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季節は冬、残す授業は一科目。授業の合間に春輝はクラスから抜け、廊下を歩き、進行方向にある二つ目のA組の扉から教室を覗く。その様子を見て、女子生徒の目が春輝に向く。そんな視線を気にせずに春輝はお目当ての人物を見付けると、手を挙げながら声をかける。

「松下ー!」

声をかけられた夏希は扉の方を向き、春輝に気付くと一瞬驚きを見せ、扉に近づく。

「どうしたの?」
「あんな、耳貸して?」
「ん?」

夏希は言われた通りに春輝に耳を傾けた。春輝は両手で夏希の耳を囲う様にして、小声で話しだす。

「今日、クレープ食べ行こうや。」

そして夏希と距離を空けると、満面の笑みで夏希を見る。

「ん、いいよ。」
「ほんまー?よかったー!駅前に新しい店出来たんやて。進行方向一緒やし、ちょうどええかなって。」
「そうなんだ?」
「ん。それに男女で行くと安くなるんやて。」
「へー。夜ご飯でいっか。」

夏希の言葉に春輝が固まる。驚いた夏希は春輝の目の前で手を振る。
それに気付き春輝が声を発する。

「ご飯、足りてるん?」
「え、足りてるよ?」
「いやいや、うそやん。」
「え、ほんまやもん。」

お互い黙り込むと、春輝が何かを思いつき笑顔で言う。

「ほんなら、ご飯、一緒に作ろう?そしたらお金も安上がりやん?」
「え、でも、私そんな食べない。」
「食べなあかんよ?健康第一や。ほな、また後で!」
「・・・もう、なんなの。」

春輝の背中を見送り席に戻ってきた夏希を、髪が長く、前髪を上げている女子生徒は後ろから視線を向け、頬杖を付きながら声をかける。

「ねぇ、夏希?あの子は、C組の・・・矢野だっけ?彼氏?」
「違うよ?みゃーこがそんなこと聞くの、なんか珍しい。」






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