「んっ…ふ、」

ふたりはキスが好きでした。お互い相手を大切に思うあまりちゅっちゅと可愛らしいキスしかしたことがありませんでしたが、それでも名前ちゃんは満足していました。アキくんは何度も何度もキスを重ね、本当に名前ちゃんを大事にするように丁寧に名前ちゃんの髪を撫でながらいつも触れるだけのキスをするのです。アキくんはきっとキスが大好きで、ふたりきりになるとすぐにキスをするのですが、そんなアキくんのことを名前ちゃんは大好きなのでしょう、拒む理由もなく受け入れて応えるようにアキくんに抱きつきます。この時間がふたりにとって最も幸せな一時なのです。

「ん…、ちぅ」

唇を吸い付けるようにリップ音を残すアキくんに名前ちゃんはどうやってるんだろうとぼんやり考えます。わたしもあんな音、出してみたい。名前ちゃんは口を尖らせ、アキくんの唇を食むようにキスをしてみました。が、無音。あんなに綺麗なリップ音は出せません。むむむむ、アキくんずるい。名前ちゃんは眉をひそめ、今度は吸い上げるようにキスです。んぢゅ、と鈍く響き、全く可愛らしくない様子。アキくんはそんな名前ちゃんを眺め、一旦唇を離しました。

「名前、どうしたの、いつもと違うのしたいの?」
「うんと、どうやったらえっちなキスできるのかなあって思って」
「ふうん」

名前ちゃんはえっちなリップ音を出したい、そんな意味合いで言ったのですが、それを聞いたアキくんは目を細め、名前ちゃんの頭をなでなでしました。

「名前がいいなら、する」
「え?なにが、」
「ちゃんと、鼻で息しなよ?」

アキくんはそう言うと、頭を撫でていた手を名前ちゃんの頬に滑らし、顎をそっと持ち上げると、幾分か緊張した様子で名前ちゃんに近づいてきます。

「アキくん…、ん、」

ちゅうっ。やはりアキくんのリップ音はずるいです。名前ちゃんはアキくんの唇を羨ましく思いました。わたしだって、アキくんをえっちな気分にさせたいのに。そう思った次の瞬間です。

「ん、う…!?」

ぬるり、とこれまで感じたことのない感触が唇に走りました。熱っぽいそれはやや強引に名前ちゃんの唇を割って入り、同じく熱っぽい名前ちゃんの舌に絡まります。名前ちゃんはびっくりして目を見開きましたが、アキくんはうっすら目を開けて名前ちゃんの顎を持ちながら色っぽい表情をしているだけです。肌も少し紅潮していて、こんな色気のあるアキくん、見たことありません。

「ん…っんん、ん、ふ…!」

口内をゆっくりなぶられ、歯列をなぞられ、舌の裏までしっかりと舐め取られます。アキくんと名前ちゃんの唾液が混じり合い、時折アキくんがそれをぢゅくっと吸い上げるのも色っぽいですね。何より名前ちゃんは初めての感触に動揺しきっています。こんなえっちなアキくん知らないよう。名前ちゃんは必死にアキくんにしがみつく他ありません。アキくんの舌は名前ちゃんの舌先をちろちろと遊び、名前ちゃんは気持ち良さにますます怯えます。

「んんっんっ、は、ん…っ」

だめ、アキくん、かっこよすぎ。名前ちゃんはくらあ、と身体から力が抜けていくのが分かりました。もっと、もっとして、アキくん。名前ちゃんはスッと目を閉じ、アキくんはというと、何故か舌を抜いてしまいます。

「っぷは!…は、どうし、たの、アキくん…?」
「ん、色っぽくて良かった。でも、名前は、おばかだね」

アキくんは申し訳なさそうに名前ちゃんの頭をゆっくり撫でました。力の入らなくなった名前ちゃんの身体をゆっくり横にし、自分も隣に寝転びながら、なおも名前ちゃんの頭を撫で続けます。

「ちゃんと鼻から息してって、言ったでしょ?」

そういえば名前ちゃんの息はとても上がっていました。名前ちゃんは恥ずかしくなり、ごめん、と弱々しく呟くと、アキくんの服をぎゅうっと摘まみます。

「全く…、可愛いね、名前は」

アキくんはフッと笑みをこぼすと、名前ちゃんの息が整うまで、ずっと温かい手で名前ちゃんの頭を撫でていました。

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お久しぶりです。リハビリに思いつきで書きなぐりました。
20140611
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