>> middle text とても…誰よりも大好きな彼。 報われなくても、側にいれればいいと思っていた。 どんなに笑おうと、どんなに一緒にいようと、どんなに自分が彼に惹かれようと。 雛森副隊長には敵わない、それを知っていたから。 "告白"されたとき、ナマエはつい泣いてしまった。訊きたいことは山ほどあったし、気になる事もあったりしたけど、それ以上に嬉しかった。 不器用に、泣いている私の涙を拭おうとしてくれた彼が、ただただ愛しかった。 「でも、」 それでも、私は雛森副隊長に敵わない。 彼の幼馴染の枠を越えた溺愛っぷりを知っているから。 彼がどれほど幼馴染に傾倒しているか知っているから。 なぜなら彼は自分よりも幼馴染や業務を優先させるから。 そして、彼は ―――日番谷冬獅郎は恋愛に執着出来ない、しない人だから。 もしかしたら雛森を守りたいからと別れを切り出されるかもしれない…いや、したいのに出来ないのだろう。 ずっと好きで、同じ隊だと知って喜んで、まさかされると思わなかった告白を受けて、付き合うという長い長い片想い明けのお付き合い。 いっその事、切り捨ててくれていいのに、切り捨てられない優しい人。だから、私は… 「私から、解放しないと、ね…」 …私から言えばいい。彼はきっと何も反応しないから。すんなり別れてくれるはずだから。傷む胸を無視してナマエは笑った。 「ナマエ」 「ん…?…なんでしょうか、日番谷隊長」 今日は本当は付き合って何度目かの記念日だった。 けれど、彼はきっときっと覚えてはいないのだろう。いつからか忘れた、彼がこの日に私の側にいなくなったのは。 そうだ。いつもと変わらない、なのに。 「今日、体調が優れないのか?顔色が悪い。」 そうやって甘いから、気付いてくれるから諦めたくなくなるの。更に好きになっちゃうの。 ぐっとこらえる様に下を向いたナマエは顔をあげてニッコリ微笑んだ。 「日番谷隊長、今お話をしてもよろしいでしょうか?」 「ああ、大丈夫だ」 ずっとずっと好きだった。今も誰より愛してる。けれど、彼とわたしでは好きの重さが違いすぎる。きっとこのまま一緒にいても、何も変わらない。むしろ、私が荷物になるだけだ。 せめて、迷惑をかけずに離れたい。 面倒な女だと思われることなく、お別れしたい。きっと彼はすんなりとわたしを離すから。 「別れて下さい」 その瞬間なにが起こったのか分からなかった。 あまりにも早くて、ナマエ自身が状況を読み込めなかった。 「ひ、日番谷、隊長…?」 "別れてください"そうナマエが話した瞬間、彼は壁にナマエを押し付けた。抵抗もする時間もないぐらいに一瞬に。上に纏められた手は左手で強く握られ、足と足の間に彼の足をはさめられていて動けない。 なにより、下を向いて表情の見えない彼が、怖い。 「……ん…だ」 「…え?」 「…なんで、そう言うんだ」 まだ顔を俯かせながら話す日番谷。その声は心なしか低いと思うのは気のせいなのか。 ナマエはそれを気にする事が出来ないほどに戸惑っていた。 「っ…」 ふいに、嗚咽が漏れる。なんで、彼は期待をさせるのだろうか。分かった、と普段通りの表情で言ってくれればいいのに。 だめだ、と意識すればするほどぽろぽろと情けない粒が落ちてしまって、止まらない。 だめだ、せめて重い女と思われる前に、別れなきゃって思っていたのに。 「ひ、つがやたい、ちょうは、ひっく、なんで、わたしにかま、うんで、すか、」 「………」 「わたしは、こんな、す、きなのに、う、うう、あな、たは、ちが、」 「………」 「おさな、なじみが、ぜんぶ、ゆうせんで、」 「わたしなんて、いなくなっても、構わないでしょう、だから」 ―――終わりにしよう、その言葉は、彼の性急な口づけによって、音にはならなかった。驚いて体を引こうとしても、彼に捕まっている体はびくともしない。これが男女の力の差なのだろうか。 ぼう、と考えている間にも、ぬめりと彼の舌が口内に侵入して、びくりと体が揺れてしまう。初めての感覚に思わず意識がとろんとしだし、何も考えられなくなる。 ふいに日番谷が顔を上げる。 その表情は今までに見たことのない位、情欲的な目をしていた。 「ひ、つがやたいちょ、まっ、」 「勘違いしている。俺は雛森を幼馴染みとして心配しているだけだ」 「あ、やっ」 「お前にずっと触れたかった。それこそ監禁したいぐらいに。」 「んん、ろ、うか、だから」 「嫌われるかと思っての行動が、お前を傷付けたならもう遠慮はしない」 「ひっ、やあ、まっ、」 「俺がどれほどナマエを愛してるのか」 分からさせてやる。 その言葉を皮切りに、日番谷に近くの部屋へと押し込まれる。誰の部屋なのか、そんな事も考えられない位に日番谷の手のひらがナマエの体を弄ぶ。その間も、好きだ、離れるなんて許さねぇ、お前は俺のだ、一生俺の傍にいろ、なんて、今まで聞いたこともないような独占欲や執着がナマエに降りかかる。 「なん、で」 「ナマエは俺だけ見てればいい、四年経った今も、これからも」 覚えていたの、そんな一言さえ言う余裕も与えてくれない。体中に熱いキスが降り注いで、その度に反応してしまう。 「愛してる、ナマエ」 そう、彼が言ってくれるだけで十分だ。 日番谷の熱を体全体で感じながら、ナマエは今までにない程、幸せそうに微笑んだ。 実は影で溺愛でしたという落ち。 きっとこれからはオープンに甘やかす事になるでしょう!そして、知らなかった隊員が驚く中、どんだけ愛しているか惚けられていた雛森と乱菊はやっとかと苦笑いをする事でしょう! 続き必要かなぁ… [*prev] [next#] [back] [しおりを挟む] |