明けの明星、宵の明星

9

どろり、どろりと思考が溶けていく、それが、オメガとしての本能的な状態なのか、それ以外なのかは分からない。

都竹さんは無言で俺のズボンと下着を脱がしにかかる。
煩わしいものを取り去るといった風情で半ば無理やり脱がされる。

ひっくり返されて、それから腰骨にキスをされた。
それで、なんていうか全部、何もかもが良くなってしまった。
これからのこととか、今の恥ずかしい気持ちとかそういうものが全部どうでもよくなった。

多分、都竹さんは無意識だったのかもしれない。
ズボンを脱がすときの手つきに気づかいなんてものはまるで無かったし、多分もう理性はほとんど手放してしまった状態なのだろう。
なのに、最後に残った都竹さんのやさしさがそうさせたと思うと、たまらなかった。

多分、ずっと我慢していたのだろう。
乏しい知識でもそれは痛いほど分かる。だからまあ、醜態をさらす事になるけどそれはもう仕方が無いという気分だった。

それに、完全に意識が発情におかされなくてもかなりぼんやりとはしてきている。
どうせもう都竹さんには聞こえていないかもしれないし、お互いにこの行為が終わった後覚えているかも怪しいが、だからこそ今言っておきたいことがあった。

「好きです。ずっと、好きでした。」

うつ伏せになって臀部を晒しながら言う科白では無いと我ながら思う。
でも、今どうしても言いたかったのだ。

しかし、背後で都竹さんが息をつめる音を聞いてすぐにしまったと思った。

それから、もう一度項に噛みつかれて、痛みと快感に思考がとらわれているうちに一気に貫かれた。

快感に、目の前が白黒に点滅する。
体が都竹貴紀というアルファを受け入れて喜んでいるのが分かる。

「んっ……あッ…ああっ……。」

ずるずると中をこすられるたびにあられも無い声が出る。
けれど、オメガの体で良かったと思う。
殆どならしもしない体はそれでも完全に快楽しか拾わない。

ベータだと壊れてしまうという意味が少しだけ分かる気がした。

相変わらず自我は保っていて、今日のことは一生忘れられそうにないのに、体はぐずぐずでもはやセックスのことしか考えられない。

「きもち、いいっ、ああッ!やぁッ……。」

唾液が口から零れ落ちるがどうしようもなく、ただただ都竹さんから与えられる快楽に翻弄されるしかなかった。

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