最近は2人でいる時間が長くなってきたので1人になるとちょっとだけ寂しいと名前ちゃんは思うようになりました。さっきまで一緒に夕飯を食べていたのに、今ではこんなに部屋が静かなのです。その寂しさを紛らわせるように名前ちゃんはお勉強をしていましたが、やはりなんだかそわそわしてしまいます。

(喉渇いた、何か飲もう…)

シャーペンをノートの上に放り投げ、冷蔵庫までとてとてと歩いていきます。いつもよりしょんぼりした背中が切ないです。冷蔵庫を開けるとミネラルウォーターしか入っていなかったのでそれを飲みます。こくん。喉を潤すだけなのに、ぼーっとしていたらごくごくといっぱい飲んでしまっています。

(浩汰今何してんのかなぁ…)

ごくん、ごくん。ぼーっとしていると自然と高橋さんの顔が思い浮かべられます。照れ臭そうにいつも可愛くはにかんでいて、名前ちゃんの心を鷲掴みです。

(って、何で私あんなやつのこと考えてるの!)

心の中で自分でツッコミを入れると、思わずむせてしまいました。私何でこんなに水飲んでるの、と冷静に思います。何だか今日は自分が変だと名前ちゃんは感じました。どうしちゃったんだろう、あんな変態のこと思い出してどきどきするなんて。名前ちゃんはミネラルウォーターを冷蔵庫に戻し、またお勉強を再開することにしました。
カリカリカリカリ。ノートに数式を書き込みながらも何だか心はどこかへ行っているようです。名前ちゃんはぼーっとしながら、ついにシャーペンの動きを止めました。

「はぁ…」

集中できない。名前ちゃんは携帯を手に取ります。パカッと開くと新着メールが3件。でもどれも高橋さんからではありません。名前ちゃんはムカついて胡座をかきました。カチカチとメールの返信をして足元に携帯を置きます。それから机に突っ伏し、もう1度ため息をついてからノートに「こうた」と書いてみます。その後に可愛らしくハートなんか書いてみて、恥ずかしくなって名前ごと塗り潰し、黒く汚くなったノートを眺めます。

(何やってんだろわたし…)

名前ちゃんはぼんやりそんなことを思いながら汚くなったノートを消しゴムで綺麗にし、またシャーペンを握ります。苛々して「だいきらい」と書きなぐると、自分で書いたことなのに何だか落ち込んで、シャーペンを投げ捨てました。

「はぁ…」

本日3度目のため息です。それと同時に、ヴヴヴヴッと携帯のバイブが鳴りました。胡座をかいていたのでちょうど股間のあたりで鳴ってしまいました。びっくりしたのか、いいところに当たったのかは分かりませんが、名前ちゃんは短く「んっ」と声を漏らしてしまい、その声に自己嫌悪に陥りながら携帯を開きます。そこにはずっと待っていた高橋さんの名前が。口元が緩みました。

「もしもし」
「もしもし」
「何の用?」
「今何考えてたの?」
「はあ?」
「俺の電話待ってた?」

電話に出るとあちらの声は明らかに弾んでいてご機嫌だということが分かりました。名前ちゃんは何だか悔しくなってきます。

「別に待ってないけど」
「ふーん?」
「何よ」
「いや、俺の名前書いてたように見えたんだけどな」
「…どっから見てるの」

今さらな話ですが、高橋さんは変態です。名前ちゃんの部屋にはいくつもカメラが設置してあるのです。名前ちゃんは事実を言われて少し恥ずかしくなります。

「俺のこと思い出してたの?それとも俺との妄想してた?えっちなこと考えてたの?」
「何でそうなるの」
「だって、えっちな声出してたじゃん」
「…」

バイブが鳴ったときのことでしょうか。名前ちゃんはますます恥ずかしくなって苛つきます。

「うっさいな」
「かわいい、名前かわいいよ、すげえかわいい…はぁ、名前…」
「う、うるさい…っ」

名前ちゃんが怒っているのに高橋さんはうっとりしていました。名前ちゃんの顔はどんどん赤くなっていきます。名前ちゃんは顔を見られるのが嫌で下を向いてしまいました。

「水飲んでむせちゃうのも可愛かったし、勉強してるのも可愛かったし、俺から連絡来なくていらいらしてるのも可愛かったし、だいきらいって書いといて電話きた瞬間幸せそうに笑ったのも可愛かった。でも今真っ赤になってる顔はもっともっとかわいい。ね、見せて?顔あげて?おれ見たい、名前のかわいい顔見たい」
「うるさい、ってば…」
「お願い、…はぁ、見たいよ名前、すき、だいすき、はぁっ、かわいいよ名前、かわいい、ね、見せて?」

高橋さんは興奮しているようでした。名前ちゃんは恥ずかしくて俯いたままいやいや首を振ります。どこから見られているのか分からなくてますます恥ずかしいのです。

「ねぇ名前、かわいいよ、すげえすき、はぁ、かわいい…見たい、はぁ、ねぇ、名前、見たいよ」

高橋さんは息を切らせて大興奮状態ですね。名前ちゃんは心底気持ち悪いと思いました。やっぱり変態だし気持ち悪いしいいとこない彼氏。そう思うのに名前ちゃんは幸せでした。自分に興奮してくれているのだと嬉しくなっているようです。どきどきしながら名前ちゃんはちょっとだけ顔を上げました。

「ほんとうるさいなぁ…っ」
「っ、うわあ、すげ、かわいい…っね、名前、すげえかわいいよ、はぁっ、俺、まじですきっ名前すきっ…はぁ、すきだよ、すき…」
「黙りなさいっ」

名前ちゃんは恥ずかしくて涙目です。そんなの高橋さんをますます煽るだけなのに、うるうるした目で赤面し、そわそわ落ち着かない様子。

「わ、私ばっかり、ずるいよ…っ、う、」
「名前!?」
「もう、やだぁ…っ」

名前ちゃんはついに目を擦りました。やばい、泣かせちゃったかも。高橋さんはぎくりとします。どう言って泣き止ませようか頭の中でぐるぐる考えていたら、名前ちゃんは言いました。

「こうたぁ、こっちきてよぉ…っ」
「っ、」

高橋さんはごくりと喉を鳴らし、電話を切らないまま自分の部屋を走って出ていきました。

END
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うをおおおおおおおおおおおお名前かわいいよぉおおおおおおおおおおおおおおおと乗り込んでいった高橋さんが想像できます。名前様、お付き合いありがとうございました。
20121025
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