一目惚れだった。
マネジメント事務所に所属していると分かってからは話は早くて、早速あいつを指名。事務所からは指名は無理だしあいつはまだ新人だからと断られたけど、あいつがマネージャーじゃなきゃ芸能界やめてやると言い切ったらあっさり担当にしてくれた。俺の稼ぎがでかいのも分かってるし、新人高校生アイドルとはいえもう国民的支持があるから辞めさせるには惜しかったんだと思う。顔合わせ初日に俺にでれでれしてくれたあいつは本当に可愛くて、俺の顔が好きなんだな、早いうちに落としてやろうなんて企んでた。

なのに。

何ヵ月経ってもあいつは一向に俺に落ちなくて、それどころかあっさりかわされる。そりゃあ俺まだ高校生だし?恋愛対象に入りにくいってのは分かる、でもあんた俺の顔好きなんだろ?全然振り向かないあいつに苛々しまくり。俺の仕事のために必死に営業して一生懸命俺の世話をするあいつが健気でますます好きになるっつーのに、何で振り向かねえんだよ!
もうヤケクソになってほぼレイプみたいなことして嫌われようとしてみたらベッドの中でも最高に可愛くて後戻りできないところまで惚れ込んだ。し、あいつはあいつで俺を叱らなかった。そこそこ遊んできたから気持ち良くはしてやれたと思ってたけど、ここまで否定されないと本当に恋愛対象に入れてもらってないんだと痛感する。犬に舐められてるようなもんってのかよ。

最近は酒井とかいうあいつと同世代のおっさんも出てきてかなり厄介。酒井は完全にあいつを口説こうとしてるしあいつも満更でもなさそうに笑って話してるしマジむかつく。現場が何度かかぶったくらいで仲良くなってんじゃねえよ!
苛々しまくった末、2度3度とレイプを重ねてく。最低。好きになるかいっそ嫌うかしてくれたら俺は救われるのに、そうだよなあ、あんた“結兎”が大好きだもんなあ。アイドルの俺には分かりやすくドキドキしてくれるくせに“結斗”である俺にその顔は見せてくれない。楽屋でも“結兎”でいた方があんたが嬉しそうだからしてやるけど、あんたに惚れてほしいのは“結斗”だっての!これが言えたら苦労はしない。


そして4度目のレイプの後、罪悪感で死にたくなった。今日に至っては嫉妬丸出しでしちまったし、ぜってえ気付かれたし、これでも何のアクションもなかったらマジでキツい。気持ち良さそうに吐息を漏らすこいつを見て、あー、何もなさそうだな、なんて弱気になった。呼吸が落ち着かないまま、ゆいとくん、と話し掛けられる。どうしようか迷ったけど、今ここで“結兎”にならないといよいよ嫌われると思った。

「ん?」

小首を傾げて愛想笑いを向けると、あいつも口元を緩ませる。やっぱり“結兎”にはそんな顔するんだな。

「明日は朝から、撮影だけど、起きられるの?」
「…」
「…結兎くん?」

レイプしたこと叱るどころか、もう仕事の話。ほんとに何とも思われてねえよ俺。

「…大丈夫だよ。俺朝強いし、名前さんに迷惑かけないようにするから」

はい嘘、全然朝強くない、いつも目覚まし5個かけてる。でも遅刻したらこいつに迷惑かかるし、こっちだっていつも死ぬ気で起きてんだよ。あんた俺の苦労知らねえだろ、俺がどんだけ好きか、知らねえだろ。言う度胸もないくせに勝手に苛々する。

「名前さん、お風呂入ろう。俺お湯溜めてくるから」

逃げる口実をつけると「うん、じゃあお願いします」と笑う。もういい、可愛いけど、今“結兎”に向けられる笑顔は見たくない。さっさと部屋を出てって風呂場のドア軽く殴る。くそ。どうやったら俺のこと好きんなるんだよ、どうやったら俺のこと、嫌いになってくれんだよ。

「…なぁんて」

自嘲じみた笑い声が喉の奥から出てくる。嫌われたくなくて咄嗟に“結兎”を演じたくせに、俺から“結兎”にすがったくせに、嫌われたい?“結斗”として見てほしい?都合が良すぎるだろ。びびって何もできねえくせに無意味にあいつだけ傷つけて、俺は何してんだろうなあ。

「くそ…っ、好きだ…」

風呂場に反響するこの言葉を、あいつに直接告げられたら、いっそ楽になるのかな。
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