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恋愛なんてこれから先俺の人生に関係ないと思っていた。


「あっ、こんにちは!」


月陽に会うまでは。
胡蝶の元に炭治郎がいると聞いて見舞いに来たのだが、入り口にある花壇で花の手入れをしている彼女に出会った。

第一印象は笑顔が眩しい女性という印象。
胡蝶に用事があると伝えれば一礼をして呼びに行ってくれる。

ふと彼女が手入れをしていた花を見れば桃色の椿が咲いていた。


「竈門くんのお見舞いですか?」


気配がして振り向くといつも通り微笑みを貼り付けた顔の胡蝶が居る。
顔を縦に振れば中へ通された。彼女は胡蝶と俺の後ろについて炭治郎の状態について軽く説明してくれる。

大した怪我では無さそうだと心の中で思いながら、蝶屋敷での炭治郎たちの様子も話してくれた。


「癸の子たちはとても元気な子達で可愛いです」

「…迷惑は掛けていないか」

「えぇ、話せばきちんと聞いてくれる子達ですから」


胡蝶の診察室に着くと俺が炭治郎たちの事だけで来た訳ではないと悟ったのか、茶を出してすぐに退室していった。
何となくその背中を見送っていると胡蝶が咳払いをしたから、視線を前に戻す。


「珍しいですね、冨岡さんが興味を示すなんて」

「関係ない」

「関係ありますよ、だって月陽はカナヲたちと同じくらい蝶屋敷の看板娘ですから」

「……」


俺が今からする話に胡蝶の話す内容は関係ないと言ったはずだが伝わっていないらしい。
思った以上に反れる話題にため息をついた。


「俺は鬼の件について話に来た。関係ない話はするつもりが無い」


これで伝わるかと、懐から出した鬼から拾った血液のついた衣服を渡す。
血液を採取したいと俺に頼んだのは胡蝶であり、それを渡す為と炭治郎の見舞いに来ただけだ。


「さすが冨岡さん。ありがとうございます。でもそんな話し方だと月陽に嫌われてしまいますよ?」

「俺は嫌われてない」

「今とこれからは別です」


至極楽しそうに話し出した胡蝶に付き合うと霧がないから無言で診察室を後にする。
なぜ俺が嫌われなければならないのか。先程会ったばかりで名前すら今知ったと言うのに。

炭治郎たちが居るという部屋へ足を向け、次第に会話が聞こえる程度には部屋に近づいてきたようだ。
楽しそうな雰囲気の会話を聞きながらゆっくり歩みを進めていると一際大きい我妻の声が聞こえる。


「月陽さぁん、俺苦くてこれ嫌いなんだよー!でもでも、月陽さんがアーンして飲ませてくれるなら俺頑張れちゃうっ」

「善逸君は甘えん坊さんだね」

「おい女!何時になったら外に出れるんだ!」

「しのぶ様からお許しが出たらね」

「こらお前たち!月陽さんに迷惑をかけるんじゃない!それにここは病室なんだから静かにしろ!」


聞いてて呆れるくらいのやり取りを月陽は嫌がりもせず朗らかに笑って面倒を見ている様子に、姉の面影を感じた。
炭治郎は日陰にいる禰豆子の頭を撫でながら同期二人を叱って声を張り上げている。

炭治郎、お前もなかなか煩いと思う。



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