「あの、ぼく、お願いがあるんだけど」

知らない番号から電話がかかってきたと思って恐る恐る出てみた名前ちゃんですが、声を聞いてびっくりです。

「た、かはしさん?」
「うん、そうだよ」
「何で番号知ってるんですか?」
「え?だって名前ちゃんの番号だもん」
「…」

答えになってないし、と名前ちゃんは呟きます。高橋さんのストーカーっぷりは相変わらずです。名前ちゃんはため息をつき、話題を変えようとしました。

「まぁいいです。お願いって何ですか?」

名前ちゃんはじんわり手汗をかきました。あの高橋さんの要求ですから、どんなものなのか予想がつきません。

「あの、ね。名前ちゃん、僕のこと高橋さんって呼ぶでしょ?あの、だから、名前で呼んでほしい、な」
「名前?」
「そう、名前」

高橋さんはごくりと喉を鳴らしました。高橋さんから名前を言ったことはありません。名前ちゃんは高橋さんの名前を知っているでしょうか。暫く間があいて、名前ちゃんはふわりと笑いました。

「いいですよ、浩汰さん」
「っ、」

高橋さんはぶわわわっと顔が熱くなるのを感じました。大好きで大好きで仕方なかった名前ちゃんに名前を呼ばれたのです、もう死んでもいいと思いました。

「名前ちゃん…っ」

でも冷静になればやっぱり死にたくありません。あんなに可愛くて天使な名前ちゃんと付き合い始めたのですから、幸せなのはこれからです。高橋さんは欲が出てきてしまいました。

「あのさぁ、もういっこお願いしても、いいかなぁ?」
「何でしょう?」
「えっと…、敬語、じゃなくて、いいから」

高橋さんは弱々しく言いました。敬語の名前ちゃんももちろん可愛いのですが、カレカノとしては壁を感じます。

「え、と…うん、分かった」

すると名前ちゃんも弱々しい声で返事をしました。初めて聞いた声に高橋さんは興奮気味です。可愛い可愛い可愛い可愛い。口元を手で押さえてじたばたしました。でも次の名前ちゃんの言葉で高橋さんは思わず手を離してしまいます。

「じゃあ、私からもお願いがある」
「え」
「僕っていうのやめて。私以外の人には俺って言ってるなら、…そっちがいい」
「そ、れは、」
「あと、名前ちゃんっていうのも。呼び捨てがいい」
「なっなななんなん、なんっ」
「…だめ?」

こてんと名前ちゃんが首を傾げると高橋さんはうわあっと声を上げました。

「く、くびっすごく白くて、かわっ」
「…どっから見てるの」
「えっあっ、ごめっ」

窓なんか近くにありませんし、名前ちゃんは眉を顰めます。高橋さんが慌てて謝ると名前ちゃんはため息をつきました。

「まぁいいや、それも今さらだし」
「え、あの、」
「とにかく、俺っていうのと名前っていうの、いい?」

名前ちゃんがそう言うと高橋さんはグッと詰まりました。

「お、おれ、名前ちゃんと話してると緊張しちゃって、上手く言えるか分かんないけど、おれって言えるように、頑張る、けど」

名前ちゃんは、緊張すると僕って言っちゃうんだ、と心の中で呟きます。高橋さんは言葉を繋げます。

「あ、あの、名前ちゃんのこと、呼び捨てになんか、あの、っ」
「…」
「えっえっと、だから、名前、ちゃん、」
「何で」
「え」

名前ちゃんの声は拗ねていました。高橋さんはどきっと心臓を跳ねさせます。こんな可愛い声も初めて、俺幸せものだ。高橋さんは口元を緩ませました。

「何で呼び捨てできないの?呼び捨てがいい」
「え、で、でも」
「何で」
「だ、からね、名前ちゃんのこと、呼び捨てになんか、しちゃだめ、だし」
「私は呼び捨てのがいいの」
「名前、ちゃ…」

高橋さんは緩ませていた口元をきゅっと引き締め、完全に困ってしまいます。大好きすぎてなかなか呼び捨てになんかできないのに、名前ちゃんはどんどん怒ってしまいます。高橋さんはあわあわしました。どうしようどうしよう名前ちゃんに嫌われちゃうどうしよう。高橋さんは乾いた唇を舐めました。

「あ、あの…ああああの、あの、えっと…、だから、その…、…名前…っ」

高橋さんは震えた声でぼそり。名前ちゃんはぱあっと笑顔になります。

「ありが、」
「うわああっえっえがおっかわいいっ」
「…どっから見てるの」
「えっあ、」

まぁいいや、と名前ちゃんは呟きます。あとで番号登録しておこう。そんなことを考えながら、名前ちゃんはまた小さく笑いました。

END
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主人公の部屋にはカメラが隠されているんでしょうね。気持ち悪い高橋さんを書けたかと思います。名前様、お付き合いありがとうございました。
20121020
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