子供の領分
茜色に染まった空の下、オレはタージャとリクと一緒に、シママと向き合っていた。

あの後、倒れたポケモンたちを回復させ、ガキ共と一緒になって保育園でずっと遊んでいた。
シママは思った通り、激しいけれどいいやつで、ガキ共の相手も楽しそうにやっていた。目つきが鋭いから怖く見えるだけで、中身は案外まだ子供なのかもしれない。

夕方が近づくと、ガキ共は親に連れられて帰っていった。
シママもそろそろ森に帰る時間だろう。だが、その前に訊いておきたいことがあった。

「なあ、お前、オレと一緒に旅をしないか」

オレはシママを見据えて言った。

いつもは、タージャとリク以外にはふられてばかりだった。
だが、今回は違う。こいつなら来てくれるんじゃないかという予感があった。
なにより、オレがこいつと旅をしてみたい。

「な、どうだ?」

シママはオレを見上げた。
そして、にっと口角を上げ、

「ヒィイン」

背を向けて駆け出した。

断るのかよ!
絶対に今回はいけると思ったのに!

オレはずっこけかけ、タージャとリクに肩を竦められた。うるせえよ。
なんとか気を取り直し、シママの背中を、その先にある夕日の沈む森を見はるかす。

あいつにもあいつなりの事情があるんだろう。
ちょっと悔しいけど、見送ってやるよ。

「またな!」

シママは沈む太陽に向かっていななく。
そのまま垣根を飛び越え、夕闇が深まる森へ去っていった。


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