ももちゃんってかっこいいよねえ。
何人に言われたか分からない。数百回は耳にしてるから一人あたり何回ずつくらい言ってるんだろう。原因は同じサークルにいる百々涼真くん。1つ下の男の子なんだけど、飲み会に参加すると必ず女の子を食べちゃうんだって。そんなバカなとは思ってたんだけど、仲良しの先輩も、最近なついてくれてる後輩も、同じ講義を取ってる友達も、廊下ですれ違った女の子も、皆言ってた。ももちゃんってすごく優しくてかっこよくて、アレも上手いんだよ。そんなバカな。

「やだなぁ、名前先輩。俺の顔に何かついてます?」

その真相を調べるべく、わたしは今、その彼の前にいる。後輩ちゃんは、ももちゃんは女の子の扱いに慣れてるから気を抜くと食べられちゃいますよ、なんて言ってたんだけど、わたしは処女じゃないし、男の子にちょっと優しくされたくらいじゃ靡かない。はず。とにかくビールを片手に上機嫌な百々くんは照れ臭そうにわたしにはにかんだ。うーん、まあ、顔は良いよね。

「よくわたしの名前知ってるね」

サークルの飲み会で一緒だったことは何度かあっても同じテーブルで飲んだこともなければ話したこともないから、百々くんがわたしの名前を知ってるのは意外だった。金髪に限りなく近い、明るい色の百々くんとは大違いで、わたしには目立った特徴もない。噂になるようなこともない。学年も違う。何で知ってるんだろう。わたしの疑問に百々くんは少しだけぱちくりすると、すぐににやっと笑って声を小さくする。

「先輩可愛いから、ずっと見てたんすよ」

なるほど、もしかしてこういうところ?
ちょっとつり上がった猫目を悪戯っぽく細めて、八重歯を覗かせる、この少年のような表情。確かにこんなことを言われて悪い気はしない。幼い笑顔に釣られてわたしも口許が緩んでしまう。

「またまた。百々くんモテるから女の子に困ってないでしょ」
「確かに困ってはないっす。でも俺は先輩と仲良くしたいんだけどなあ」
「そう、ありがとう」

さらりと笑顔で躱してカクテルに口を付けていると、百々くんはよいしょと席を立ち、テーブルを回ってわたしの横へやってきた。隣に座っている男の子を押しやる。

「タケ、退いて。俺先輩の隣座る」
「はいはい」

隣に座っていた竹谷くんは素直に席を交代するものだから、わたしと百々くんの距離は一気に近くなってしまった。計算外なので少し焦る。慌ててグラスを傾けて口の中を潤すと、百々くんはそれをじっと見つめていた。

「何飲んでるんですか?美味しそう」
「これはアラウンド・ザ・ワールドだよ」
「何それ」

百々くんは表情も変えずに見つめてきた。

「これは、パイナップルとミントの、」
「ひとくちちょーだい」

人が説明してるのにグラスをひょいっと奪って百々くんが口を付ける。本当に知らなかったんだろうか、それとも飲みたかっただけなんだろうか。疑わしくて百々くんを見つめると、百々くんは満足そうに笑ってグラスを返してきた。

「うんまい。先輩こういうの好きなんすか?」
「まぁ」
「他には?ワインとか、ビールとか」
「苦いのはあんまり。甘口のワインなら好きかも」
「いいっすね。日本酒はどう?」
「あんまり飲まないけど辛くなければ少しは…」
「最高!俺日本酒だったら結構詳しいよ。女の子にも飲みやすくてかなり美味いのがあってさぁ」

百々くんはお酒に強そうだった。次から次へとわたしに新しいお酒を教えてくれて、少しずつ飲ませてくれる。これは甘めに作ってあるからカクテルみたいでしょ。これはスパークリングだから飲みやすいでしょ。これは日本酒なんだけどサングリアだからお洒落でしょ。飲んだこともないお酒を知るのは楽しかったし、百々くんも楽しそうに説明するからちょっと可愛かった。なるほど、人懐こい性格だ。

「先輩意外と飲めるんだね」
「百々くんのが強いじゃん。さっきの美味しかったなぁ、ええっと、」
「さっきの?百?」
「それかもぉ…」
「ふは、ちょっと酔ってきた?この店マニアックな酒まで扱ってくれてるから楽しくなっちゃうよね。でも先輩にはちょっと強かったかな」
「そんなこと、ない」
「ふうん?顔真っ赤だけどね」

ぼーっとする。わたしより百々くんの方がずっと飲んでるのに百々くんは全然変わらない。強いし、飲み慣れてる。でもこんなに気持ちいいのは初めてだ。ずっと頭がふわふわしたまま、楽しいことを共有する、たったこれだけのことが楽しくて仕方がない。

「百々くん」
「なぁに?」

百々くんは穏やかに笑い掛けてわたしをじっと見つめる。席を隣に移動されたときはどうしようかと思ったけど、百々くんからは触られてない。下心が見えたのは最初だけ、本当はあの噂がデマなのかもしれない。

「先輩かなり酔ってんね」
「え」
「俺のこと、いいかもって思ってるでしょ」
「え!」
「ふは、わかるよ」

百々くんは笑いながらまたグラスを傾けた。恥ずかしくて顔が熱くなる。

「俺さ、最初に言った通り女の子には困ってないから、そんな気を張らずに仲良くしてよ」
「な、なん、」
「ももちゃん」
「え?」
「ももちゃんって呼んでいいよ。俺も名前って呼ぶから」

百々くんがそう言うからきっと下の名前で呼ぶひとがいないんだろうな。皆と同じにされるのが何となく嫌だった。だったら現状のがマシ。

「百々くんでいいよ。わたしに品定めされてるの、気付いてたんだ?」
「まあね。何でこんな奴がモテるんだ、みたいな顔で睨まれちゃ、俺だってたまんないから。でも仲良くなれて良かった。名前の中ではもう合格判定出てるんでしょ?」
「…モテる理由は、まぁ、わかるかなって感じ」
「それで十分。せっかく打ち解けたんだからもうそれやめてよ。俺と普通に楽しもう?」
「うーん」
「俺は無理矢理取って食ったりする男じゃないから。求められなきゃ手は出さないよ」
「…うん」

確かに。百々くんは本当に手を出してこない。アルコールが入ってもスキンシップをとりたがらない。楽しい話をしながら美味しいお酒を飲む。それだけを純粋に楽しもうという提案なら、別に拒む理由もない。

「そうする…」
「あはは、素直で可愛い。でも名前はマジで酔っ払ってきてるからそろそろお冷やにしようね」
「やー」
「まだ飲みたいの?でもだめ。俺は女の子を潰したいわけじゃないから」

ね、と優しく笑う百々くん。やっぱり笑うと幼くなる。百々くんはよく笑ってくれて、気配りができて、優しい。この短時間ですごい伝わってくる。

「お冷やなんてつまんない。せっかくいい気分なのにな」
「…じゃあ、もっと楽しいことしに行く?」
「え?」
「ここ抜け出そ」

百々くんは伏せ目がちに視線を寄越した。口説いている感じはなく、あくまで内緒話をするような小声。百々くんはそれだけ言うとグラスに入ってるお酒をぐいっと煽った。

「俺大人数で飲むより少数で騒ぎたい派!さっきから名前としか話してないし、名前もいいでしょ?」
「えっと…」
「別に、嫌ならここで解散でいいよ」

どうする?と百々くんが首を傾げた。無理強いはしてこないようだし、わたしも何となくもう少し百々くんといたい。百々くんに興味があるというよりかは、純粋に話しやすくて楽しいって感じ。そっとバッグを手に取る。

「…決まり。名前とふたりになれるならもっと早くに誘っておくんだった」

百々くんが嬉しそうに立ち上がるからわたしも続いた。立ってみて気づいたけど、自分が思っている以上に酔っ払ってるかもしれない。ふらふらする歩き方に、百々くんが少しだけ口許を緩める。

「なに、歩けないの」
「そういうわけじゃ…」

外の空気に当たると少しだけ気持ちが良かった。夜風が火照りを冷ましてくれる。百々くんの後をよたよたついていくと、百々くんがそっとわたしに手を差し出した。

「はい。歩きにくかったら掴んで」
「え、あ、ありがとう」
「別にいいよ、介護みたいで楽しいじゃん」
「介護!?」
「はは、怒んなよ」

拗ねた振りをしたけど内心ドキッとする。百々くんの手のひらが大きい。立ち上がってみればわたしよりずっと背が高くて、耳にはシンプルなピアスがひとつ付いてた。鼻も高いし、睫毛長いし、なんて綺麗なんだろう。こうも近付くと、かなりいい男じゃん。

「名前歌うの好き?」
「え?」
「俺は超好き、なんかスカッとすんじゃん。普段どんなん聴くの?」
「え、あ、わた、し、」
「…はは」

見とれてたら急に話し掛けられて上手く答えられなかった。動いたからなのか余計アルコールが回ってきてる気がする。ぐわぐわする頭を必死に動かそうとするのに今度は口が上手く回らない。

「カラオケ行こ、こっち。おいで」

百々くんが手を引くから転ばないように一生懸命足を動かした。



 * * * 




カラオケに来て更にびっくりしたことがある。百々くんは歌すら上手かった。甘く重く響く低音や、少し掠れるけど力強い高音、どんな音域も丁寧に歌い上げるし、流行りの曲をたくさん知ってる。このひとできない事がないんだろうかと疑いたくなるほど。

「あー、きもちい。名前は歌わないの?」
「こんなすごいの聴かされて、歌えないでしょ…」
「そう?ありがと」

自分が上手いという自覚はあるようだった。ソフトドリンクで喉を潤してスマホを手に取る百々くんは、機嫌がいいみたいに鼻唄を歌ってる。

「もう歌わないの?」
「ちょっと休憩。ぶっ続けで俺ばっか歌ってんじゃん、喉休ませて」
「ああ、そうだね」

百々くんは誰かへの連絡を返しながら、隣に座るわたしにチラッと視線を寄越した。

「何見てんの」
「いや…百々くん手ぇおっきいなあって」
「一応男ですから。名前はちっちゃいね」
「わたし女の子の中じゃあ大きい方なんだよ」
「そう?小さくて可愛いけど」

百々くんがするっとわたしの手に自分のを重ねてくる。不意打ちくらってドキッとするわたしに、ほら、とはにかむ百々くん。他意はないってわかってるけど、こう、なんかドキドキするじゃん。

「も、百々くん背も高いし、」
「んー?」
「体も、意外とがっしりしてるっていうか…」
「…うん。ありがとう」

にこっ。八重歯が見えると可愛い。こんな少年のような顔しててたくさんの女の子をメロメロにしちゃうなんて、すごいなあ。ももちゃんは本当にかっこいいの、なんて口を揃えて皆が言うけど、可愛いじゃなくてかっこいいなの? 百々くんが、かっこいい?

「じゃあ俺も、名前のこと見ちゃお」
「えっ!?」
「さっきから気になってた、耳たぶ可愛いね。すっげ綺麗な形してる」
「み、耳たぶ!?」
「そう。触ったら柔らかそー」

ぐっと体を近づけてくる。距離が、おかしい。こんなに近付かれたら心臓がおかしい。あれ、何でドキドキしてるんだっけ、イケメンだから?

「あといい匂いする。何かつけてんの?」
「いや何も…」
「ほんとに?甘い匂いすんだけどなあ」

百々くんの鼻が首許に触れる。意識しまくってたからなのか体がびくんと大袈裟に跳ねた。うわ、うわ、恥ずかしい。思わず目を瞑ると、百々くんがクスッと小さく笑う。

「やっぱり、やぁらかい」

ぞくっとする低音に気づいたのは、百々くんの唇が耳に触れてからだった。ちゅ、と小さなリップ音が耳の中に響く。耳たぶの感触を楽しむように唇で挟み、むにむにと何度も刺激された。百々くんの唇の方が柔らかい。

「百々くんっ、は、ぁ…」
「ん?」

百々くんはわたしの腰を優しく撫でながら、ぺろりと耳の裏を舐めた。ぬるぬるしてて柔らかい舌。頭がくらっとしそう。

「あ、ぅ」
「耳弱いの?名前ってそんな声出すんだ」
「やぁ、ちが、」

ちゅ、ちゅ、恥ずかしいくらい何度もキスをされて、何だか泣きそうになった。くらくらする、ふわふわする、気持ちいい。百々くんの舌が耳の中に入ってきて、やらしい音をさらに響かせる。

「も、もく、ぁ、だめぇ…っ」
「ももちゃんがいいなぁ。俺ももちゃんって呼ばれんのすげえ好きなの」
「へ…っ」
「ももちゃん。ほら、呼んで」

百々くんが優しく誘導する。するりと服の裾から手を忍ばせ、わたしの下着のホックを外しながら相変わらず耳を愛撫した。甘い声にぞくぞくして口を開く。

「も、ももちゃぁん…っ」
「よくできました。名前はいい子だなぁ」

百々くんの手のひらがわたしの胸を包み、やわやわと遠慮がちに動いた。耳を舐められていて上手く考えられないけど、これって、おかしくない? 百々くんがわたしの体を触ってていいの? 今日初めて話した人なのに?

「名前可愛い…もしかして困ってんの?」
「んっ、ぇ…?」
「頭回ってないくせにだめだってことはわかるんだ。でも気持ちいいでしょ?」
「あ、百々くん、っ」
「ももちゃんでしょ」

百々くんの指が胸の先をきゅっと摘まんだ。びくんっ、と大袈裟に体が跳ねる。熱くて気持ちいい、でも、百々くんにこんなこと、されちゃったらさあ。

「だめ、ぇ…っ」
「んなこと思ってないくせに。だめ?ほんとに?腰動いてんだけど」
「っ、んひ」

指を小刻みに動かして爪で刺激されると、じんじん先っぽが熱くなってそれが腰まで伝染する。逃げたいのに逃げられなくて、離れようとすると耳を舐められる。ねっとりした愛撫に声が堪えきれない。

「ももちゃん、っ、ももちゃ、ん」
「そうそう、せっかく可愛いんだから、可愛くしてないと」

気分を良くした百々くんはわたしの首筋にキスを落とし、うなじをべろべろ舐めながら胸を揉んだ。弾力を楽しむように何度も何度も揉んでいく。百々くんの吐息がうなじにかかると肩が上がっちゃって恥ずかしい。

「そんなに腰突き出してどうしたの?」
「ちが、うぅ…っ」
「違うって何が?腰振ってんのわかんないの?」

百々くんがやわやわ胸を触るから物足りなくて、腰が熱くなる。体が疼く。くんっ、くんっ、と腰を突き出して刺激を得ようとしても何も得られない。頭が溶けちゃいそう。

「触ってあげようか」

悪い顔をした百々くんがわたしの顔を覗き込んだ。背筋がぞわっとする。気持ちよくて頭がふわふわしてるのに、このじんじんしてるところを触られたら、もっと気持ちよくなっちゃうのかな。熱い体がもっと熱くなっちゃうのかな。でも、百々くんに、そんなことさせていいのかな。

「なぁ、ほら」

百々くんがわたしの脚の間にゆっくり手を入れて、ショーツの上から熱いそこを指でつつぅとなぞった。びくんって跳ねる腰。あ、あ、これ、思ってた以上に、気持ちいい。

「もも、ちゃ」
「ん?」
「そこぉっ、や、ぁ…っ、んんっ、ん」
「ん…」

やだって言おうとしたら百々くんが上から顎を掴んでキスをしてくる。口を割って舌を入れると、わたしの舌を絡め取って引き摺り出した。ねろねろ唾液を絡めて擦り合う。気持ちいいのに声は出せず、百々くんの指もわたしに更に刺激を与えた。ショーツ越しに爪を立てられてカリカリ引っ掻かれると腰がまた動いちゃう。欲しいところに的確に刺激が来て、むしろこんなに気持ちよくされちゃうと、だめなのに。

「んっ、んん、ふぅ、ん、ぁ」
「ん…ん」
「っんぅ、ん、ぁふ…っんん」

カリカリカリカリ。
そこばっか爪でされたら、頭が、腰が、溶けちゃうってば。びく、びく、腰が脈打って脚を閉じても、太ももで挟まれた百々くんの手は固定されたまま爪先だけ器用にカリカリ動かし続けた。だから、もう、続けちゃだめぇ。

「っあ、んんん…っ!」

びくんっ。びくんっ。
腰が反れて内腿が痙攣した。百々くんの手を脚で挟みながら、きゅうっとお腹に力を入れて思いっきり絶頂を迎える。気持ちいい。百々くんは指を止めてわたしの口から舌を引き抜くと、どろりと溢れた唾液を舐め取ってくれてから微笑んだ。優しくて、色っぽい口許。

「すっげえ顔。酒飲んでても敏感なんだね」
「、あ、ぇ…」
「もっと欲しくさせてあげる」

百々くんはそう言いながらわたしの脚をぐいっと開かせた。そのままショーツをずり下ろされる。糸を引いてるそれにもびっくりしたけど、カラオケで脱がされることにびっくりして腰を浮かした。

「ちょ…っ、百々く、」
「だーめ。俺の膝戻っておいで」
「だ、だって、外から見えちゃうし、」
「スカートは脱がさないから。名前が大人しくしてたらわかんねえって。な?」
「待って、でも、百々くん、っ」

百々くんがわたしの二の腕を掴んで強引に引き寄せるからそのまま膝に座っちゃう。脚を大きく開かされて、ぬるぬるのそこを指でなぞられた。だめ、ここ、カラオケなのに、百々くんは彼氏じゃないのに。

「うそ、つきぃ…っ」

ぐぷ、と中から汁が押し出される音と共に百々くんの指が入ってきた。細く長い指だと思ってたのに、男の子の太い指だ。それを中まで入れられると、ゆっくり引き摺り出されて、また押し入れられる。ぐぬ、ぐぬ、やらしい音がする。

「嘘つきって、何が?」
「っあぁ、ん…!だって、百々く、無理矢理取って食べたりしないって、言ってたのにぃ…っ!」
「あぁ」

クスッと鼻で笑う百々くんは、わたしのうなじにキスを落として指を中で折り曲げた。くいっと折られて弱いところを擦られる。何度も、何度も、そこばっかりされる。

「っ、やあっ、ぁ…っ!」
「俺は女の子に求められなかったら、無理矢理はしないって言ったんだよ」
「あ、ぅ…っ、それってぇ…っ」
「名前は俺のこと欲しいでしょ?」

どんどん百々くんの指が力強く動いて、ぐちゅぐちゅと音を響かせた。そんな音立てたら外に聞こえちゃいそうで嫌なのに、止めてほしくても百々くんの膝から下ろしてもらえなくて、腰を浮かしても指が追ってきて、ああもう、頭がおかしくなる。百々くんが触ってるところがこりこりしてきて、それを持ち上げるように抉って、気持ちよくて涙が出てきた。だめにされる。

「だめぇっ、ももちゃ、そこ、そこおっ」
「ここされたら泣いちゃうんだ。かーわいい。ほら、俺のこと感じたくてこんなに出てきたよ。こりこり言ってんね」

百々くんが触ってるところがどんどん隆起してきて、指で転がされてるのがよくわかる。1本?2本? 百々くんの指が力強い。そんなにぐりぐりして、大丈夫なのかな。わたしの体、どうなっちゃうのかな。

「やあっぁん!あ、あ、あぁ、ん!ん…っ!あぁ…っ!」
「またイク?中でもイけるんだ。名前って清楚そうに見えて処女じゃないし、結構男に可愛がってもらってんだね」

どこで処女じゃないなんてわかるのか、わたしにはわからなかった。ただ頭が真っ白になって、腰が動く。百々くんの膝に手を置きながらすぐそこの絶頂を迎えようと腰を反らせる。

「もも、ちゃあっ、あ、ぁあ…っ」
「なーんてね」
「あ、あ…っ?」

びくびく内腿が引き攣ってきて、あと少しでイけたのに、百々くんが急に指を引き抜いた。どろおっと一緒に汁が流れ出る。お尻の穴にまで垂れて百々くんの膝を少し濡らしてたみたい。

「、は、ぁ…っ」
「何でって顔してるね」
「だって、ぇ…」
「名前の可愛い声聞いてたら俺だってシたくなってくるじゃん?」

にや、と笑う男の子が、こんなにも意地悪だと感じたことはない。腰をゆるゆる動かしてもさっきまでの快感は返ってこなくてもどかしい。したい、気持ちよくなりたい、百々くん、もっと。

「わたしも、するからぁ…っ、ももくんの、するから、ね、ここぉ…っ、し、て」
「ここカラオケでしょ?えっちなことする場所じゃないじゃん」
「そんな…っ、で、でも、」
「さっき名前が言ってたの聞いて、確かにって思ったんだよ」

アルコールでふわふわになった頭と、快感でどろどろになった体。もうここまできたら引き返せない。気持ちよくなりたい。してほしい。させてほしい。それ以外は考えられない。

「ばれないよ、に、するからぁ…っ、ね、はやく、したいの…っ」
「そんなにシてほしいの?可愛い」

百々くんが笑う。わたしの体を抱き寄せて、髪を掻き上げて耳に唇を寄せた。百々くんの吐息が、それすら、気持ちいい。

「ねえ、このカラオケの裏に、ホテルがあるの知ってる?俺、そこでならシてもいいよ」
「へ…っ」
「そしたらさあ、もっと気持ちよくしてあげる。たくさん舐めてあげるし、さっきの気持ちいいところ指でトントンしてあげる。それから、名前がさっきから欲しくてたまらなくなってる俺のも、挿れてあげるんだけどなあ」

それは悪魔の囁きだった。絶頂の寸止めをくらったわたしにとっては迷う選択すらないお誘い。ただこくんと頷くだけで気持ちよくしてもらえる。相当遊んでるであろう百々くんは本当に上手いし、まだたったの数十分なのにもう百々くんのが欲しくてたまらない。委ねてもいいと思う。溺れさせられても、いいよね。

「百々くん、は、はやく…っ」

しがみつくと、百々くんはにこっと幼い顔で笑って見せた。わたしのバッグを肩に掛け、自分のスマホをポケットに突っ込む。百々くんの笑顔は可愛いはずなのに、心臓が掴まれたように痛くて、何だかかっこいい。

「行こ。たくさんイかしてあげる」

あれ、わたし、何でこんなにドキドキしてるんだろう。



 * * * 




ガラガラに掠れた声を聞けば誰だってびっくりするだろうけど、一番びっくりしてるのはわたしだ。あれ、どうしたの、なんて指摘してきたのは朝から数えてちょうど20人目。嘘が苦手だからこういうときに何て返せばいいかわからなくなる。どうにか笑って誤魔化そうとしていると、前から歩いてくる男の子2人組のうちの1人がももちゃんだってことに気付いた。

「あ」
「あ、名前」

ももちゃんもわたしに気付く。目を細くして八重歯を見せて笑うから本当に少年みたい。笑顔がちょっと眩しい。

「昨日のカラオケ楽しかったね」
「えっ、うん」

ももちゃんはそれだけ言うと、じゃあね、と手を振って行ってしまった。友達がももちゃんを目で追ってる。

「ももちゃん今日もかっこいい…。ねえ、昨日カラオケ行ったの?いいなぁ、わたしも行きたかった」
「…うん。かっこいいよね」

ももちゃんの後ろ姿を見て、胸がぎゅっとした。確かに彼は"可愛い"ではなく"かっこいい"だった。しばらく目が離せない。ももちゃんは何事もなかったかのように隣の男の子とお喋りを続けながら、数十メートル先の曲がり角へと消えていった。


END
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Twitterのアンケートより、20代夢主ちゃんと年下くんのお話でした。百々くんは彼女にしか下の名前を呼ばせないです。抱いた女の子をいちいち覚えてられないので1度遊んだ子には必ず自分のことをももちゃんと呼ばせて区別しています。いつか下の名前を呼べる人は現れるのでしょうか。名前様、お付き合いありがとうございました。
20170507
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