※砂月視点

那月には女がいる。那月は過去にトラウマがあるのに急に好きになったとか言って、簡単に女を信じた。俺は許せなかった。那月がまた傷つくところなんか見たくねぇのに那月はすぐ人を信用する、その馬鹿さに苛ついた。那月のいいところだと思うが、悪いところだってことも事実だし、何とか諦めさせようと思った。そうだ、女から目茶苦茶にしてやろう。俺は単純にそう思った。それで、女を傷つけて立ち直れなくさせてやろうと思った。だが、それはできなかった。

不覚にも、惚れてしまった。

那月と俺は性格は正反対とは言え同一人物。考え方や感じ方は似通っている。つまり那月が好きなもんは俺も好きだし、俺が好きなもんは那月も好きだ。那月が認めた女、俺も認めざるを得なくなった。女はよく笑う、明るくて喧しいくらい元気なやつで、何より優しかった。そんなやつが那月を傷つけられるはずない。

女は那月に惚れていた。那月はいつも女に優しい言葉や甘い言葉をかけてやる。女は頬を染めてそれを受け止める。正直苛ついた。那月の幸せを1番に考えて生きてきたこの俺が、その女に独占欲を感じていた。だが俺は所詮裏の那月、幸せになっていいのは表の那月だけ。女が愛しているのも表の那月だけだ。

「名前ちゃん、だぁいすきですよ」
「…わたし、も」

ぎこちなく那月に応えて顔を真っ赤にさせる。そんな女をいつも那月の内側で見つめることしかできなかった。俺がこいつに接したら、壊してしまいそうで怖かった。


(( 秘密の片想い ))
(  )
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -