あの雲を晴らして



月夜へ 19300Hit記念



「あんな奴、もう知らない。勝手にやってれば良いわ!」


怒りながら足早にアジトから抜け出す。サスケに実力を買われて一緒に里を抜けたはいいけど、大蛇丸は気持ち悪いし、彼がやっと居なくなったかと思えば次は変な眼鏡の女がサスケに付きまとってなかなか離れようとはしないし。それにうんざりして、私は今度こそこのグループを抜けてやろうと本気で思っていた。


「とりあえずお金があればなんとかなるわよね。」
「おい○○、どこ行くんだよ!」
「水月…ちょっと買い物!」
「早く帰ってこいよー」


そんなこと知るもんか、私は私の道を行くんだ。途中から入ってきたアンタ達と一緒にいるのはもううんざり。大体なんで私が肩身の狭い思いをしなくちゃいけないのよ、初めから色々おかしかったんだわ。


「…○○が居ない」
「あんな奴どうでも良いじゃないサスケェ、そんなことより私と」
「○○、」


数時間後、○○の不在に気付いたサスケは香燐の腕を振り払い、外に飛び出した。まだそう遠くには行っていないはず、そう思いすぐに地を蹴る。焦る彼を見て水月が「買い物に行った」と言ったが、そんな言葉には見向きもせず、彼は走った。○○が「買い物に行く」と言って素直に帰ってきたためしがない。サスケはそれをよく知っていた。彼女は常習犯なのだ。


「…んー…最初の宿はどこにしようかなぁ…」


今までコツコツ貯金してきた分、お金は沢山ある。笑顔で街へ足を踏み入れた○○は、肩を叩かれて振り返った。


「…っ…サ、スケ、」
「お前…何考えてんだ」
「サスケ、息切れてるよ」
「…お前を急いで追ってきたんだ。」
「あー…ごめん、ただの買い物」
「違うだろ。」


図星をつかれて○○は苦笑する。やはりサスケにはお見通し、だけど彼は肝心なところを見落としていることに気が付いていない。私は別に彼に追ってきてほしくてこんなことをしているわけじゃないんだ。


「なんで分かったの」
「二度あることは三度ある」
「じゃぁ、これが三度目の正直。もう…戻りたくない。」
「理由は」
「…私なんか居なくてもいいでしょ、他の人たちが居る。」


私がそう言い放つと、サスケは唇を噛みながら拳を握る。あらら、これは彼が怒る前に退散しなくては、そう思った私は彼に背を向けて足を踏み出した。すると彼の声が私を追いかける。


「俺は○○じゃなきゃ嫌なんだ。」
「毎回同じこと言っても無駄よ、全然気持ちが伝わってこないわ、」


そう言って振り返った瞬間、重なった唇。驚いてそのまま固まっていると抱き締められて、身動きが取れなくなる。ここは街中だし、どうしたらいいか分からなくて、物凄く恥ずかしくてどうしようもなくて、ただ黙っていた。


「うちはを復興させるなら、お前とが良いんだ。」
「…え…?」
「だから…ほら、帰るぞ。」
「や、やだよ、なんで私なんかが」
「満更でもないんだろ、可愛い嫉妬はそこまでにしておけ。」
「うるっさい!今度香燐とベタベタしてたら婚約破棄よ!!」
「ふっ、かわいくねぇ奴。」


手を繋ぐなんてどれくらいぶりだろう。後ろから見てもサスケの顔が赤いのがわかる。そんな彼の背中を叩いて私は走り出す。


「可愛くなくて悪かったわね!」


すぐに私を追いかけてサスケも走り出す。こんな馬鹿みたいなやり取りが、物凄く幸せだった。




(サスケは今幸せ?)
(お前が居るならな。)


2009.4/18
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thank you!! :)



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