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「仁王君、やめたまえ!!」
「ちょっと黙っときんしゃい」


止めに入った柳生達を一睨みした後、仁王は再びこちらを向いた。


「お前さんがチームメイトじゃなくてただの知らん男じゃったら、俺は迷いなくこのままお前さんを殺しとる」
「〜〜っ、」
「幸村、俺はお前がどんな奴か知っとる。…あんな発言をして、お前さんはどうなりたいんじゃ?」


(どう、なりたい…?)


彼女と初めて話した時、嬉しかった。
情けないけど、本当に怖くて怖くて。
そんな俺に、真崎さんは手を差し延べてくれた。

初めて、女の人が怖くないと思った。
初めて、女の人と仲良くなりたいと思った。

温かくて、安心して。

感謝してもしきれなくて、再会した時言われた言葉はきつかったけど、嫌悪とか恐怖は感じなくて。

仁王の彼女だと知って、ショックだった。
でも、仁王とキスした時のあの表情が離れない。


「……守り、たい」
「ん?」
「真崎さんを、守りたいって、助けたいって、思ったよ。真崎さんに、笑っててほしい…」


そうだ。再会してから、あの電車で見せてくれた安心する笑顔を見ていない。

俺が立海生だったから?
仁王の彼女だから?


「仁王と付き合ってるから、真崎さんが笑えないんだったら、俺が笑わせてあげたい…っ!」

「幸村君…」
「部長…」


みんなが驚いた顔でこっちを見ているのがわかる。
俺みたいな奴が、誰かを守りたいなんてありえないこと言ってると思う。


(だけど…、本気、だよ)


殴られる覚悟で仁王の方を見つめた。


「っはは、ほんに、馬鹿じゃのう」
「……っ」
「ヘタレでどうしようもない幸村君に、プレゼントじゃ」
「……え?」


言葉の意味がわからず首を傾げていると、ポケットから携帯の振動が伝わってきた。


「幸村君の大好きな透ちゃんの連絡先じゃよ」
「え…、え!?」
「お前さんの勇気と初恋に免じて、1ヶ月だけチャンスをやる。その間は、メールでも電話でもデートでも好きにしんしゃい。1ヶ月の間に透がお前さんに惹かれたら俺は大人しく引き下がる」
「え、な、えっ!?」


ぜ、全然意図が掴めない…っ。なんで、どういうこと…?


「ただし、俺の目につかんところで、が条件じゃ」
「……?」
「俺と透が2人でおる時に、あいつの携帯に男からの連絡がきたら傷つくのはあいつじゃ」
「傷、つく?」
「考えて連絡せんと、お前さんが次に透に会った時にはあいつはボロボロかもしれんの」
「な…っ!?」


それって、真崎さんに暴力が振るわれるってこと…?


「そんなこともできんようじゃ、俺から透を救うなんて一生無理じゃよ」
「……っ」
「そうじゃなくても、その1ヶ月であいつが俺のもんじゃと教えちゃる」


ポケットの中の携帯をぎゅっと握りしめた。
そんな俺を見て、仁王は笑いながら去ろうとしていた。


「仁王…っ、一つだけ教えてっ」
「…なんじゃ?」
「なんで、立海生が嫌いな真崎さんが仁王と付き合ってるの?」


俺の質問に、仁王はまた笑った。


「逆じゃ、逆」
「逆……?」

「俺と付き合っとるから、透は立海生が嫌いなんじゃ」