×××ゲーム

4

「授業終わったら待ってろよ。」

いきなり言われた言葉の意味がよく分からなかった。

「一緒に帰るのも……のうちって事だから。」

途中聞き取りにくかった部分が、恋人なのか、罰ゲームなのかは分からないけれど、実質同じことなのだろう。

それって断れますか? というか、そもそも家の方向をお互い知らないなとか、無言でただ帰ればいいだけなのだろうか。



松尾の友達に生暖かい目で見送られて、二人並んで教室を出る。

ダルそうに横を歩く松尾をちらりと盗み見る。
こんな、バカみたいな罰ゲームをしなくても充分人生を楽しめそうに見える。

校門を出たところで声をかけられる。

「俺こっちなんだけど。」

逆側だって言えって事だろうか。

「俺はこっちなので。」

じゃあ、また明日。と言ったまではよかった。
適当に遠回りをして帰ればいいと思ったから。

「じゃあ、送ってくから。」
「は?」

素で、変な声で返してしまった。
どちらにせよ一緒に帰ることは決定してるのか。であれば遠回りとか逆にめんどくさい。

「……あの、やっぱり俺もこっちです。」

松尾の帰る方向を指さしながら言うと「ふーん。」といって鼻で笑われた。

彼の友人たちが後をつけているとかなのだろうか。

罰ゲームの一環だったとしても一緒に帰る理由が分からない。

仕方がなく二人で家の方角に向かって歩き始める。

「……明日、友達に報告しなきゃなんないなら適当に嘘言っておけばいいんじゃないですか?」

俺と話が矛盾しているかしていないか以前に、俺が困ってまごまごしていれば満足なのだから話さなきゃ済む。

それなのに、なぜ彼は俺の隣をヘラヘラとして歩いているのだろう。

「んー。その辺は適当に面白い様にするからいいんだけど……。
そうじゃなくて。」

昼、飲み物おごってもらったから。

「は?」

今日二度目の変な声が出た。

罰ゲームに付き合わせて、飲み物を買いに行かせて、それにケチをつけた人間の言う事じゃない気がした。

「だって、面白くないだろこれは。」

駅の向こうに公園があるだろ? そこでなんか飲もう。

彼には彼の、酷く独特な価値観があるという事なのだろうか。
よく分からなくて、面倒臭いより興味があるが勝ってしまった。頷くと松尾は面白そうに笑った。

[ 6/250 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
[main]