間違い探し
探り探り
ちゃんと付き合い始めてから、夏目とはまだセックスをしたことが無い。
触れ合う様なキスをして、舌で口内を撫でるところまではあの後も何度もした。
俺の体が固まってしまうのか、それとも他の理由があるからなのかその先をしたことはない。
お互いが距離感をつかめなくて、上手くできていない感じさえする。
ただ単に、夏目が面倒になってしまったのかもしれないのに、それも聞けない。
許せないと言っていいとすら伝えてくれた人なのに、感情は相変わらず上手く伝えられない。
甘えて、セックスをして欲しいと頼めばいいのだろうか。
そもそも、『そそられる。』と言われた言葉を信じていいのだろうか。
俺には上手く雰囲気を作る方法さえよく分からなくて、どうしたらいいのか分からない。
だって、まともに経験が無いのだ。
誘うとか誘われるとか、誰かとそんな関係になったこと無い。
二人で静かに過ごす瞬間が好きだ。
セックスをしなくても彼の部屋にいていいと思われてるかもしれない事が嬉しい。
だけど、もう一度体の中側に触れられたいと思った。
◆
「んっ、ふぁっ……。」
温かいココアを飲み終わったところで夏目にキスをされる。
ココアで熱くなっている筈なのに、夏目の舌の方が熱い気がした。
甘い匂いの混じる唾液が舌で混ざり合う。
頭をそっと撫でられて、その甘やかな感触に体の力が緩む。
唾液が粘着質な音を立てているのが興奮を煽る気がする。
もっと、っと思っていたのに不意に夏目の顔が離れる。
瞼をあけて夏目を見る。
彼はこちらを切なさそうな表情で見つめている。
もっと触れて欲しい。
俺は、今多分すごく浅ましい顔をしているのかもしれない。
夏目の腕の部分の服を握る。
どうすれば、ちゃんと誘えるのかは考えても分からなかった。
「もっと、全部したい……。」
我が儘を言ってしまってもいいだろうか。
[ 107/250 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
[main]