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善逸君の音はとても素敵な音がする。
師範の天元様も言ってた。


「善逸君てとっても素敵な音がするんだね」


私が触れるとちょっとだけ早くなる心の音。
禰豆子ちゃんや、しのぶさん達にもよく早くなるけれど私の時はまた違う。


「そそそ、そうかなぁ?」

「うん、凄く」


春の陽射しが気持ちよくて、私は善逸君に抱き着いて音を聞いている。
ぽかぽかとした陽気が気持ちよくて眠くなっちゃう。

善逸君は全然眠くなさそうだけど。


「月陽ちゃん、そ…そろそろ離してくれないと俺…」

「鼻血が出ちゃうの?」

「っはー!!月陽ちゃんは小悪魔で天使なの?!上目遣いなんかしてもう!可愛い!」

「嬉しい」


いつも善逸君は私を可愛い可愛いと褒めてくれる。
離して欲しいって言う癖に私の背中に回った腕はとても強いの。
なんて愛されてるんだろう、と思う。


「このまま善逸君の心臓の音を聞きながら永遠に眠りたいくらい」

「えっ!?」

「天元様には怒られちゃうかもしれないけど、私鬼に殺されて死ぬんじゃなくて善逸君の胸の中で眠りたいもん」


お日様みたいな匂いがして、優しく私の背中を撫でてくれる善逸君の腕の中が大好き。
最初は勢いに押されて付き合ったけど、私を本当に大切にしてくれる善逸君にいつの間にか自分の方が大好きで仕方なくなってしまった。


「…善逸君?」


急に静かになっちゃった善逸君を不思議に思ってくっつけていた耳を離して顔を見上げたらすごく真面目な顔。


「駄目だよ。絶対駄目」

「何が?」

「鬼に殺されるのも、今ここで俺の胸の中で眠りに落ちちゃうのも駄目」


いつも汚い高音だなんて言われてる声じゃなくて、凄く落ち着いていて…どこか怒りを含んだ声音。
善逸君や天元様程ではないけど、私も音柱の継子だから音の種類は何となく聞き分けられた。

怒った雰囲気の善逸君は私の頬をそっと撫でて、蒲公英の様な髪を揺らす。


「月陽ちゃんは俺が守るから。頼りなくて、きっと月陽ちゃんより弱いかもしれないけど…それでも君は必ず俺が守る」

「善逸君…」

「だから、そんな事言わないで」


そう言った善逸君は怒っていた筈なのに、とても泣きそうな顔をした。
ごめんね、ごめんね。そんな顔をさせたかった訳じゃなかったの。

そんな気持ちを伝えたくて、そっと善逸君の唇と私の唇を重ねた。


「…月陽ちゃ」

「ごめんね、善逸君。私頑張るから、そんな顔しないで」

「うん…頼むよぉ。俺、月陽ちゃんが居ないと生きていけないからさぁ…」

「嬉しい。約束するよ、私頑張って生きて…善逸君の胸の中独占する」

「ど、独占して下さい…!」


えへ、と笑えば今度は嬉しそうな音が聞こえた。
照れたような、鼻の下を伸ばしていつもの調子に戻った善逸君にまた強く抱きつく。


「だからね、鬼が居なくなったその時は私をお嫁さんにしてください」

「ひゃっ…も、勿論だよ!」

「善逸君のお嫁さんは私が予約したからね。絶対に、約束守ってね」

「…うん。俺、頑張るからさ。それまで待ってて」

「うん」


善逸君の言葉に頷けば、本当に嬉しそうに笑ってぎこちなく私に口付けてくれた。
もっと、もっとして。そう強請るように私が善逸君の首筋に手を回して力を込めたら何度も何度も角度を変えて唇を合わせてくれる。


「んっ、好き…好き。善逸くん…」

「〜〜〜〜っ可愛過ぎるよぉ、月陽ちゃぁん…」


もっともっと私を愛して。
善逸君のたくさんの音を聞かせて。

貴方のその幸せそうな音を聞いていたら、私も幸せだから。




おわり。

突発的に思いついた善逸夢!笑
イチャイチャさせたかっただけなのにちょっと夢主ちゃん病んでる風になってしまった…()

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