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「な、せっかくやし、部屋行ってもええ?」
「え?」
突然の質問に理解するのに時間がかかった夏希は、言葉の意味を考え、理解したその途端春輝に向き直る。春輝はその行動に驚き、夏希を凝視した。そんな春輝の額を夏希は小突く。
「調子乗んない。だめ。」
「いったいやん!何するん?もうー・・・あ、ほんなら俺ん家来てや?」
「なんで?」
「ご飯、作ってほしいねん。松下なら料理得意やろし、なんやろーな・・・もっと喋りたいし。」
《・・・あ、可愛いな、今の顔。》
少し照れながらいう春輝を見て、少し見つめていると、春輝が視線を合わせる。夏希は少し恥ずかしくなり、目線を反らして言う。
「・・・まぁ、たまになら、行ってあげてもいいよ?」
「えー・・・たまにとかいややー!友達やん、むしろ親友?ひろやんより、松下のが今上のランクやねんけど。」
「いやいや、ひろやんって誰?」
「あ、知らんか。今度紹介するわ。」
「それじゃ、楽しみにしてます。」
そんな話をしながら授業終了から3時間半かけ、高等課程全員分の書類を作り終え、段ボールにつめ、職員室に書類を届けに教室を出る。職員室に付き、段ボールを床に置くと、春輝は扉をノックし、扉を開ける。
「失礼しまーす。1年の矢野です。先生、書類できましたー。」
その声を聞き、慌てて顔を出す担任。
「お疲れ。意外に早かったな。あ、松下にも手伝ってもらったのかお前。」
「あ、いえ。私、この前矢野くんに課題を教えてもらったので、そのお返しに。」
「へー・・・矢野も意外にいいことするじゃねぇか。気をつけて帰れよ?」
学校を後にした春輝達。春輝が夏希に不思議そうに夏希に聞く。
「な、なんであんなん言うたん?」
「だって、あのまま黙ってたら矢野が先生になんか言われちゃうかなって。」
「・・・あ、確かに。ありがとう。」
「ん、なんか奢ってね?」
満面の笑顔でいう夏希に、春輝は嬉しそうな、恥ずかしそうなそんな顔をしながら答えた。
「しゃーないなぁ。」
《こんな時がこれから先も続けばええな、とか。お互い思ってたなんて、わからんかった。》
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