紅の幻想
アカネの反対を押し切って、五人は空から−−飛行タイプのポケモンを持っていないアカネは、ハヤトからムクホークを借りて−−百鬼夜行を追いかけた。
百鬼夜行はかなり鈍足なため、すぐに追い付いた。
「さーて、やりますか」
道を塞ぐように先頭の青年の前にアキラとユイが降り立つ。その後ろにハヤト達も降りた。
けらけらと百鬼夜行が嘲笑う中、アキラが居丈高に口を開いた。
「百鬼夜行のみなさん、悪戯はここで仕舞いにしてもらうわよ」
アキラがモンスターボールを投げると、彼女の相棒のサンダースが出てきた。
「ライさん、10万ボルト!」
サンダースから放たれた電撃が先頭の青年に直撃した。
すると、青年の姿が揺らめいた。次第に別の姿をとっていき、現れたのは、
「ムウマージ!?」
「そう。百鬼夜行の正体は鈴音の小道に住み着いたゴーストポケモンです。もちろん、この幻覚を見せているのも」
アキラがにやりと口角を吊り上げる。
その真似なのか、サンダースもにやりと不敵に笑って、後ろの異形達にも10万ボルトを食らわせた。
「アキラちゃん、よくあれがゴーストポケモンだってわかったねー」
「ああ、勘よ。合っててよかったわ」
これで間違えてたら恥ずかしいもの、と冗談めかしながらも、アキラはサンダースに指示を出す。
ムウマージ達も仕返しとばかりにシャドーボールを撃った。だが、
「ファイ、“ひかりのかべ”!」
ユイがエーフィを出して防ぐ。
エーフィは涼しい顔をして“ひかりのかべ”で攻撃を受けた。
もしもエーフィが人語は話すのなら、
「さっきまで私の主人を嘲笑ってくれたけど、全然大したことないわね。嫌ね、身の程をわきまえないポケモンって。弱い奴ほどそうなのよねー」
とでも言っていただろう。
「アキラ、こいつらを倒せば幻覚は消えるんだな?」
「でしょうね」
「だったら話は簡単だな。ピジョット、つばさでうつ!」
ハヤトの指示に応えるようにピジョットは鳴き声を上げ、ゴーストポケモンに突っ込んでいった。
その横ではミカンの出したハガネールが、
「ハガネちゃん、アイアンテール!」
ゴーストポケモンの群れに鋼の尾を叩きつけた。
「正体さえわかれば、こわないで!ミルタンク、“ころがる”!」
アカネのミルタンクが転がってゴーストポケモンに激突していった。当たれば当たるほど、技の威力は大きくなる。
さんざん怖がらせられた腹いせなのか、アカネはピクシーやベロベルトも出して攻撃させた。
「あたし達に幻覚を見せたこと、末代まで後悔させてあげるわ」
一体どちらが悪役かわからないセリフをアキラは物凄くいい笑顔で吐いた。