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「月陽先生疲れてますか?」

「え、そう見える?」

「はい、少し」


はーっ!天使!錆兎君天使!
困った様に眉を下げる様は本当に中学生?と思うけれど、純粋に心配してくれている感じが先生すごく嬉しい。


「もしかしてあの人のせいだったりする?」

「あの人って?」

「義勇」

「…真菰ちゃん、一応先生って付けてあげようね。あんなのでも」

「やっぱり正解なんだ」


冨岡先生の名前に思わず口の端が引き攣る感覚を堪えて出来る限りの笑顔で答える。
でもどうして真菰ちゃんが冨岡先生を呼び捨てするのかは純粋に気になった。


「義勇はね、私達の幼馴染なの」

「私達、って事は錆兎君も?」

「えぇ。義勇が先生にご迷惑をお掛けしてるようで…俺からも言っておきますね」

「私からも言っておいてあげる!月陽先生には元気でいて欲しいもん」


やはり教室は天使たちの集まりだわ。
錆兎君と真菰ちゃんの頭を撫でて、そろそろ授業の始まる時間だから席に付かせた。

私は別教室での1時限目だから、このオアシスを出なくてはならない。
錆兎君たち以外のクラスの子もいってらっしゃいと手を振って私を見送ってくれた。

うん、やっぱりこの学園辞めたくないわ。


それから1時限目と2時限目の授業を終えて私の午前の担当は終わりになった。
これから昼まで雑務をこなしながら、今日配布予定のプリントに間違いがないか目を落とす。

ふと横から私のマグカップが置かれた。
誰か分からないけどお礼を言おうと顔を上げたら冨岡先生が得意げに笑ってこっちを見ていた。

いや、大人として一応お礼は言うけれど。
あんたかい、と思わず思ってしまったのは許してほしい。


「…ありがとうございます、冨岡先生」

「あぁ」


素直にお礼を言えばこくりと頷いて黙る。
ふと冨岡先生の顔を見て、黙っていればかっこいいのに勿体無いと思う。

しかもあんな可愛い子たちが幼馴染だなんて羨ましい事この上ない。


「そう言えば、錆兎君と真菰ちゃんと幼馴染なんだそうですね」

「あぁ、錆兎も真菰も月陽の担任だったな」

「えぇ。とてもいい子達ですよね」

「そうだろう」


ふと目だけで笑った冨岡先生にちょっとだけ心拍数が早くなった。
何をドキドキしてるんだ私は。
奴はぶどうパンだぞ。


「錆兎と真菰は良くやっているか。最近会う時間が無くてな」

「えぇ。たまに鱗滝さんが教室に二人の様子を見に来ては感動して帰っていくくらいには元気で授業態度もいいです」

「そうか」


それなら良かったと呟く冨岡先生は朝のようなアホな行動が嘘のように人として普通に見える。
普段からそうしていれば私も普通に接するのにな、なんて思いながら冨岡先生が淹れてくれた珈琲を口に含む。

そうしていると鐘がなり、次は授業があるらしい冨岡先生は残念そうに職員室を出て行った。

10分間の行間くらいは休むかと、プリントを端に置いて背伸びをする。
近々英語の模擬テストもやる予定だし、後々焦らない為にある程度進めてしまおうかと考えた私はパソコンを起動してお手洗いへ向かった。

珈琲って利尿作用あるよね。

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