俺様、津田様

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※50万ヒット企画 俺様×健気

合コンはあまり好きでは無い。
特にこういう状況になるとすぐにでも帰ってしまいたくなる。

「俺もその映画、この前見たよー。」

向かい側で笑う津田を見て、あーあという気分になる。
津田は美形だ。

ただしイケメンに限るというのを地で行く男に合コンに参加した女の子たちは釘づけだった。
最初からこうなることは分かっていたし、そもそも彼女を作るつもりもない。
じゃあ、何故ここに来たかというと、津田に誘われたからだ。

毎回こうなのだ。津田は、俺と津田の違いを見せつける様に、時々俺をこういった場に誘う。
俺はというと、断ればいいのにも関わらず、のこのこと付いて行ってしまうのだ。まるで、馬鹿だ。

一次会が終わって、とっとと帰ろうと思う。
帰りにコンビニによって酒を買いこんで、一人で飲んで何も考えずに眠ってしまいたかった。

津田がこの後どうするかなんて考えたくは無かった。

幹事に声をかけ、それから一言二言話をした。適当に相槌を打って駅目指して歩き出すと肩を抱きこまれた。

津田だった。

それだけで、泣きそうになる。

「俺も帰るわ。」

あっけらかんと言う津田を残りのメンバーが呆然と見ている。
お呼びじゃない俺と違って、津田とまだ過ごしたい子は多いんじゃないかと思う。

案の定女の子たちは顔を見合わせて不服そうだ。

「じゃあ、そういうことなんで。」

津田はというと、そんなことを気にした様子も無く、肩を組まれたまま、駅へと向かう。

顔が赤いのは酔った所為にして欲しい。
まあ、津田は俺がどんな顔をしてようが気にも留めないとおもうが。

「上島、今日これからどうする?」

津田が人の予定を気にする事は珍しかった。
合コンに誘うにしろなんにしろ、こちらの予定などいつもお構いなしだ。

「家に帰って寝る予定だった。」

肩に回る手が気になってしょうがない。だから、なんて言い訳もしたくないけれど、どうしても口調がぎこちなくなる。

「ふーん。俺も上島んち行っていい?」

一応疑問形だが有無を言わせない雰囲気で津田が言う。
俺の家に来ても楽しいことなど何もないのに、やっぱり俺は頷いてしまうのだ。



一人暮らしをしているアパートにつくと、津田は上機嫌で服を脱ぎ散らかす。
慌てて拾い集めて適当に畳んでおく。

恐らく、津田は俺の気持ちに気が付いているんだろう。
俺が津田を好きだということに。

別に津田は誰かを重んじて動くことをしないだけであって、人の感情に鈍感な男では無い。
だからきっと気が付いているんだろうと思う。

それで、わざわざこっちの困ることばかりして、意地悪く笑いながらこちらを見るのだ。

それでも、結局俺は津田から離れられなくて、こうやって一緒に過ごしてしまうのだ。

「何か着ろよ。」

スウェットを手渡した後、ローテーブルにコンビニで買った酒だのケーキだのを並べる。
津田はこう見えて甘党だ。

コンビニでもあれこれスイーツを選んで、俺の持っているかごに入れて、会計をして店を出た。

「えー、面倒だろ。」

俺の渡したスウェットを放りだして、生クリームが大量にかかったプリンを開ける。

スプーンですくって一口食べる津田をぼーっと眺める。
酒はあまり進まなかった。

津田が散らかしたスプーンを包んでいたビニールを片付ける。

「うは、お前嫁さんみてえだな。」
「何を……。」

何を言っていると返したかったのに上手く言葉が紡げなかった。
それを目を細めて面白そうに眺める津田はあっけらかんと言った。

「なに?想像したのか?」

ああ、やっぱり気が付かれている。それも取り繕えない位に。
その時口にできたのは「何で。」か「どうして。」か多分そんなところだったろうけど自分がなんて言ったかすら覚えていない。

「ああ、時々もの欲しそうな目でこっちを見てるもんな。」

その言葉に頭をガツンと殴られた気分になる。
そんな目をしていたのだろうか。

「なあ、舐めろよ。」

クリームの付いた指を津田は差し出した。
まるで動物がする様な事を俺に普通に言う。

多分怒らないといけないことも、こんなことをしても何にもならないこともよく分かっている。
それでも、俺は津田の前で跪いて、舌を出した。



甘いものはさほど好きでは無い。
津田の人差し指に舌を這わせて感じられる甘味は別に好ましくもなんともないのに、生クリームの甘ったるい匂いと、津田の指を舐めているという事実に頭がじわじわ痺れてくる。

津田は、俺の口の中に指を突っ込む。
そのまま、歯列をなぞり舌をつつく。
かなり強引に喉の方まで指を突っ込まれてえずきそうになる。

唾液がジワリと滲んで口の端から零れ落ちていることに気が付いているのにどうしようもなかった。

舐めるというより、もはやしゃぶる様に津田の指に舌を這わせる。

「はっ、美味そうになめるな。」

馬鹿にするみたいに言われ、睨もうとしたのに、結果は、ボロボロと涙をこぼすだけで、自分でも馬鹿みたいだと思う。

ポカンとこちらを見る津田に指から口を離して袖口で涙を拭きとる。

「忘れろ。頼むから今すぐ忘れてくれ。」

それだけまくし立てると、開けたまま放置してたカシスウーロンを一気飲みした。
放心状態だった津田は、それから少ししてようやく落ちついた様で、何事か言おうと口を開きかけたが止めて、そのままプリンを食べ、勝手にバスルームを使っていた。

一人になって、やっと自分のしでかしてしまったことを実感して、一人顔を赤くしながらクッションに顔を埋めた。



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