かくれんぼ



瑞稀様へ 17100Hit記念



人気のない桜並木を○○と2人で歩きながら、溜め息をつく。俺から花見をしないか、と誘ったくせに緊張のあまり一言も話せないなんて、我ながら馬鹿馬鹿しくて失笑、しかし密かに思いを馳せている彼女があまりにも可愛くて、自分の隣を歩いているのが夢みたいで、俺は小さく微笑んだ。この華やかな笑顔、ストレートが綺麗なキャラメル色の髪、大きく粒羅な瞳、豊満な胸とは裏腹に、程好く引き締まった身体のライン…何も○○の魅力は外見だけではない、その優しく芯のある性格も、俺はとても好きだ。

○○は当時酷く無口(今もだが)で病んでいた俺に真っ先に話しかけ、まだ暁に慣れていなかった俺の面倒をほとんど見てくれていた。だが今はお互い別の任務が増え、俺は忙しくて彼女になかなか会えていなかったのが寂しくて、今に至る。


「良い天気だね、イタチ。」
「…そうだな。」
「何か話したいことでもあったの?」
「…べ、別にそう言う訳じゃ…」
「そっか。」


この気遣いをさせないやり取りが俺はとても好きで、だからこそ「○○の隣に居ると凄く安心して、俺が俺で居られる気がする。」と、前にそんなことを言ったら、彼女は頬を染めて嬉しそうに笑った。要するに俺は○○に相当惚れ込んでいると言うことで、それを自分の心の中で妙に改めて自覚してしまい恥ずかしさが込み上げてきた俺は、編み笠を目深に被り直す。


「イタチは、暁に居て幸せ?」
「幸せとは言えない世界だろう、元々。」
「そうかもしれないけど…じゃぁ、イタチは自分が不幸だと思ってる?」
「…いや、不幸では…」
「なら、幸せなのね。」


そう言って笑った○○がどうしようもなくいとおしくて、俺は彼女の頭を撫でる。すると彼女は気持ち良さそうに目を閉じた。


「…イタチは優しいから。だから…この世界に足を踏み入れたこと、凄く悩んでると思ったの。だけど、違うみたいだから良かった。」
「…そうしなければ何もかもが上手くいかないからな…」
「またそうやって1人で抱え込むんだね。」


悲しそうに言った○○の切ない顔が、俺の目に焼き付いてなかなか消えようとはしなかった。これ以上彼女を悲しませたくない、けれどどうしたら良いのか分からなくて、ただひたすら黙って歩く。だがこの沈黙すら嫌で、勝手に追い詰められた俺はついつい血迷ったことを言い放つ。


「○○がずっと俺の傍に居たら、…そうしたら、お前にだけ何でも話してやる。」
「え…」


だが、俺はこの台詞を言った直後に後悔した。本来ならば有り得ない、上から目線の告白。とてつもなく恥ずかしくて恥ずかしくて、ついつい歩く速度を速めると、後ろから○○が追ってきて俺に抱きついた。


「待、って…」
「…」
「それ…ほんとう?」
「…あ、あぁ」
「じゃぁ、私ずっとイタチの傍に居るわ。」
「…は?」


信じられない○○の答えに耳を疑い、勢い良く後ろを振り返る。だが、彼女は平然とした様子で相変わらずニコニコと笑っていた。


「お前、それがどういうことか分かっているのか、」
「分かってるわ、つまりこう言うことでしょ、」


ちりん、

○○はイタチの笠を取り、彼の首に腕を回す。そして、自分の唇を彼の其れに押し付け、ゆっくり目を閉じた。


「、○○、」
「イタチ、今日からずっと一緒に居るからね。」
「…お前はそれで良いのか、」
「なんで?」


私はイタチが好きだから、今こうして一緒に居るのよ。

そう言って笑った○○に、俺はもう一度深く口付けた。


かくれんぼ

(本当は、ずっと前から見つかっていたんだね)


2009.4/6
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thank you!! :)



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