>> middle text ※名前変換無し 安室さんに対する愛だけを込めて書きました。 安室透という天使に会うまで長いです。 私が衝突に前世の記憶を思い出したのは今から、約10年前だった。 現在、28歳の私が18歳の時である。ちなみに、年上の幼馴染の家に上がり込んでいる時だった。 その時には、既に進路も就職で決まっていたと思う。所謂、商業高校であった私は自身が取得した日商簿記や全商簿記、その他の検定の資格を元に、割といい所に就職が内定していた。 そんな時に、前世の記憶を思い出したのだ。それも、"アニメオタク"と呼ばれる分類であった記憶を。 "アニメオタク"であった私はどうやら様々なアニメを好きで手を出してたらしい。 B●SARA、幽●白書、ぬら●ひょんの孫、テ●プリ、う●プリ、薄桜●、妖怪●ォッチ、黒●ス、RE●ORN!、七つ●大罪、N●RUTO、ON●PIECE、●魂、マ●、終わりのセ●フ、ジョジョの●妙な冒険、●剣乱舞、僕のヒーロー●カデミア、ユー●!!! on ICE、Fa●eシリーズ、おそ●さん……いや、多すぎません? その中でも特にハマっていた漫画。それが「名探偵コナン」である。 主人公は高校生探偵、工藤新一。幼なじみで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行って、 黒ずくめの男の怪しげな取り引き現場を目撃した。 取り引きを見るのに夢中になっていた新一は、背後から近付いて来る、もう一人の仲間に気付かなかった。新一はその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら体が縮んでしまっていた!! 工藤新一が生きていると奴らにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。 阿笠博士の助言で正体を隠すことにした新一は、蘭に名前を聞かれて、とっさに江戸川コナンと名のり、奴らの情報をつかむために、父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。 コナンは毛利のおっちゃんを名探偵に仕立てるべく、時計型麻酔銃でおっちゃんを眠らせ、蝶ネクタイ型変声機を使って、おっちゃんの声でかわりに事件を解いている。 この二つのメカは、阿笠博士の発明品だ!博士は他にも…ターボエンジン付きスケードボードや、犯人追跡メガネ、キック力増強シューズなど次々とユニークなメカを作り出してくれた! 蘭もおっちゃんも、コナンの正体には気付いていない。知っているのは阿笠博士と、西 の高校生探偵、服部平次、それに同級生の灰原哀…。 彼女は黒ずくめの男の仲間だったが、組織から逃げ出す際、新一が飲まされたのと同じ薬を飲んで体が縮んでしまった! 黒の組織の正体は、依然として謎のまま…! 「小さくなっても頭脳は同じ!迷宮なしの名探偵!真実はいつもひとつ!!」 というのが始まりである。何故分かるのかって?何度も何度もアニメや映画を見てたからだよ。アニオタ舐めんなよ。というのは置いとき、特に何度も繰り返して見ていたコナンの映画が2つあった。 「名探偵コナン 純黒の悪夢」と「名探偵コナン ゼロの執行人」である。 どちらにも共通して出るキャラクターであり、コナンにハマった理由でもある人物がいる。 それは、「安室透」というキャラである。 あの日、私は運命に会ったのだ。たまたま見たサンデーで見たコナン、安室透の初登場である「ウェディング・イブ」を見てすぐに好きになった。 当然、出たばかりのキャラだからグッズはない。彼が数年たってもグッズは少なく価値という価値もなかった。ところがとある映画で人気になったのだ。赤井ぃぃぃぃぃ!!!安室さんを傷付けんなよ!!とか、んもぉぉぉぉぉ可愛いよぉぉぉぉ!!!やら、え!!友人がかのイケメンであり佐藤パイセンの恋のお相手であった松田だと!?!?など、色々と思うところもあったが、 尊い。 その一言に尽きた。 安室さんは人気になり、グッズや登場回数も増えていき私は満足していた。 安室さんのキャラや設定が濃いのが悪い。 私立探偵「安室透」であり、黒の組織の「バーボン」であり、公安警察「降谷零」でもあるトリプルフェイスとか美味しすぎる。 嫌いな人はいないと思われる褐色肌と明るい色の髪のイケメン。公式モテモテイケメンである。 「安室透」としての彼は私立探偵で毛利小五郎に弟子入りをする。正直、「ウェディング・イブ」での推理は毛利小五郎に取り入るためのわざとじゃないかと思ってる。毛利探偵事務所の1階で経営している喫茶店「喫茶ポアロ」の店員でもあり、安室さんの登場回は、穏やかな表情をしていたり兎に角可愛い。 「漆黒の特急」シリーズで正体が明らかになった黒の組織の探り屋の「バーボン」。最初はショックを受けていたのが懐かしい。情報収集を専門とし、観察力・洞察力に長けていて言葉巧みに操り、相手から情報を引き出すのが得意なバーボン。ぶっちゃけエロい。普段と目が違う辺りヤバイし、格好いいし、エロい。色気が凄いし、もう悪でも何でもいいよ。ずっと好きだからぁぁぁぁぁ!!!となるエロさ。 そして、彼の正体である「降谷零」。 安室さん安室さんと言っているから慣れないが、本名である。察庁警備局警備企画課(通称:公安警察)とかいうなんか凄い日本の組織に所属している事が判明したあの時の嬉しさは今でも思い出せる。主人公の敵という事はいつか捕まったりとか死亡フラグとか…と覚悟を決めていたら実は日本のために信念と正義を貫くくっそ格好いい男とか。なにそれ、好みすぎる。 そんな降谷零がほぼ主人公であるコナンの映画、「名探偵コナン ゼロの執行人」 拝むしかなかった。 初日に見た時は、ただただ感動していて。次に見たときも、また感動して。3回目では彼の台詞を噛み締めて。4回目は動きを舐めるように見て。5回目は安室透&降谷零のぬいぐるみを膝の上に乗せて。6回目は………と兎に角見まくった。 降谷の愛車である「RX-7FD3S型」で神業ともいえるドライビングテクニックで敵を追い詰める姿なんか車の映画だっけ?と思うくらいに格好いい。 というか、降谷零という存在が格好よすぎという罠である。 安室透は可愛いくて、バーボンはエロくて、降谷零は格好いい。 そんなコナンのキャラにドハマりしたのが"前世"の私であって、その"前世"の記憶で彼の大ファンで最推しになったのが私である。 つまり、今生きてる「名探偵コナン」という漫画が無い世界で存在しない漫画のキャラが好きになったのだ。 勿論、最初は絶望した。 そして次に、別の意味で私は絶望した。 私の住んでいる街は米花町。何時の日か、犯罪がほぼ毎日主人公の周りで起こる犯罪率高めの町。今思えば、隣の家で泥沼不倫関係での殺害事件や、旅行先で宿泊者の1人が無くなっていたら事件が多かったけれど。まじかよ、ライス・フラワー・タウン。犯罪が多すぎ笑えない。 「名探偵コナン」の世界に転生した事を素直に喜べないのが恨めしい。 モブは死ぬ、巻き込まれたら死ぬ、些細な事で死ぬ、なんという世界。そんな運命を知ったのがまだまだ希望に満ち溢れて世の中を知らない18歳である。 正直詰んだ、と思ったがなんと当時の私は工藤新一の親である有希子さんが約7年前に出産したというニュースを見つけたのだ。工藤新一がコナンとなり犯罪率がヤバくなる日まで10年という猶予はある。 推しキャラや、主人公に会えないのは心苦しいし一度はファンとして対面してみたいが自分の命は惜しい。だから、この10年で他県に転勤やらしようと思う。 思っていたの。 28歳の私、現在社畜である。 最初に就職した会社は、賃金がよかったが上司によるセクハラが酷かった。あの頃は若かった私は、絶えきれなくなって3年後に退職した。今は訴えればよかったと本気で思っている。 そして新たに就職した会社が現在進行形で働いてるこの会社である。 正確に言えば、その会社の支社に勤めていて、2年前に本社勤務になりました。支社も支社で酷かったけれど、本社はほんとブラック企業よ。今まで住んでいた場所から遠かった為、近くにある安いアパートを借りたんだけど滅多に帰ることはないし、周辺に何があるかさえ知らない。探索してみたいけれど、する時間も体力もないのだ。 薄暗い部屋を付いたままになっているパソコンの青白い光が照らす。今、何徹目なのかさえ分からない。この会社に就職して人は寝なくても生きてられる事を知りました。お友だちはリポビタンD含める栄養ドリンクとエナジージェルとカロリーメイト。家に帰れても疲れ果てて料理する事さえ面倒になる。 小さめの机と座り心地のいいとは決して言えない硬い椅子。机の上には大量の資料。昔から要領が悪いと言われていた私は、資料を作るのにもたもたして結果としてどんどん終わらない資料が積み重なっていく。 何度も辞めたいと思ったけれど、頼れる人もいないし金が欲しい私には仕事しかない。上司にも「お前はこの会社で役に立つしか生きる意味はない」ってよく言われるし。 その通りだと思うし、何だかんだ賃金はいいから、私はここを辞められないし辞める意味を見いだせないのだ。 一時期は辞めたくて商談をボイコットをしようと、両親が入院している病院やら商談場所近くにある廃墟やら山道やら色々逃げたりしたが各場所で事故やら爆弾やら事故やらありすぎて、忘れてたけれど米花町だよ此処となっておとなしくなりました。 前の会社を辞めたときだって、部屋でじめじめ引きこもってたら、住んでいた高級マンションに爆弾とか騒ぎがあったし。結局爆発したけど。煩いなって半分寝ぼけながらドアから出てきた私を、そこにいた誰かが引っ張ってくれたお陰で怪我はなかったけれど。 幼馴染には怒られて心配されて、養うなんて魅力的な提案をされたけれど流石の私も、そこまで迷惑掛けられないって断ったっけ。最近は連絡すらとってない。スマホのLINEや電話の通知がたまってるんだろうけど、見る暇もない。 …今思えば、私って悪運強いね。 まあ、すべて今となってはどうでもいい。仕事を早く終わらせて、迷惑を掛けないようにしないと。 何日も徹夜で書類を仕上げたり、家にも帰らないなんてことは当たり前のようにあるし、家に帰っても結局は持ち帰り仕事を何時間もやっている。窶れていくし隈も消えたことがないけれど、この仕事を辞められないし。 知ってるよ、女として終わってるって。一応、女としての最後の最後のプライドとして、1日一回は必ず会社に備えてあるシャワーを浴びて下着は変えてるからね。自分のロッカーがクローゼットになってる気がする。 他にも何人か女性も働いているけど、女声も男性も皆ぶつぶつと不明瞭な言葉を延々と吐いていたり、死んだ目で画面を見つめている。私より年上の人も年下の若い子達も。だから、尚更私だけ辞めるわけにはいかないから。 「ふぁ…」 久しぶりに仕事が全部終わって、朝の7時辺りに会社を出る。久々に浴びる太陽の光が眩しい。正直眠いし、だるいけれど、それ以上にお腹がすいた。 リポビタンD含める栄養ドリンクとエナジージェルとカロリーメイトしか口にしてないその胃に入るものは少ないとは思うけれど。以前、何週間ぶりに仕事が終わって自分へのご褒美としてす●家で牛丼を家で食べようとテイクアウトをして、家に帰って口にしたら……地獄をみたもので。 その日、貴重な睡眠時間も全て費やして腹痛に侵されてました。 今思い出しても地獄だった。 その時、ほんのりと珈琲の香りが鼻をくすぐった。ドリップしている時の珈琲の香りを嗅くど何かホッとした気分になるんだよね。珈琲の粉にお湯を注いだ瞬間のあの香りはとても心地がいい。想像していると、珈琲が飲みたくなってきた。疲れた時とかに珈琲を飲むとリラックスすることができて、心身ともにくつろぐことができるって言うし。 とりあえず、喫茶店で珈琲を頼もうと珈琲の香りがする近くにあった喫茶店に入る。カラン、と鈴の音が鳴り、入ると珈琲の香ばしい匂いと朝だからなのかパンの焼けた美味しそうな匂いを感じる。 今にも眠りそうだし眠りたいけれど、珈琲飲みたい。この喫茶店で一杯だけ珈琲を飲んだら帰ろう、と店員の顔も見ずに珈琲を頼む。 目を擦りながらも何とか珈琲を待つ。タクシーを呼んで帰ろうかなとぼんやりと思っていると、目の前にほんのり湯気が立つカップを差し出される。 珈琲を店員が持ってきたのだと思い、中身を確認せずに飲むとそれは、珈琲とは全く違う味だった。 熱すぎない程に温められたミルクに、ほんのりと感じる蜂蜜の味と、すりおろしたりんご。昔、眠れないときによくお母さんにねだってたなぁと思いながら、意識はどんどん遠ざかっていく。お母さんからレシピを教えてもらった幼馴染も、よく作ってくれたっけな。 とても、懐かしい味に、過去を懐かしみながら眠りに落ちる。 「…お客様、大丈夫ですか?」 「……んん、なに」 「具合が悪そうなので…救急車をお呼びしますか?」 「きゅうきゅうしゃ…あの、大丈夫です。救急車とか、大袈裟なので…」 えっという反応をする店員の声が聞こえる中、ゆっくりと覚醒していく。なんか、久しぶりに眠れた気がする。 あれ?何してた? 徹夜続きの日々から解放されて家にやっと帰れるようになって、家に帰る前に珈琲を飲みたくなって何処かの店によって、珈琲を頼んだらホットミルクが出てきて、ホットミルクを飲んでそれから――――― ばっと起き上がる。肩から何か落ちたが気にする余裕もなく冷や汗をかく。7時辺りに店に入った事は覚えてる。今は、昼の1時。忙しいはずのランチの時間もずっとこの場所を一人で占領していたのだ。さぞかし迷惑であっただろう。 「あああ、すみません!お店で寝てしまって!」 「いえいえ。むしろこちらこそ申し訳ありません…お客様は珈琲を頼みましたが、酷く眠そうでしたので勝手ですがホットミルクをお出ししました」 「そ、そんなこと!!」 ばっと、店員を見て、私は固まった。 え、まって。 「僕の顔に何かついてますか?」 安室さん!?!?!?!?!?!? まさかの目の前に大ファン最推しのリアル安室さんという素敵な意味での視角の暴力を受けてキャパオーバーした私。 「ご馳走さまでした!!!!!」 …変なことを言わなかったのが奇跡に等しい。ホットミルクに対してもだけど、大部分は安室さんという存在に対してです。え、もう社畜でも何でもいい。生きていけます。信じたなかった神様まじありがとう。 まあ、その後に店で寝てたことは置いといて図々しく常連になるんですよね!! 「梓さん、おはようございます」 「あ、おはようございます!今日はハムサンドにしますか?」 「うん、そうします」 2日に1回は必ず来るようになったポアロ。店員の安室さんと梓さんと顔見知りになって必然的に会うようになるよね。この喫茶店がポアロだと知らなかった私が恥ずかしい。住んでいるアパートと会社の中間にあるポアロという存在を今まで知らなかった自分が憎いよ! 安室さんがいるって事は、必然的に主人公であるコナンくんもいるって事でしょ?ポアロの上が毛利探偵事務所って事にかなり興奮したけれど、良いのか悪いのかまだ一度も主人公含めるレギュラーメンバーを見たことがない。まあ、私が来る時間帯は小学校行ってるもんね。 「ハムサンドお待たせしました」 「あ、ありがとうございます…安室さん」 「いえいえ、今日は顔色がいいので安心しました。」 安室さんに会うから当たり前だよね!?!? と、心の中で思いながらも顔に出さずに愛想笑いを浮かべる。今の会社で良かった所はポーカーフェイスが得意になった事かも。理不尽な事で怒られても疲れた表情や呆れた表情や睨んだりとかしないように頑張って身に付けたからね。今ほど感謝したことはないよ! あああああ、安室さんの作ったハムサンド美味しいよ。憧れのハムサンドだよ…原作にはないオリジナルエピソードで、同日公開「純黒の悪夢」のプレストーリーの「安室に忍びよる影」…ハムサンド回に出てきた憧れのハムサンドだよ。劇場版にリンクしてるってだけで興奮したよね。劇場版にリンクしているといえば、「ケーキが溶けた!」もだよね!「ゼロの執行人」のプレスストーリーで、安室さん特製の新メニュー!映画を見ると、劇場版本編のヒントとなる台詞やキーワードが多く登場している事に気付くのも醍醐味だよね。「ポアロ特製ケーキ」はまだ出てないから、「ゼロの執行人」はまだだね。というか、今まで社畜でニュースとか見る暇なかったから何処でどんな爆発をしたのか分からんよ…知っていればこのコナンの映画だって盛り上がったのに!ああ、なんて勿体ない事をしたの私よ!! 「美味しいですぅぅぅぅ!!」 「そう言って頂けると嬉しいですね。このハムサンドを新メニューにしようと考えていたんですが、いつも美味しそうに食べてくれるので心配はいらなそうですね。」 「…ふぁ!?…え、メニューのじゃないんですか…?」 「実はまだメニューに載ってないんです」 口許に人差し指を置いて右目を瞑る安室さん。あざといな、もう!!そんな所も大好きだよ!!! …というか、まじか。いつの日かメニュー見る前に安室さんにハムサンドはどうですか?って聞かれてあのハムサンドだと興奮して頼んだんですけど。え、なんたいうファンサービス!流石は私の永遠の推し! 待て待て。メニューにまだ載ってないって事は………「純黒の悪夢」はまだって事だよね!?!?え、まじか!!私が働いている時に安室さんと赤井さんのガチ戦闘シーンや競演シーンがあるってだけでもう生きていける!あ、別に近くで見たいとか思わないです。私、ただの一般人なんで死亡フラグはなるべく折りたいもので。まだ諦めてないからね、主人公のコナンくんという名の歩く死神に会ってないから生けていける!! 「それより…まだ細いままですね」 「私もそう思いますよ!大丈夫なんですか?」 「んー、これでも良くなった方なんですよ」 痩せこけた頬に目の下の酷い隈。骨が浮く程に痩せた体。…これでも良くなったのだ。前は貧血を起こす事もあったけれど、最近はないし。これも全て安室さんのお陰です。安室さんに会うという目標のためにノルマをクリアしたりある程度で切り上げたりして、このポアロで何かしら食べるから。まあ、流石にがっつり肉を食べるのは厳しいけれど。 「そうですね!初めて来店した時みたいに今にも死にそうな表情をしてないですし」 「…その話は止めてくださいよぉ…梓さん」 まあ、安室さんの偉大なる心を知れた素晴らしき日でもあるんですけど!?珈琲じゃなくてホットミルクを出したのは、眠れるようにという安室さんの好意だし。あの時は焦りまくって途中まで気付かなかった肩に掛けてくれたブランケットは安室さんの優しさだし。ずっと占領して眠っていた事に他のお客さんが何も言わなかったのは安室さんと梓さんが声を掛けてくれたお陰だし。というか、他のお客さん達も快く承諾してくれた事にも感動したよね。ほんと、安室様々です。ちなみに、私が寝たその場所は今では私がポアロに来たときの定位置になりました。他の常連客も私が来たらそっとその場所を避けるんだよ…優しさが身に染みるわ。 ちなみにお母さんと幼馴染がよく作ってくたホットミルクに似た、安室さん作のホットミルク。あれは、安室さんの知り合いに教えてもらったんだってよ。ちょっと運命を感じたよ、何処かの知り合いよ安室さんにホットミルクの作り方教えてくれてありがとう。 「今日はこのまま家に帰るんですか?」 「そうですね。実は、久しぶりに幼馴染に会う予定で…」 「それは嬉しいですね!」 「はい!あ、そろそろ時間になるので行きますね。これ勘定です、ご馳走さまでした」 ポアロを出ると、雲から顔を出した太陽に心地よい風。今までは、それを感じる余裕さえなかったのだ。 周りには様々な建物。新しい建物もあれば古い建物もあり車がよく通る。少し入ると、人通りが少なくなって路地裏には猫の目が光り、空き地近くには赤くて昭和レトロなアンティークな丸型ポストがある。80歳くらいのおばあちゃんが店番する駄菓子屋もあるし、住宅地には隠れて見えない公園もある。 原作では知らなかった事。今までは、仕事に囚われて見ようとさえしなかった町。なんて、楽しくて面白いのだろう。 一つ一つ、貯めていたお金で買ったカメラで撮っていく。カメラで写真を撮ることを、レンズ越しに物事を見るとこを、鮮やかで美しい光景やありふれた日常を写真として納めることを、自分の好きで趣味でもあった事を忘れてた。 今の会社を辞める訳にはいかないし、辞められない。けれど、それによって私の好きなことを諦めなくていいんだ。それを安室さんに会って思い出したんだ。 流石は安室さんだよね!!!!!! 「ここにいたのか」 「あ、ごめんね。うっかり写真をとって……え、裕ちゃん」 「どうした?」 風見さんが幼馴染だって知らなかったんですけど!?!?!? むしろなぜ気付かなかった!?あんなに眉毛が印象的なのに!?眼鏡じゃなかったから?そうなの??ねえそうなの???眼鏡がないから分からなかったの!?ごめんね、風見さぁぁぁぁぁぁん!! 「あ、えっと…眼鏡?」 「ああ…書類作成の為にパソコンを何時間も見つめていたからな…視力が低下した。視力が変わらないお前が羨ましいな。」 「あ、はい。」 まじかよ、裕ちゃん。 この数ヶ月で色々ありすぎる。安室さんやら安室さんやら梓さんやら安室さんやら安室さんやら安室さんやらで。安室さんが多すぎるって?あの可愛いの化身の安室さんに色々ない方が可笑しいって。 「というか、裕ちゃん? 何ですか…私の手首を掴んで」 「お前…痩せすぎじゃないか」 ひっっっっっくい声に思わず後ずさりました。がっちり手首を掴まれてるから逃げられないし。 手首を掴んだまま、裕ちゃんは私の住んでいるアパートに向かっていく。あれ、アパートの住所教えてたっけ?多分、教えてたのかな。 いや、言われる原因は分かるよ。痩けた肌の上にはどす黒くはなくなったけど隈があって、服から見える鎖骨や手足は前よりは良くなったけれどひょろひょろのガリガリに細くて、健康的だった肌はボロボロになっている。裕ちゃんの知っている頃の私とは大分違うからね。 「ゆーちゃーん」 「俺が公安部にいって忙しいからと連絡を怠っていたからか。だからこんなにも痩せ細っていったのか。だから言ったんだ、この会社は辞めろって。いや、おれが悪いんだ。おれが無理矢理にも止めていたら…いっそ俺の住むマンションに住ませるか。家に家政婦として置いとくのでも…いやそれで存在を知られたら…」 「おいこら、裕ちゃん」 何やらぶつぶつ呟く裕ちゃんの腹を殴る。ぐっ…と腹を押さえた裕ちゃんは俺何を…と不思議そうな表情を浮かべている。 うん、昔から過保護だけどさ、何かしらあると監禁方面に向かう癖はやめた方がいいと思うの。昔から私は自分で言うのもあれだけど世話のかかる子で、裕ちゃんにめっちゃお世話されてたけど。というか警察だろうが、止めろや。 「それより、裕ちゃんのお手製ガパオライス食べたい」 「お前なぁ…」 と言いながら作ってくれる裕ちゃんまじ好き。安室さんが一番ですけどね!?!? ガパオライスはタイの家庭料理。そんでもって裕ちゃんの得意料理のひとつよ。安室さんと匹敵する程には…いや、安室さんよりし……ううううう…まあ美味しいのだ!!! 「おい」 「はいはーい。玉ねぎとにんにくとパプリカだよね」 取り出した玉ねぎとにんにくはみじん切り、パプリカは2cmくらいの角切り。みじん切りにしたにんにくとサラダ油を裕ちゃんは手慣れた様子で炒めていく。 フライパンからいい匂いが漂ってきたら、玉ねぎを加えて軽く炒めて、鶏挽き肉と酒を加えてそぼろみたいにパラパラなるまで炒めていく。 火が通ってパラパラになったら、角切りのパプリカを入れる。フライパンのへりに向かって具材をすべらせ、具材をこぼすことなくフライパンを振ったりと、さっと炒めて、オイスターソース、ナンプラー、角砂糖を入れて汁気が無くなるまで炒める。 最後に千切った2枚のバジルの葉を入れてフライパンを振れば完成。ほんと、見てるだけでも楽しい。 用意していたご飯に添え、同時進行で裕ちゃんが作っていた目玉焼きを載せて完成。 流石にタイ風の春雨サラダを作れる程の食材はないから、千切りしたキャベツにイタリアンドレッシングを掛けて持っていく。 ちっちゃい居間にあるちっちゃいテーブルで向かい合わせになるように座って、ガパオライスを食べていく。 「それで、会社を潰すか?」 「いや、なに物騒なこといってんの!警察でしょ!?」 「違法捜査はお手の物さ」 「違うと思いますけど!?本当に止めてね!?会社つぶれたら裕ちゃん嫌いになるからね!」 まだ諦めてなかったんかい!っと心の中で突っ込みながら、裕ちゃんに釘を指す。裕ちゃん、妹離れの出来ないお兄ちゃんなもので。嫌うという切り札があれば大抵のことは許される!いや本当に止めてくれ。 安室さんとの接点がなくなるではないか!!認めざる得ないけど、あの糞会社で働いていたから安室さんに会えた。安室さんという存在がいれば頑張れるから! あと、裕ちゃんからあわばよく上司の話を聞きたいです!!!裕ちゃん風見裕也だから、安室さん…というか降谷さんの話が聞きたい!!!降谷さん、あんなに可愛いベビーフェイスで優しそうなのに実は厳しい所とかまじ最高。厳しくされちゃう裕ちゃんだけど、何だかんだ降谷さんを信用して行動しているのが映画で見てとれたし。映画では降谷さんをただの憧れや称賛の存在だけじゃなくて、畏怖の対象として見た上で風見さんは信頼して忠実にいたんだよ??その裕ちゃんからみた降谷さんの話が聞けるんだぜ??ファンにとってこれほど美味しい立場はあるのか!!!!ないだろう!!!! 色々あるけれど、目の保養のために今日もまた安室さんに会いに行きます。 「…今の会社をまだやめないんですか?」 「そうですねぇ……まあ、今は前より生きるのが楽しいので!」 明日もまた徹夜続き。痩せた体も、痩けた頬も、目の下の隈も、治るまで時間はかかる。けれど、生きるためだけじゃない、人生を謳歌する存在に会えたのだ。 そう…推しキャラがいるから生きていけますけど!?!? もう最高。安室さんという存在だけで生きていけます。今日も私の生きる糧となってくれてありがとうございます。私はもう!!!安室の女だよ!!ポアロに貢ぎまくるから!!! そういえば、上司が最近新しい取引先として黒い服装をよくしている会社?組織?と会談があるから参加しろって言ってたなぁ。 …面倒だからボイコットしたいと思える程には精神的にも回復した辺り本当に安室様々だと思うよ。 ***** [*prev] [next#] [back] [しおりを挟む] |