This is love.
甘(現パロ)
紗々様へ 21600Hit記念
「ねぇ、あれ買って、」
「分かった、」
「あと…それとこれとあそこにあるのも欲しいな。」
「…好きにしろ。」
イタチは私の言うことをなんでも聞いてくれる。欲しいものはなんでも買ってくれるし、してほしいことはなんでもしてくれる。だから私はわざと大げさなワガママを言ってみたりする、だけど彼はそれも難なくこなしてしまうのだ。ワガママな私はそれがちっとも面白くない。
「イタチはどうしてワガママな私の言うことばかり聞くの?」
「(自分がワガママだって自覚していたのか)…○○の父親に雇われているからだ、○○の言うことには従え、と申し付けられている。」
「…そう言うこと…」
真意を聞いた私は酷く落胆する。やはり執事だけあってお父様の言いつけを守ってるのね、よく見ればイタチが支払いの時に使っているカードはお父様名義のゴールドカード、道理で懐が深いわけだわ。
結局、私が本当に欲しいものは手に入らないってことね。
「○○?」
「じゃぁ、イタチはもう私の言うこと聞かなくて良いわ、このカードがあれば私だって買い物くらい出来るし…もう平気よ、」
「っ、だが」
「大丈夫、お父様には私からちゃんと言っておくわ。…今まで迷惑かけて、ごめんね。」
「○○!」
伸ばしたけれど掴めずにすり抜けていった彼女の細い腕。俺は○○を酷く傷付けてしまった、彼女に仕えていたのはただ命令されているからと言うわけではないと、彼女も分かってくれていると勝手に思っていたのだが、それは自分の理想を押し付けて自己満足していただけの話で、結局俺も自己中心的な人間なんだろう。言わなきゃ相手には伝わらないのに。
あの今にも泣きそうな顔が目に焼き付いて離れない。
「お嬢様、髪が乱れてしまっていますよ、」
「お召し物のリボンもほどけてますわ、」
「あ…ありがとう。」
違う、違う、違う。
イタチのほうがもっと優しく綺麗に整えてくれるわ、リボンだってふんわり均等にしっかり結んでくれる。ちゃんと出来ないくせに私に触らないで、私に触れても良いのはイタチだけだったのに、
やっぱり私1人じゃ何も出来やしないのね
「すいません、それは俺の仕事なので彼女を離してもらえませんか?」
「…な、なによ、何しに来たの?」
「○○こそ泣きそうな顔してどうした?俺がいなくて寂しかったか?」
「っ…そうよ、悪い!?イタチがいないから髪だって乱れるしリボンだってほどけるし、もう最悪…」
ふわり、
重なる唇。触れるか触れないかで交わされたそれはとても暖かく、心地よかった。
「○○、俺がどうしてご主人様の言いつけを素直に守っているのか、お前は知ってるか?」
「…え…?」
"○○の傍に居たいからに決まってるだろう?"
また、唇が触れた。
This is love.(それは、愛。)
2009.5/15
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