今日は名前ちゃんがお友達とお出かけをする日です。なのにおかしいです。名前ちゃんとお友達、の他に誰かいます。2人の後ろからこっそり1人の男の影が。でも名前ちゃんは気づいているみたい。その影をさっきからちらちら見ています。

「次どうしよっかー」

ショッピングに来ていた名前ちゃんはお友達の声にハッと顔を上げました。

「あ、うん、その前にちょっとトイレに行ってきていい?」
「うんいいよ」
「じゃあちょっと待っててね」

名前ちゃんはお友達にそう告げるとトイレに向かいました。ですが、トイレには入らずに急に後ろを振り返ります。

「浩汰、出てきなさい」
「え」

名前ちゃんがそう言うとそろそろと後ろから出てきた男、なんと名前ちゃんの彼氏である高橋さんです。

「今日は友達と出かけるって言ったじゃん、何でついてくんの?」
「だ、だって、女の子2人っていうから心配で…」
「何それ」

名前ちゃんが苛々した声を出すと高橋さんはびくついて名前ちゃんの顔色を窺います。名前怒ったかな。高橋さんはしょんぼりしています。そこにトドメの一言。

「だったら男の子と出かけたら良かった。そしたらついてこなかったってことでしょ」
「そん、な…っ」

高橋さんは頭をバットで殴られたように固まってしまいます。泣きそうです。目をうるうるさせて名前ちゃんを見つめます。

「あ、あの、名前、おれ、っ」
「な、何その顔、泣かないでよ」
「うぅ、ごめ…っきらわ、ないで…」

名前ちゃんを怒らせてしまった。高橋さんは思わず零れた涙を慌てて拭います。泣いたらもっと怒られると思って必死に涙を堪えます。名前ちゃんはその顔に思わず笑ってしまいました。

「ほんとにしょうがないなぁ…」

名前ちゃんは高橋さんの服を乱暴に引っ張り、自分の方へ近づけます。バランスを崩してしゃがみそうになった高橋さんに、名前ちゃんはごちんと頭突きをします。いたぁ、と情けない声を出した高橋さんに微笑み、名前ちゃんは背伸びをしながら高橋さんの頭をわしゃわしゃと撫でました。

「嫌いになるわけないでしょ。でも浩汰は心配しすぎ、私なんかが外歩くだけで大袈裟だよ」
「そ、そんなことないよ、名前はおれの天使で、その、世界一可愛くて、だから、」
「はいはい分かった、恥ずかしいから黙りなさい。とにかく、嫌いにはならないけど彼氏としては認めません。ただのストーカーだからね」
「え、う」
「だから、お家で待ってて」

名前ちゃんはふわりと笑いました。高橋さんはきゅうううんと胸をときめかせます。ああやっぱ名前は宇宙一可愛いよ。高橋さんはだらしなく顔を緩めました。

「夕食は食べないで帰るから一緒に食べよ」
「、うんっ」

高橋さんはこれ以上ない幸せを感じました。一緒に夕食を食べる仲になれるなんて最初の頃は考えられもしなかったことです。もしかしたらこのまま結婚だってできるかもしれない。高橋さんは大学1年生にしてはなんだか重いことを考えていました。

「大人しく家で待っててね」
「分かった!」

高橋さんは元気よく返事をするとくるりとUターンし、素直に帰っていきます。名前ちゃんはその後ろ姿を見送っていました。






「じゃあまたねー!」
「ばいばーい!」

名前ちゃんはショッピングを終え、お友達とさよならをします。高橋さんが1人で寂しく待っている姿を想像したら気が気ではありません。てくてく足早に歩けばマンションはすぐそこです。名前ちゃんはふとマンションを見上げました。

「…なんで」

名前ちゃんの部屋には電気がついていました。おかしいです。出かけるときには消したはずなのに、なんで。名前ちゃんはこわくなって走って部屋まで行きました。その勢いのままドアを開け、名前ちゃんはハッとします。鍵かけたはずなのに、何で開いてるの。ごくり。名前ちゃんは喉を鳴らしました。すると。

「名前ー!!おかえりー!!!」
「お前かっ!」
「ゔっ…」

出迎えるように奥から高橋さんが出てきたので名前ちゃんは高橋さんの鳩尾を容赦なく殴りました。高橋さんはうめき声を漏らし、お腹を押さえます。

「今日のご飯は…名前の大好きな、カルボナーラ…だよ……」
「何で好きって知ってんの、てか、何で鍵持ってんの」
「え、なんでって、合鍵じゃん」
「あげてないけど」

名前ちゃんが冷たく言い返すと、高橋さんはちらっと視線を上にして何か考え込むように目を泳がせました。

「あれ?うーん?じゃあ俺の妄想か」
「自覚があるようでまだ安心です」

名前ちゃんはもう1度、高橋さんの鳩尾を強く殴ります。高橋さんはまたうめき声を上げますが、表情は何だか嬉しそう。

「まあいいや。…ほら、ご飯食べよ」
「っ、うん!」

なんだかんだで名前ちゃんも高橋さんのことが大好きなのです。

END
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すぐ泣いちゃうような子ですが、誰よりも主人公を愛す男の子です。名前様、お付き合いありがとうございました。
20121021
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