オムライス



亜海さまへ
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朝8時、オイラは目覚ましが鳴った瞬間に飛び起きて部屋のドアを蹴り開け、居間へと走る。居間に近づくにつれて段々強くなっていくこの香りが余計に食欲を誘った。居間のドアを開ける前に立ち止まって1回大きく深呼吸。いざ扉を開け、居間へ入るとすでにそこには何名かのメンバーが居て、オイラは早速元気をなくす。やっぱりみんな考えることは同じか。

「おはよう、デイダラ。」
「…う、うん」
「見ろよデイダラ、今日の朝飯はオムライスだぜ!」
「ご、ごめんね、卵の賞味期限が今日だったのうっかり忘れちゃってて、」
「や、別に」

別に、とか言いながらもオイラは○○が作ってくれたそれを早く食べたくて仕方がない。目の前に出されたふわふわ卵のオムライスは見ているだけでも食欲をそそる。ただ、オイラと同じことを考えてるやつが他にも何人か居たってのが気にくわないけどな、うん。

「ケチャップとデミグラスソース、どっちが良い?」
「デミグラスソース!」

回りのやつらが揃いに揃ってデミグラスソースを注文するなか、オイラは1人でケチャップを選んだ。単純に朝からデミグラスソースだと重いかな、って思っただけだったのだが、他のやつらは「やっぱデイダラはガキだなぁ」なんてニヤニヤしながら言いやがる。○○の前でそんなこと言うな、そんな意味を持たせた睨みをきかせたけれどあいつらのことだから全然聞かない。オムライスにケチャップ、鉄板の組み合わせじゃねぇか。そのままふてくされて椅子にドカッと座ったオイラの前に、○○が出来立てのオムライスを置く。

「…ん?」

でも、それは黄色一色だ。
あれ?ケチャップは?オムライスを置いてすぐ、ぱたぱたと忙しそうにキッチンへ戻った○○の後ろ姿を無言で追いかけながら、オイラはスプーン片手に固まる。既にオムライスに手をつけているデミグラスソース組が、またオイラを見て笑ったのが横目にチラついた。なんだ、やんのか。頭にカァッと血が昇りかけたところで、○○がまたぱたぱたとスリッパをならしてやってくる。片手には、ケチャップ。それを受け取ろうとしたら、なぜか物凄い笑顔で遮られた。

「ね、デイダラ、なに描いてほしい?」
「は?」
「だからー、オムライス!」

一瞬、彼女の言っていることが理解できずに首をかしげる。オムライスに、ケチャップで、オイラが言えばなんでも描いてくれるのか?そう問い返したら、○○は笑顔でうなずいた。形勢逆転、他のやつらはオイラに羨ましそうな視線を投げている。その視線を少しも気にしないそぶりをしつつ、オイラは○○に注文した。

「お任せで!うん!」
「えー?お任せ?私の好きなの描いて良いのー?」
「うん!」

そんなこと言われたら迷っちゃうなぁー、とか言いながら、思いの外○○はノリノリ。続けて、早くしないとオムライス冷めちゃうね、って呟きながら描いたのは、オムライスからはみ出すほど大きなハートマーク。

「はいお待たせ、美味しく召し上がれ♪」

ごくり。
色んな意味を含んで、オイラは唾を飲み込む。その場にいる全員の目がオイラのオムライスに集中するなか、○○は満足そうに微笑んでキッチンへ戻り、何事もなかったかのように洗い物をし始めた。いやいや、男って、男って、こんなことされたらその気になっちまう単純な生き物だよなぁ?
これを食べたら、このオムライスに描いたハートマークの意味を、あとでこっそり○○に聞いてみよう。

「いただきまぁす!」

そう叫んで、オイラはとびきり美味しい朝ごはんをかっ込んだ。


オムイス

(ごちそうさまでした!)


2013/05/25
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