ある夏の日、一族の会合からの帰り道、私たちはじりじりと照りつける太陽の暑さに息を切らしながら帰路についていた。たまらず着ていた服を右手でつまんで前後にパタパタと動かして風を送るけど気休め程度。ちらっと横を歩くマダラを見ると、彼は暑さなど微塵も感じさせない無表情のまま歩いている。やっぱりマダラはいつだってクールだ。

「ふーっ、やっぱり夏は暑いわねぇ!」
「…」
「ねぇ、聞いてる?あ、甘味処でかき氷食べない?ねっ!」

マダラが無言なのを良いことに、私は彼の背を押してそのまま甘味処へと歩く。店の暖簾をくぐり、味はどうする?と聞けば小さな声でレモンと返ってきた。なあんだ、食べる気あるんじゃない!少し安心した私は、彼を椅子に座らせて店員を呼ぶ。よし、今日は私のおごりにしよう。気前よく注文と勘定を済ませて店内をぐるり見渡すと、ふと大きなポスターが目に入った。

「今日、お祭りなんだね」
「知らなかったのか」
「うん…最近忙しかったじゃない、」

いいなぁ、と呟いたのと同時に運ばれたかき氷。目の色を変えてそれに飛び付く私をじっと見ながら、マダラもレモン味のかき氷を口に運ぶ。そよ風に風鈴がちりんちりんと爽やかな音を奏でていた。私が美味しいと言いながら顔を上げたとき、ふと、マダラの手が止まる。

「…行くか?」
「え?」
「花火だけでも見に行くか?」
「い、いいの?」
「俺はかまわん。」
「嬉しい…!」

最近は会合ばかりであまり自分達の時間も取れていなかったし、なんてぶつぶつ言っているマダラをよそに、私はもう花火大会のことで頭がいっぱいだった。彼と一緒に夏祭りだなんて、何年ぶりのことだろう?はやる気持ちを抑えつつ誤魔化すかのようにかき氷を頬張れば頭がきぃんと痛んだ。


野外プレイ


「ご、ごめん、待った?」

下駄をからんころんと鳴らしながら小走りで駆け寄れば、気にするなと肩に回される腕。あっ、なんだかこのやり取りものすごく恋人みたい、なんて顔を少し赤くして、私は俯いた。や、恋人だけど、恋人なんだけど、最近は忙しさのあまりに甘い雰囲気とはだいぶ疎遠になっていたから、周りからは既に老夫婦のようだと言われるほどで。その老夫婦(仮)が一緒に浴衣で花火大会を見に行くだなんてロマンチックな展開に、私はただただ胸をときめかせていた。でも、ふと気づいたとき、自分達があまり人気のないほうへと歩いてきていたことに気づく。あれ?

「マダラ?花火会場ってこっちじゃないの?」
「いや、此方の神社の裏が穴場だ」
「あ、そうなんだ」

あっさりと言い返され、腕を引かれるままついて行くと、確かに丘陵の上に建つ神社の裏からは花火が綺麗に見えそうで。マダラは何でもよく知ってるなぁと感心していると、彼が私を後ろから抱き締めた。私の左肩に乗せられた顎、吐息が首に当たってくすぐったい。

「んっ、」
「浴衣…よく似合っている」
「ありがと…」
「どうした?」

マダラの吐息から逃げるように顔を思い切り右に傾げたのがあからさまだったせいか、彼はそのまま私の首をぺろりと舐めた。ひぃっ、と息を吸えば噛み付かれ、私は反射的に腹に回されていた彼の腕を握る。その腕がじわじわと上に上がっていったかと思えば、浴衣の隙間から私の胸を掴んだ。頂をつままれた瞬間、ぞわぞわと背筋が震える。

「ちょ…っ、花火見に来たんじゃないの、っ」

彼を止めようと顔を後ろに向けた瞬間口を塞がれ、押し込まれた舌に唸った。しばらく絡ませれば蕩けていく思考、心とは裏腹に疼いているご無沙汰な身体。膝から崩れ落ちる私を石段に座らせ、浴衣の裾を捲り上げながら彼はくつくつと笑う。

「こんな格好をして、俺を誘ったのはお前の方だろう?」
「ち、違う!私はただ、っあ!」
「なら、この液体はなんだ」

わざと私の目の前に翳された彼の手の指は月明かりに照らされてぬらぬらと輝く。マダラが触るからでしょ、と強がったものの、もう既にその気になってしまっていることは否めなかった。そんな私の心を見透かしたように彼はその指をこれ見よがしに舌で舐めとったあと、また私の中に挿入する。ぬちぬちと抜き差しされるそれは確実に私の急所を突き、あっという間に余裕を奪っていった。油断をしたら意識が飛ばされそうだ。

「もうやめて…人…来ちゃうからあっ」
「…静かにしろ、」

顎を捕まれ、舌を絡めとられれば口端から2人分の唾液が溢れる。同時に下半身へ感じる圧迫感に、マダラの浴衣を力一杯握った。いつの間にか始まっていた花火の割れる音が、まるで私の心臓の鼓動のように胸に響く。乱れた浴衣もそのままに私の中で律動を繰り返す彼の姿を見るだけで余計に疼いてしまうのだから仕方ない。目の前の花火が、生理的に溢れてくる涙のせいで霞む。

「ん、マダラ、っぁ、」

名前を呼べばすぐに塞がれる唇。彼の後頭部に腕を回して身体を密着させれば、自然と上がる速度。マダラ、今日は随分余裕がないのかな、なんて思いながら、彼の腰に両足を回した。そんなこと考えてるけど、私だってもう限界だ。

「…イっちゃう、」
「ヒメ、」

マダラが私の耳許で何かを囁いたのと、三尺玉の打ち上がる音が重なる。次いでに私の中で彼の男根が脈打ったのと私の膣壁が震えたのも同時だった。息を切らしながら彼になにを言ったのか聞くけど、それも全部花火の音に邪魔されて何が何やら伝わらない。暫くして息が整ったあと、彼が私の顔を両手で挟み、繋がったままの身体をまた打ち付けながら口をぱくぱくと動かした。














2013/07/05
朱々

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