目覚まし
目覚まし時計がなる前に目が覚めた。寝起きには眩しい朝日に目を眇め、紡は座卓の上の時計を確認する。針は目覚ましをセットした三十分ほど前を示していた。
二度寝には微妙な時間だし、このまま起きてしまおうか。
と、思ったが、耳元で聞こえた穏やかな寝息にその気が失せる。顔を横に向けると、目の前にちさきの寝顔があった。かすかに胸が上下して、薄く開いた唇からゆっくりと吐息が零れる。紡の袖をきゅっと握って安心しきったように眠る顔は、いつもより幼く見えた。

朝はちさきの方が先に起きることが多く、こんなふうにゆっくりと寝顔を見られる時間は貴重だ。さっさと布団からでてしまってはもったいない。
ちさきの寝顔を見つめて目を細め、掴まれていない方の手で乱れた髪を撫でる。柔らかな髪は触り心地がよく、つい何度も繰り返し指に絡めては梳いた。

しばらくそうしていると、むずかるような声が聞こえた。起こしてしまったかと思った瞬間、

「紡……」

囁くように名前を呼ばれた。
恐らく、ただの寝言だ。ちさきの目は未だ閉ざされている。
だが、だからこそ胸の内に溢れるものがあった。
ほとんど衝動的に唇を寄せる。そっと触れて離すと、閉じていたはずの目蓋が開いていた。

「もう、なにするの」

「……起きてたのか」

「今ので目が覚めたの」

唇を尖らせて、ちさきは非難がましく紡を見返した。
睨んでいるつもりのようだが、逆効果にしかならないとわかっているのだろうか。

「悪い、可愛かったから」

悪びれもなく、紡は謝罪を口にする。
ちさきの目が益々拗ねたものになった。

「だからって、寝てる時にしないでよ」

「なら、今ならいいのか?」

「そういう話じゃないんだけど」

もう、とぼやきながら、ちさきは受け入れるように目を閉じた。
まだ寝惚けているのだろうか。いつもより少しだけ素直だ。
柔らかな唇にそっと口付ける。それだけで満ちていくものがあった。
名残惜しさを感じながら離れると、海の色をした瞳が蕩けるように細められる。そんなちさきがただ愛しかった。


紡ちさを書く天城さんには「目覚まし時計がなる前に目が覚めた」で始まり、「そんな君がただ愛しかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
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