「結斗くん、すきだよ」
「えっ」

突然楽屋で告げられた言葉に俺は大きく反応してそちらを振り返る。恥ずかしそうに視線を逸らしながら自分の髪を触っている名前。は?こいつ、なに?今何つった?

「名前さん、」
「ご、ごめんね、急に。今日の撮影見てたらもう我慢できなくなっちゃって…。わたし、実は少し前から、結斗くんのこと、」
「ちょっと待って」

は?なに?頭が追い付かない。
俺の方が、ずっと、ずっと前から好きだった。俺の方があんたのこと好きだよ。こんなこと女に言わせるのは卑怯に思えて、頭が回ってないままに名前の肩を掴む。

「俺、名前さんのこと、」






ピピピピピピピピピピ
煩いくらいの派手な音に思わず眉間に皺を寄せる。何だよ、黙れ。条件反射で手を伸ばすと、いつも通りの場所でいつものボタンが押せてしまった。ぱち。押せば音は止まる。そんなことわかってる。わかってるんだけど。

「……、は?」

夢かよ!
顔を上げれば布団にくるまってる俺。やっぱり夢だった、最悪。ここは楽屋じゃないし目の前にあいつもいない。本当に最悪。俺の方がずっと好きだよ、なんて何はしゃいでんだよ、バカか、俺の方がどころかずっと俺の片想いだっつーの。

「いよいよ夢で自分を慰めようとしてんのか…?はぁー…」

情けなくてため息出る。苛々してたら別の場所から目覚ましが鳴り出した。頭に響いてうるせえ。力任せにぶん殴って音を止めて、再度ため息。あーあ、幸せだったのにな。

「つか今何時…」

パッとスマホを開くと画面が明るすぎて思わず目を瞑った。眩しい。目が潰れる。何度か瞬きを繰り返して画面に向き直ると、時刻は5時17分だった。二度寝かましてえ…。朝が苦手なくせに今日は早朝撮影入れちゃってるからそれも叶わず、小さく舌打ち。と、そこに、ポンッと通知が来る。

『結兎くん、おはようございます。もう起きてるかな?6時ぴったりにお迎えに行くよ。今日も1日頑張ろう!』

……。
絵文字も顔文字もない、業務用連絡。マネージャーからの送迎連絡。だから何だ、俺にとっては、何年も片想いしてる女からの朝の挨拶だ。こんな朝からあいつに会える。思わず口許が緩んでった。

「あ〜〜……俺、きもちわりぃ……」

頭を抱えたくなる。さっきまで気分は最悪だったのに、たったひとつの連絡で気分は一変。早朝撮影最高。連絡がマメではないこいつからの、たったこれだけの連絡に俺がどれだけ嬉しくなってるか、バレたら死ぬ。好きだ。やっぱりこいつがめちゃくちゃ好きだ。もう何でも頑張れそう。

「おっし!起きるか!」

ばしんと顔を叩いて気合いを入れる。あとちょっとであいつが来る。今日もやっぱりバカで鈍感で天然で、でも可愛くて、俺の好きな女。そりゃあ仕事なんか頑張っちゃうに決まってるよな。にやける顔を引き締めようと、俺は顔を洗いにベッドを飛び降りた。


ってかあんな夢見ちゃったから会うのハッズ!!!!!
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好きな子の言動に一喜一憂、がむしゃらに恋してますね。名前様、お付き合いありがとうございました。
20170212
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