「じゃあ竜士はシたくないん?」
「おん?」

名前ちゃんは何となく甘えたような声で優しく言いました。勝呂くんのお腹へ腕を回し、背中に額をつけたままです。

「うちはシたい。竜士のいろんな顔見たいねん。気持ちいいときどんな顔するか見たいねん。竜士はちゃうん?」

暫く沈黙が続きました。勝呂くんは何かを考えるように空を見つめたまま手を止めます。きゅ、と名前ちゃんはお腹に回している手に力を入れました。

「…見たないことはない。俺も男や。せやかて、それとこれとは違うやろ?」
「何でや?何が違うん?」
「さっきもゆうたやろ、責任とれるようなったらや。勢いに任せてやる行為やない。大人んなったらいくらでもできるやろ」

勝呂くんは相変わらずこちらを見ようとしません。名前ちゃんはますます悲しくなりました。

「っ…こっち見ぃや!」

名前ちゃんは怒っています。声でそんなことくらい分かります。勝呂くんは勉強を中断し、素直にそちらを向きました。すると、なんと名前ちゃんは泣いていたのです。勝呂くんはギョッと目を見開きました。

「なんっ、はぁ!?何泣いてんねん!?」
「っさい…見んなやぁ…」
「どっちやねん…」

勝呂くんは少しはにかむように微笑み、名前ちゃんの涙を拭おうとします。


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  拭ってもらう

  手を払い落とす

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