2

「そうだ!今日は皆にお土産がありますっ!」


縁側から居間へと移った俺達は然りげ無く月陽さんを冨岡さんの横へ座らせて、話に花を咲かせていた。
そこで月陽さんが突然手を叩き、持ってきていた巾着から何かを取り始める。


「この前横浜に行ってきたから、皆にお土産を買ってきたんだ。義勇さんしか居なかったらまた後でと思ってたんだけど、丁度会えて良かった。じゃーん!これです!」


ぱっ、と取り出したのは色とりどりの細い布だった。
こういう物に疎い俺達は頭を傾げてしまうが、それを見た月陽さんが濃い桃色の布を座っている禰豆子の横へ移動して髪の毛に結い始める。
いつも同じ髪型をしている禰豆子は月陽さんの手によって三つ編みになり、編み込みの最後を細い布で留めた。


「可愛い!」

「本当だ禰豆子!おさげ姿も可愛いぞ!」

「んっんっ!」

「これはね、リボンって言うの。髪紐の上から巻き付けるんだよ」


禰豆子の長い髪は太い三つ編みで一つにまとめられ、胸元辺りに下げられている。
そこで咲き誇るかの様に主張するリボンと言うものがとても可愛らしい。禰豆子も嬉しそうに体を上下させてるし、月陽さんは人を笑顔にする天才なんじゃないかと思う。


「でね、流石に義勇さんと炭治郎君にリボンは無いと思ったからこうします!ちょっとごめんね」

「わっ!?」


飛び跳ねる禰豆子の頭を撫でた月陽さんは俺に近寄り、日輪刀の鞘の部分に深緑色のリボンを着けてくれた。
手が向かってきた場所が場所だけに驚いてしまったけど、彼女は特に気にもかけない様子で鞘に触れ手慣れたように冨岡さんの日輪刀にも淡い水色のリボンを結んでいる。


「でも、どうしてリボンなんですか?」

「リボンってね、人と人との良き縁を結んでくれるんだって。だから、禰豆子ちゃんにとっても炭治郎君にとっても…義勇さんにとっても、これからたくさんの素敵な人や運の縁が結ばれます様にって私なりに願いを込めてみたの」


優しい笑みでそう言ってくれてるのに、月陽さんからは少し寂しそうな匂いがした。
俺達が鬼殺隊として夜毎鬼を退治している事を知っている彼女はいつも身を案じてくれている。
怪我を少しでもしていると慌てて駆け寄り心配してくれるんだ。


「あなた達なら誰かに頼らなくても運や人を引き寄せることが出来るって私は分かってる。だけど分かるだけで何かしてあげられる事はないから、その引き寄せた縁をこのリボンがもっと強く結んでくれたらいいなって思ったの」


義勇さんの横に座った月陽さんは困った様に微笑んだ。
優しい優しい月陽さんの気持ちが心に染みて、視界に涙の膜が張りそうになる。
そんな時、冨岡さんが未だに寂しそうな雰囲気を醸し出す月陽さんの小指を自分の小指で絡め取った姿が視界に入った。


「強く結ばれたか」

「え…?」

「良縁を強く結び付けるまじないが掛けられているんだろう」


それなら俺とお前も強く結ばれたと冨岡さんにしては珍しく言葉多めに語った。
かっこいいです、冨岡さん!心の中で俺と禰豆子が拳を握ってその様子を見守る。


「わ、私にとって良縁でも義勇さん達にとって私は良縁になるのかな…何かしてあげられる事なんて、無いし」

「顔を出してくれるだけでいい」

「そ、そうですよ!俺達も月陽さんがこうして元気な顔を見せてくれて、笑顔を向けてくれる事が何よりの力になるんです!」

「ん!」

「皆…ふふ、ありがとう」


やっと花が咲いたような笑顔になってくれた月陽さんにつられて俺達も笑顔になる。
冨岡さんも嬉しそうな匂いがしてるし、まだ繋がれたままの小指をまじまじと見つめていた。

[ 38/126 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -