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「あっ、ごめんね!義勇さんの小指繋いだままだった!」

小指を繋いだままな事に気づいた月陽さんが頬を染めて慌て始める。
離されてしまった小指に冨岡さんが首を振って謝る事じゃないと意思表示したのを理解してまた笑った月陽さんから甘い匂いがした。

冨岡さんと似てる匂いだ。

そう思った時、いつの間にか動いていた禰豆子がさっき冨岡さんに渡した絵を月陽さんにも見せ始めた。


「義勇さんと私だ!嬉しい!禰豆子ちゃん絵が上手だね」

「んんー!」

「ん?どうした禰豆子」


バーンと音がしそうな格好で筆を持ってきた禰豆子が渡したはずの絵に何かを書き加えた。
何を書いたのか気になった俺も身を乗り出して机の絵を見ると、絵の中の二人の小指に絡みついたリボンが書かれている。

禰豆子が何を言いたいのか察した二人は思わず目を合わせて顔を赤くしていた。
なる程禰豆子!流石だな!

胸を張り堂々とした禰豆子の頭を撫でてやる。


「俺、鼻がいいって二人ともご存知でしたよね?」

「え?あ、うん!」

「それがどうした」 

「二人から同じ甘くて優しい匂いがするんです。俺や禰豆子に向けてくれている優しい匂いとはまた違うんですよ」


冨岡さん。
冨岡さんの気持ちは分かります。
好いているからこそ、大切だからこそいつ死ぬか分からない自分が身を引く気持ちすっごく分かるんです。
俺はまだ恋というものをよく分かっていないけど、それでもやっぱり二人に幸せになって欲しい。

大丈夫です、冨岡さんと月陽さんなら。
こんなに互いを大切にし合えているんだから、別の人なんてきっと考えられないと思うんです。


身を乗り出したままの俺は冨岡さんと月陽さんの小指を再度絡ませて、巾着から出ていた赤い色のリボンを持ってきた禰豆子がキツくないよう結んだ。


「ちょ、禰豆子ちゃ…」

「炭治郎」

「冨岡さん、男ならば大切な人の笑顔は何が何でも守らなくちゃですよ!」


自分の両手で2つの拳を握って、唖然とする二人を置いて帰り支度をする。
これ以上は野暮だと思うし、きっと冨岡さんならやってくれると信じてる。
禰豆子も体を小さくして箱に収まったし、庭に置いていた草鞋に足を入れた。


「それじゃっ!お邪魔しました!」

「あえ、ちょっ!炭治郎君、禰豆子ちゃん!気を付けて帰ってね!」

「はい!ありがとうございます!月陽さんも体に気をつけて!あと冨岡さん、俺は冨岡さん信じてますからね!」


小指が繋がれたままの二人が縁側に立って俺達を見送ってくれる。
冨岡さんが小さく頷いてくれたからきっと大丈夫だ。
その日の帰り道はいつもより足取りが軽かった。

次の日冨岡さんと月陽さんが訪ねてきて、お礼だと甘味処へ誘ってくれたから、何も言われてはないけど上手く行った事は分かる。

だって冨岡さんからは月陽さんの香りが、月陽さんからは冨岡さんの香りがしたから。
とっても幸せそうな匂いと共に。


「義勇さん、こことっても美味しいね!」

「あぁ」

「禰豆子ちゃんが食べれるようになったらまた四人で来ようね、炭治郎君」

「是非!」


そう言って笑った月陽さんと冨岡さんの小指が机の下で握られてた事は敢えて知らないふりをさせてもらった。
俺は長男だから空気が読めるんだ!



終わり。
▼あとがき懺悔▼
炭治郎目線にしたら本当に冨岡さん夢なの?ってレベルにお互い殆ど話さず終わってしまったごめんなさい。

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