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入り口で待っていてくれたのは不死川先生と弟の玄弥君で、降りた私の手を引いてエスコートしてくれる。
開かれた扉の先には用務員の鱗滝さんや、悲鳴嶼先生も居た。

そして、白いスーツを着た義勇さんが薔薇の花束を持って私に手を差し伸べてくれる。


「義勇さんっ!」

「…綺麗だ」

「義勇さんも、とっても素敵…かっこよくて私どうにかなっちゃいそう」


周りにはここまで私を着飾ってくれた人達や、禰豆子ちゃん達も正装して席に座ってる。
激しくなる胸を片手で抑えて義勇さんの手を取ると、柔らかく笑いかけてくれた。


「あの、こ…これってどういう事なの?」

「忘れたのか。今日はお前の誕生日だろう。だから、それに合わせてプロポーズしたい」

「え!?」


驚く私の手を取ったまま跪いた義勇さんが私を見上げる。


「誕生日おめでとう月陽。俺と、結婚してくれないか」

「……っ、もっ勿論!!こ、こんなっ…こんな素敵なプレゼント…う"ぅ…」

「月陽ー!誕生日、婚約…おめでとう!!」

「へ!?」

朱紗丸ちゃんがバレーボールを天井に向かって投げると、物凄い音がしてくす玉が割れると同時に周りからクラッカーを鳴らす音が聞こえる。


「義勇、おめでとう!」

「月陽さんおめでとうー!」

「錆兎君に真菰ちゃん」

「あぁ。月陽、部屋で渡した鍵をくれないか」


錆兎君と真菰ちゃんが私達の元へやって来て、小さな箱を義勇さんに渡した。
それを部屋で渡された小さな鍵でそれ開けるとルビーがはめ込まれたシルバーリングが顔を出す。

義勇さんに左手をすくい上げられ薬指にそれがはめられる。


「…どっ、どうしよー!もう、もう堪えられないよ義勇ざん"っ」

「皆、お前の笑顔を望んでいる」

「あーーーん!!皆、ありがとうございます!大好きだよぉー!!」


結局泣いてしまった私は涙を流しながらみんなに向かって頭を下げた。
義勇さんにも愛されて、たくさんの人からの祝福を受けてこんなに幸せでいいのだろうかと思う。

でも、顔を上げて見渡した先には皆の楽しそうな嬉しそうな笑顔を見てまた更に涙がこみ上げてくる。
私達の幸せを、幸せそうな顔で祝ってくれる仲間たちに心から感謝した。


「さて、派手に飲むぞ!勿論冨岡はいの一番に潰す!!」

「うむ、祝い事は派手に行かないとな!」

「よォ冨岡、未来の嫁の前でゲロっちまわないように精々気張れよなァ」

「!?」


義勇さんは先生たちに囲まれ始めて、私はそっと伊黒先生と蜜璃さんの元へ逃げる。
折角プロポーズしてもらったから、乾杯くらいしたかったけどこれからたくさん二人きりで乾杯する機会はあるから。


「月陽ちゃんおめでとうー!!凄く素敵だったわぁ!」

「蜜璃さん、ありがとうございます!」

「蜜璃、化粧が崩れるぞ」

「あ、ごめんなさい小芭内さん…」


私以上に泣いてる蜜璃さんを持っていたハンカチを渡す伊黒先生に思わず思考が停止する。
あれ?こんな風に呼び合っていたっけ?


「え、あれ?お二人、もしかしてお付き合いされて…たりしてます?」

「そうだが?」

「さ、最近…ね?」

「ちょっ、聞いてない!何それおめでとうございます!伊黒先生やっとヘタレ卒業したんですね!」

「おいヘタレとはどういう事だ。俺は機会を伺っていただけであって別に告白できなかった訳じゃないぞ。聞いているのかオイ、蜜璃に抱き着くんじゃない」

「蜜璃さんも結婚式は絶対呼んでくださいねー!!」

「勿論よ!私も冨岡さんと月陽の結婚式楽しみにしてるわ」


伊黒先生が何やらブツブツ言っていたけど、密かに二人を応援していた私は蜜璃さんに抱き着いて喜んだ。

こうして、こうやって人は少しずつ周りの環境を変化させながら人生を進んで行く。
高校生の時には想像もつかなかったこの光景。


「月陽」

「あ、義勇さ…ん」

お酒のせいなのか、少しだけ顔を赤くしながら私に寄ってきた義勇さんに振り向いた瞬間唇に柔らかい感触が当たった。


「一番大切な事を忘れていた」

「…え、えっ!?ななな人前で何をっ…!」

「愛している」


人前でキスされた事に驚きながら後退りすると腕を引き寄せられ、耳元で愛を囁かれた。
周りから冷やかす様な、絶叫のような声が聞こえるけどそれさえ押し退けて私の思考を義勇さんが占領する。


「わ、私も…義勇さんの事愛してますっ!」

「あぁ」


ねぇ、あの頃の私。
今私はとっても幸せだよ。

片思いしてる時、こんな未来なんて想像なんかしてなかったよね。
ただ冨岡先生に振り向いてほしいって、少しでいいから一緒の時間を過ごしたいって必死になってた。

たまに挫けそうになって泣いた。
でも全部あの時行動したおかげで今があると思うの。

義勇さんを好きになって辛い事も、楽しい事もあった。
付き合ってからだってなかなか会えない日々に苦しいと思う事もあった。
だけど、今という現実が全て意味のあるものだったんだよね。


「義勇さん、私とっても幸せです!」


高校生の私も、今の私も、義勇さんという存在があったからこそこうして幸せを感じる事が出来てる。
これからも、よろしくお願いしますね。

恥ずかしすぎて言葉にできない分、たくさんの思いを込めて義勇さんの唇にキスをした。



おわり。

一萬打なので、遅くなりましたがせんせいの続編でプロポーズ義勇さん。
ある程度は集合させたはず!笑
ありがとうございました!

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