を出ていく。残された男は「あれ?しのぶちゃーん」と声をかけるが、彼女は無視していた。

「釣れないなあ、しのぶちゃんは。それじゃあ、名前ちゃん、今度会った時俺の絵を描いてね」
「会わせませんよ!!」

 男の言葉に返事をしようとすると、即座にしのぶが断りを入れた。見たことないくらいに激昴している。しのぶは怒ると非常に怖いのだ。不死川の爆発的なものとは違い、じりじりと迫り来る恐怖みたいなもの。怖さにもきちんと違いがあるのだと、名前はしのぶを見て知ったのだ。

「しのぶちゃん、大丈夫?」
「貴方こそ、あの男に変なことはされていませんか」
「い、いや、特にはないけど…」

 声かけられただけだし。絵、褒められたし。悪い人には見えないけど。と、もそもそと呟けば、しのぶの纏う空気が更にピリついた気がしたので、名前は口を閉ざした。

「名前さん、約束してください。金輪際あの男と会わないと、関わらないと。」
「ええ……」
「いいですね」
「あいあいさー」

 怒りでブルブルと震えるしのぶの笑みを見て、名前はすぐさま頷いた。しのぶがこう言うからには何かしら理由があるのだろう。名前はそう判断した。
 だが、名前は少し安堵していた。あの男は悪いようには見えないのだが、どうも背筋がゾワゾワとして仕方がなかったのだ。首辺りもモゾモゾとする。なんだが居心地が悪かったのだ。

「名前さん、せっかくなら甘いものを買って行きましょうか」
「いくいく!!」

 公園を出ても、あの虹色に見つめられている気がして。それがなんだか恐ろしくて。名前はしのぶの手を強く握った。
 


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