3月。
寒い体育館に生徒全員が正装して集まる今日は、卒業式。
普段5つもつけとるピアスも今日ばかりは流石に外した。
理由は至って単純。
中高6年間世話になった先輩らの晴れ舞台やから。
多分こんなん口に出して言うたら、あの人らは笑うやろうけど、一応俺なりの敬意の表し方やったりする。
『寒い冬も終わり、暖かい春が……』
壇上に立って、朗々と答辞を読み上げるんは白石部長。
左手の包帯も取れてて、しっかりそれを見てた遠山が「ど、毒手が……」と青ざめてたんをさっき目撃した。
そろそろ、アイツにも毒手の正体教えたってもええんやろか。
『……以上を持ちまして、卒業生の答辞にかえさせていただきます』
そう締めくくって部長は丁寧なお辞儀をして、壇から降りる。
部長を目で追いながら、その向かう先の3−2の席へ視線を遣る。
俺んとこからやとようわからんけど、あん中にひな先輩もおるんやろう。
今日は卒業式。
これが終われば、今の3年生らが学校に来ることはまずない。
せやから、今日が最後のチャンス。
俺が俺自身にケリつけるために。
俺は、あの人に伝えよう。
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