「名前…かわいい」
京が優しく微笑んできた。やっぱり可愛いって言葉はあたしに合わない気がしてムッとしたら京がそれを察したらしく、あたしの頭を撫でながら笑う。
「ふふ、嫌そう」
「だって、可愛くねーだろ」
「そんなことないよ。名前は可愛い。自分じゃあ分からないんだ」
触れる手が熱くてドキッとした。可愛い、とか言うなら、手ぇ出して来いよ。じっと京を見つめたけど優しく笑いながら首を傾げるだけ。
「なぁ、シよ」
自分から京の首に腕回して唇を近付けようとしたら京が慌ててあたしの体を押し返した。
「ち、ちょっと待って」
「何だよ、シねえの?」
「もう、ストレートすぎるだろ…」
「いや?」
「嫌じゃないけど、そんなに急がないでも、な」
京が視線を泳がせる。もしかしてシたくねえのか?急がないでもって、どういうこと?京はいつもあたしにえろいこと求めてこなくて、そんなの分かってたけど、恋人じゃなかったからシなかっただけじゃねえのか?性欲がない…とか?
「もしかして…勃たねえとか?」
「え?」
いやそれはないか。こないだフェラしてやったときは勃ってたし。じゃあ何だよ、と京を睨むと、京は居心地が悪そうに笑って見せた。
「ちゃんと告白させて、それまで待ってよ」
京は前髪を掻き上げて姿勢を正すと、あたしに向き直って真剣な表情をする。こういう誠実そうな顔するくせに風俗は来るんだよなあ。
「名前」
「はい」
「ずっと前から好きでした。俺で良ければ…付き合ってください」
中学生か。思わず突っ込みたくなるテンプレートに笑いたかったけど、京の膝の上で握られていた拳が力が入って真っ白になってて飲み込んだ。冗談じゃなくて、京は本当にこういう奴なんだ。その瞬間、胸がぎゅうっと締め付けられて、あたし京のこと好きなんじゃんって自覚できた。
「はいはい付き合ってやるよ」
照れ隠しに京の胸をトンと叩くと、京は嬉しそうにはにかんだ。いつも以上に優しい手付きであたしの髪を撫でる。
「嬉しい……本当にありがとう。夢みたいだ」
「大袈裟なやつだな…」
「大袈裟じゃないよ、ずっと好きだったんだから」
京はあたしを抱き寄せるけどなかなか先に進もうとしない。焦れったくなって京のシャツのボタンを外す。
「なあ…シねぇの?」
唇を尖らせると京の喉がごくっと鳴った。ほんと童貞みたいな反応しやがって、恥ずかしいやつ。キス上手かったしマジで童貞なわけないだろうけど、京に余裕がないことはバレバレだ。
「シねぇのってば」
ボタンを外した隙間から指を入れて乳首を優しく撫でると、京がぴくっと眉を動かす。
「誘惑が上手だな名前は」
「だろ?その誘惑に乗っちゃえよ」
「名前…」
「それともあたしのこと子供扱いしてんの?京はこんなお子ちゃまには欲情しねえか」
「ち、ちがう!」
京があたしの肩をがしっと掴む。
「そんなに煽るなよ…俺余裕ないんだから…」
「はは、知ってる」
「年上からかって楽しんでるのか?俺名前のこと子供なんて思ったことないよ、我慢するの限界…」
「我慢しないでいーんだよ」
あたしが京に口づけると、ぷつんと京にスイッチが入ったようにあたしを押さえ付ける。ちょっと乱暴だけど前と違って恐怖とかはなかった。舌で唇を割られて中の粘膜を掻き乱す。熱を溶かし合うように舌を絡めて、京はあたしの服を脱がせてきた。うーん、やっぱり慣れてはいそうだな。
「名前…っ」
京が切羽詰まったようにあたしを呼ぶ。大丈夫だって意味を込めて笑って見せると、京はもう一度キスをしてから下着を脱がせてきた。丁寧な手付きなのにどこか手慣れていて、何となく面白くない。他のどの女より京を気持ちよくしてやりたい。京はあたしの胸をやわやわと揉むと、先端に舌を這わす。唾液を塗り広げるように舐めていたかと思えば今度は先で遊ぶように細やかな刺激をしてきた。もう片方の乳首も指で弾き、ぴくっと体が反応する。
「は、ぁ…」
かっこわるいからあんま声は出したくない。眉を歪めると京は一層舌を動かした。指で少し強めに摘ままれるのに反対は舌で優しく嬲られて、少しだけ焦れる。どうせなら噛んでほしい、なんてマゾっぽいこと言えないけど、刺激が足りねえんだよ。
「け、い…」
名前を呼んでも京は顔を上げない。視線だけこっちに寄越して上目遣いのまま胸を舐める。目が合ってちょっとだけドキッとすると、京はその瞬間に乳首に前歯を立てた。
「っあ、ぅ」
びくっと大袈裟に体が跳ねて声が漏れる。京がにやって笑った。こいつ、今まで焦らして反応窺ってたのか、あたしの表情から欲しがってんのを察したのか、とにかく慣れすぎだろ。何だかだんだん腹が立ってくる。あたしにばっかり恥ずかしい声を出させるのは不平等だし、あたしはあんたを初めて見たときから喘がせたいと思ってたんだからな、と謎の対抗心で睨み付けた。京はまだあたしの乳首を甘噛みしながらあたしを見詰めてくる。
「けい、ま、て…っぁ、ん」
「ん?」
「あっぁ、ん、ま、まてって…っ」
「どうしたの」
声が我慢できなくなってきたのが悔しくて京の腕を掴むと、京が心配そうにあたしにキスをする。それから大きな手であたしの頭を撫でた。
「ごめんね、怖かった?ゆっくりしてるつもりだけど…」
「別に怖くねえよ、けどずりぃだろうが」
「ずるい?」
「あたしにも、させろよ」
ムッと唇を尖らせると京は一瞬きょとんとした顔をしてから笑い出す。あたしは大真面目なのに何笑ってんだよ。撫でる手が離れていった。
「ふふ、名前にはこないだしてもらっただろ」
「あれよりもっとすげえことする…」
「すごい気持ちよかったのに、まだ上があるの?妬けるな」
「は?」
「今までの名前の男に、妬ける」
はあ!?こっちだって妬けてるっつーの!
言う前に唇を塞がれて舐められる。キスであたしの動きを封じながら、京の手はあたしの内腿をやらしくなぞった。もうじんわり濡れている下着の上を指で触れ、何度か往復をして突起を探す。中指がそこに触れると布越しにくりくり嬲られた。
「んっ、んん……っ」
京の唇が離れたら絶対声が漏れるから必死に舌を絡めた。京は宥めるように唇を押し付けつつ指先は小刻みにわたしを攻める。どんどん固くしこってくる突起を弾いて愛撫され続けると下着がびちゃびちゃになっていった。シーツまで濡れてるかもしんね。
「っ…は、名前」
「やあっあ、あ、ぁう…っ」
なんで、唇離すんだよお。京は顔を離してあたしを見つめるけど、そんな、目細めて嬉しそうにすんなよ、見んなよ、くそ、恥ずかしい。京の指に感じまくって足はぱくんと閉じたまま、指先だけで転がされてこんなに声出てバカみてえ。悔しいからふいって顔そらしたら京が少し笑って、あたしの下着に指を引っ掛ける。
「もう遅いだろうけど、汚れちゃうから脱いじゃおうか」
京が器用にあたしの腰を浮かせて下着をずり下ろすと、確かに手遅れなようで下着の中はとろとろになってた。糸引いてんのがさらに恥ずかしい。京があたしの頭を撫でて軽くキスをして、また内腿に手を滑らせる。
「足開いて」
「…う」
今までのセックスは特に恥じらいなく進んだのに、何でこんなにドキドキするんだよ。京がひとの顔じろじろ見るから、幸せそうに笑うから、あたしの頭をいちいち撫でるから、心臓うるせえんだよ!
「ゆっくりするから…」
京はあたしの足を少し強引に開かせると、その間に顔を埋める。さっき散々指で弄られて腫れ上がったそこに舌先をくっつけて、ちろちろ動かし出した。
「っあ、ん…」
慌てて口を塞ぐと京はちょっと拗ねたように視線を投げてきたけど舌は止めない。ちろちろ、ねろねろ、唾液を絡ませて舌先を遊ばせる。尖らせたそれがぬるついてて熱くて、すげえ気持ちいい。頭ん中沸騰しそうになって声が我慢できなくなる。
「ん…んん…っ、んあっ、や、けい…っ!」
「ん、きもちいの?」
「うる、せ、ぁんっ、あ…っ」
一定のリズムで刺激されて、舌遣いも上手い。たまに垂れる汁を啜って音を出し、また突起を舐められる。そんなに舐められたら溶けちゃいそうで腰が逃げるのに京は足を固定させてさらに顔を埋めてくるから逃げられない。ずる、ぢゅるる、ごく、と音が響き、あたしの声も負けないくらいうるさくて、何かもう頭白くなりそう。
「ひくひくしてる…名前のここ可愛い」
京はそう言って中指を舐めると、濡れた中指を膣口に押し当てた。すぐ入れればいいのに何度も入り口を撫でて、この状況で入れられたらやばいって気持ちと早く入れてイかせろって気持ちが混ざる。焦らしてんじゃねえよ。
「け、けえ…、っ」
切羽詰まって京の名前を呼ぶと、京はにっこり笑ってから中指をゆっくり差し込んだ。肉が開かれて膣内に埋まる京の指。入れてすぐにGスポットを押し上げる。
「ここ欲しかった?」
「は、あぁん…っ!」
ちげえ、って言う前に指を曲げられた。こりんこりんって何度も押し上げてきて揺さぶられる度に喉が引きつって小さく悲鳴が出る。何だよ、何でこんなにうめえんだよお。
「だめぇっ、あん、そ、それ、ぇ」
「ここすごいコリコリしてる……でも奥の方がもっと固くなってるかな」
何のこと言ってんのか分からなくてふるふる首を振ると、京はひとを子供扱いしてるみたいに左手で頭を撫でながら右手で器用に膣内を攻めた。
「よしよし、やわらかくなぁれ、ぐずぐずになぁれ」
「あ、んぁっ、てめ、ぇ、っふ、ざけ、…っあん!あっ!」
「もっと締め付けてきた。全然柔らかくならないね、名前」
隆起してくるGスポットを転がすようにつついて絶対楽しんでる京が憎たらしい。挿入のために適当に解すんじゃなくてこんなに丹念にここを触られたことはなかなかなくて、自分が自分じゃないみたいに喘ぎ狂った。もうさっさと終われよ、バカ。
「けいっ、け、あん、それぇっあっも、いいから、あん…っ、あっ」
「いいから?」
「はやくいれ、ろお…っ」
京ににまぁって笑いながら指を引き抜いた。気泡を含み真っ白に糸が引く汁。透明じゃない、本気汁じゃん。
「名前、ここはお店だよ。本番はだめなんじゃないの?」
「か、かんけいねぇよ…っ、はやくそれ、いれたいんだろ、はやく、っ」
「ふふ、可愛い。本当に可愛いなあ名前は」
京があたしを抱き寄せる。
「ねえ、入れたがってるのは俺だけなの?」
「あ、あたしも、っ、はやくほし…、」
言い終わらないうちにぐちゅんと京が入ってくる。前にも思ったけどすっげえデカい。内臓が持ち上がるように押し上げられ、思わず喉を反らした。
「子宮下ろしちゃって…奥まで入れさせてくれないの?」
「は、あ…?」
京が笑うから結合部を見てみると、京のはまだまだ根本まで入ってない。でも間違いなく奥まで届いてる。まさかこれ以上入れるつもりじゃ、ないよな。
「けい、っ、」
焦って体を起こそうとしたらトンっと押し倒されて、京に膝裏に手を回される。
「まて、まてよっ、ちょっ、あ、うそっ、うそうそあぁあっ…あっ!」
京はあたしの声をガン無視で無理に挿入してきた。中はこれ以上なくどろどろだから痛くはないけど子宮が無理矢理持ち上げられて奥がじんじんした。すっげえ熱い、やばい。
「やっぱりこっちも固いね、解してあげる」
ごりっ、と子宮口が潰れるような音がして、ぼろぼろ涙が溢れた。何だよお、こんなの、知らねえよお。京のがデカすぎて奥が気持ちよくて、ごりごり入り口擦られて、やばい、死ぬかもしんね。腰を動かされる度に電気が走るみてえに体がびくびく浮いて、京にしがみついて必死に耐えた。京の腰はゆっくりだけど一定に動いてる。
「俺の先がこりこりしてるところ分かる?ここ揺らされるとちゃんと膣イキできるんだよ」
「ひっ、しらね、あ、あんっ、あ…っやめ、やあ…っ!」
「って、名前はもう知ってるかな」
知らねえって言ってんのにふざけんな、揺らすなって!確かに何回もヤッてるし慣れてはいるけど、こうやって時間かけて子宮攻めてくるやつなんか今までいなかった。入れたら出して、入れたら出しての繰り返しがセックスじゃねえのかよ。こんな、入れっぱなしのまま揺すられるなんて、それがこんなにきもちいなんて、あたしが知るわけねえだろ。
「あっ、やぁああっ、ぬ、けよお…っ!や、もうむりっ!」
「無理じゃないよ、名前」
「むりっ!むりやだっ、やっあっあ、あ〜…っ、あっ、あぁあ、っ」
「俺のこと感じさせてくれるんじゃなかったの?」
京は尚も揺さぶりながら楽しそうに聞いてくる。こいつ、こんな綺麗な顔してとんでもないサドじゃん。あたしだってこいつのことあんあん言わせて褒めちぎられる予定だったんだよ、こんなはずじゃなくて、なのに、何でこんな感じちゃうんだよお。京の先端が子宮口に入りそう。
「はぁ…っ、名前、可愛い」
「やめ、ろ、ばかばかっ、それぇっばかっ、むりだって、ぇ、ああ…っ!」
「名前も俺の名前呼んで…」
「あっあんっあぁあ、あ、あ、ああぁっあっ」
「名前」
名前なんか呼んでる余裕もないのに京があたしのほっぺたを両手で包んで無理矢理目を合わせてきた。獣みたいに喘ぎ狂ってんのが恥ずかしいのに目合わせられて、くそ、もうどうにでもなれ。
「けいっ、けい…っ、あっ、あぁっけいっ、け、い…っ」
「っ…はぁ、好き、名前可愛いよ…」
「あんっ、やっもうむりっ、あん…っ、けい、っ」
「あー…、出そう、名前、すっげ気持ちいいよ…、ん、出す、よ」
腰をくんっくんって突き出されて子宮が持ち上がり、かと思えば京は勢いよく膣からそれを抜いてあたしの腹の上に精子を吐き出した。ぱたたっ、と掛けられる熱い汁にぐったり体の力を抜く。
「名前可愛い…、最後イキまくってたでしょ」
「っ、わかって、たのかよ…」
「うん、中きゅうきゅう締めてくるのが可愛くて。素直に言えば待ってあげたのに」
「むりって、いっただろ」
「もっと可愛く言ってくれなきゃ待たないよ」
京はあたしの隣に寝転んでおでこにキスをすると、ティッシュで精子を拭いてくれた。その後ゆっくり頭を撫でられる。
「なぁ、そういやあんた、ずっと前から好きだったって言ってなかった?」
「名前は俺達の出会い、覚えてない?」
「え?」
出会いって、店でだろ、と首を傾げると、京は小さく笑ってまた頭を撫でてくる。ほんとに撫でるのが好きなやつだ。
「だと思った。気にしてないからいいよ、俺だけが覚えてればそれでいい」
「な、何だよ、どっかで会ったことあるのか?」
「うん、それもつい最近のことじゃないよ。だから、ずっと前から好きだったんだ」
京は幸せそうに笑う。あたしに忘れられてんのに何でこんな風に笑えるんだよ。
「なぁ京、さみしくねぇの…」
あたしが言うことじゃねえけど何となく口から出てきた。京は、うーん、と視線を外すけどすぐに笑顔を見せる。
「少しは寂しいけど、今こうしていられるだけで俺はすごい幸せだから構わないよ。俺のことはこれから知っていってくれたらいいし、俺の知らない名前もこれから少しずつ教えてほしい」
「京…」
「ふふ、名前がここで働き始めたって知ったときはさすがに焦ったけどね。こういう形だけど名前と話せるようになって本当に良かった」
京が本当に嬉しそうに笑うから思わず目頭熱くなる。変なやつだって最初から思ってるけど、マジで変なやつだなこいつ。
「京、あたしあんたのことまだまだ知らないけど、これからちゃんと知ってく。何でも話せよな」
「うん、こちらこそ」
京は今までで一番とびきり優しく微笑んであたしの頭を撫でた。
HAPPY END
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この後めでたくお店を卒業しました。名前様、お付き合いありがとうございました。
20161101
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